じょう)” の例文
自分はゆきがかりじょう一応岡田に当って見る必要があった。うちへ電報を打つという三沢をちょっと待たして、ふらりと病院の門を出た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
万事がそういう調子なのですから、真に遊びになります。しかも舟はじょうだなひのきで洗い立ててありますれば、清潔この上なしです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……かん、五、じょうさく、六、の七ツの孔は、人間の五情の言葉と両性の呼吸いきともいえよう。懐竹抄かいちくしょうを読んだことがあるだろう
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからふた月三月のあいだというもの、しじゅうカラバ侯爵こうしゃくのお使だと名のっては、いろいろと狩場かりばのえものを、王様へけんじょうしました。
と照彦様はゆきがかりじょう、決心しているようだった。その日、奥様と安斉先生が見まいに来た。翌日は照正てるまさ様と照常てるつね様が学校の帰りによった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もちろん飛騨越ひだごえめいを打った日には、七里に一軒十里に五軒という相場、そこであわの飯にありつけば都合もじょうの方ということになっております。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七年三月二十八日には十一歳で元服して、じゅ四位じょう侍従参河守斉民となった。九年十二月には十三歳で少将にせられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「こんどはお叱り頂かないように材料のほうも充分に吟味致しましてございますが、へえ……黒檀もここいらへんになりますとじょうの上でございます」
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
「おれか。おれは じょうとうに はいりかけて いる ところだ。おまえも ぼうずに なったからには、じょうとうのじょうに ならなくては いけないよ。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
あきになってれた野菜やさいは、みんなじょうできでありましたが、そのなかにも、大根だいこんは、ことによくできたのであります。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すべて刀のじょうあがり不あがりが一決するのだから工手は、人を払って一心不乱に神仏を念ずるのがつねだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「君子は義をもってじょうとす。君子くんし勇ありて義なければらんす。小人しょうじん勇ありて義なければとうをなす」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
夜十時点検終わり、差し当たる職務なきはし、余はそれぞれ方面の務めにき、高声火光を禁じたれば、じょう甲板も甲板もせきとしてさながら人なきようになりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
彼の説によると、その水、山水を用うるはじょう、江水は中、井水は下である。煮沸に三段ある。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
博士が封を切って中を読んでみると、巻紙の上には情緒纏綿じょうちょてんめんたる美辞びじつらなって居り、せつ貴郎あなたのおでを待つと結んで、最後に大博士王水険じょうと初めて差出人の名が出て来た。
おんめもしいたし…何という字だろう…御うれしく……はてな、御めしがうれしいとは何ういう訳だろう、それから…そんじじょう…※…サア此のせむしのような字は何とか云ったッけねえおめえさん
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
進むと見ればたちまち退き、右によろめき左にのめくり、一じょう、輾転反側。
六金さんが「浅間あさまじょう」を語り出した時分には、「うらみも恋も、のこり寝の、もしや心のかわりゃせん」と云うあたりから、目をつぶったまま、いとの音にのるように小さく肩をゆすって
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしその後はずっと続けて配達した。お得意としてはじょうの方である。戦争末期にこの家には不幸があった。竜泉寺小学校の生徒であったこの家の子供が、登校の際に電車にかれて死んだ。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
行掛ゆきがかじょう私は静子の相談相手であり、保護者の立場にあった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一 此庭に歌のじょうずはありと聞く、歌へながらも心はづかし
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
不臣の徒に屹度きっと申付けるであろう——じょう
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これはじょうであります。
青年の思索のために (新字新仮名) / 下村湖人(著)
主人はあんじょう、「御出かけで」と挨拶あいさつした。そうしていつもの通り下女を呼んで下駄箱げたばこにしまってある履物はきものを出させようとした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正三君はくちびるから血がしたたってものすごかった。尾沢生はたちまち鼻血を流した。一じょう虚々実々きょきょじつじつとまではいかないが、ひとしきりは実に猛烈だった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
じょうとうの ぼうず——もうれつに しゅぎょうして、ほんとうの ぼうずの みちに たっした ぼうず。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
けれど、かじやさんは「あ、こりゃ、こりゃ。」と、うたをうたいながら、じょうきげんでありました。このとき、あかいちょうちんをつけて、二人ふたり子供こどもがきかかりました。
村のかじやさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
何であろうか、わき目もふらず、奉書七、八枚に達筆を走らせ、そうし終ると、二重に厳封して、封の表に太く強く、「じょう」と書いて机にのせ、しばらく腕をくんでいた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中肉中丈ちゅうにくちゅうぜいで、おしりの小さい、かゝとの締った、横骨の引込ひっこんだじょうものでございます。
正親町おおぎまち天皇の時、じゅ五位じょう岡本保晃ほうこうというものがあった。保晃は半井瑞策に『医心方』一巻を借りて写した。そして何故なにゆえか原本を半井氏に返すに及ばずして歿した。保晃は由顕の曾祖父である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
じょう々の天気で——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
三人は妙な羽目におちいった。いきがかりじょう一種の関係で因果いんがづけられた彼らはしだいに話をよそへ持って行く事が困難になってきた。席をはずす事は無論できなくなった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
じょうだんの まんなかに よしみつこうが すわっています。その みぎと ひだりには、えらい さむらいたちが ずらりと ならんでいます。おしょうさまは しずかに をついて
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
じょうちゅう
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までのいきがかりじょう堀に訳を話す。京都に対して責任を感ずべく余儀なくされている堀は、津田の窮を救う事によって、始めて父に対する保証の義務を果す事ができる。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでなくっても先刻さっきからのいきがかりじょう、彼は天然自然の返事をお秀に与えるのが業腹ごうはらであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
云わんでも善いでさあ。こうやって不足なくその日その日が暮らして行かれればじょうぶんですよ。苦沙弥君くしゃみくんなどは道楽はせず、服装にも構わず、地味に世帯向しょたいむきに出来上った人でさあ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)