“ひび”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒビ
語句割合
35.2%
24.5%
亀裂14.2%
6.3%
5.1%
日々3.6%
裂罅2.4%
1.2%
日日1.2%
1.2%
(他:13)5.1%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
代々だいだい陶器とうきいて、そのうちしなといえば、とお他国たこくにまでひびいていたのであります。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
寺の前がすぐ大堰川の流で「梵鐘ぼんしょうは清波をくぐって翠巒すいらんひびく」というすずしい詩偈しげそのままの境域であります。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
同時、ドサドサッと畳をる音。白い線が二、三度上下になびいて、バサッ! ガアッ!——ときしんだのは、骨を断ったひびきか。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
無気味なものを感じ、彼女はこの手紙が、やうやく安定しかけた自分達の生活を、毀さないまでもひびを入れるもののやうに思へてならなかつた。
道化芝居 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
「街なんかどうなろうといいじゃないか。いずれこの街は初めからひびの入ってる街なんだ。君は僕と一緒にシンガポールへ逃げてくれ給え。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
今この原稿を書いている私の手は、あかぎれひびとで色が変わっているほどだが、晩年のトルストイの手のことを思うとなんでもない。
ちょうど亀裂ひびだらけになって、今にもこわれそうな石地蔵が、外側に絡みついた蔦の力でばかり、やっとっているのを見るような心持がした。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
頭の往った方はとこになっているが、そこも亀裂ひびの入ったきいろな壁土かべつちわびしそうに見えるばかりで、軸らしい物もない。
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
が、真夏などは暫時しばらくの汐の絶間たえまにも乾き果てる、壁のようにかたまり着いて、稲妻いなずま亀裂ひびはいる。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのひびだらけの頬はいよいよ赤くなつて、時々鼻洟はなをすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しよに、せはしなく耳へはいつて来る。
蜜柑 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あのひびだらけの頬はいよいよ赤くなって、時々鼻洟はなをすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しょに、せわしなく耳へはいって来る。
蜜柑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「小山さん、そんな水いじりをなすっちゃ、いけませんよ。御覧なさいな、お悪戯いたをなさるものだから、あなたの手はひびだらけじゃありませんか」
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この時、庭の方から、わだちでもきしるような、キリキリという音が、深夜の静寂しじまひびでも入れるかのように聞こえて来た。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お延は言いかけて、口をつぐんだ。そしてしばらく考えたあと、急にお針の道具を片方に押しやって、次郎のひびだらけの手をにぎりながら、
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
だが、苦痛とは何か、われわれの精神を虐げ、われわれの観念にひびを入れるこの苦痛とはそもそも何か。苦痛とは単なる神経刺戟だといふのか、さうではあるまい。
井の中の正月の感想 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
日々ひびに老いて近づく冬の気息が一刻々々に身に響く頃の一種の恐怖おそれ、死に先だつ深い絶望と悲哀は、東京附近の浅薄な冬の真似では到底分からぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おのれの日々ひびの事務をおこたらず、百姓は百姓、商人は商人、教師は教師、役人は役人とおのれのあずかっている職務に忠実ちゅうじつにして
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かりにそうしたどうしのあつまりだと想像そうぞうしてごらん。日々ひびそこでいとなまれる生活せいかつこそ、どんなにか、たのしかろうじゃないか。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たうとう薄い鋼の空に、ピチリと裂罅ひびがはひつて、まつ二つに開き、その裂け目から、あやしい長い腕がたくさんぶら下つて、からすつかんで空の天井の向ふ側へ持つて行かうとします。
烏の北斗七星 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
とうとううすい鋼の空に、ピチリと裂罅ひびがはいって、まっ二つに開き、そのけ目から、あやしい長いうでがたくさんぶら下って、烏をつかんで空の天井てんじょうの向う側へ持って行こうとします。
烏の北斗七星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
生木なまきくわん裂罅ひびる夏の空気のなやましさ。
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
春寒きびしき都門を去りて、身を暖かき湘南しょうなんの空気に投じたる浪子は、ひびに自然の人をいつくしめる温光を吸い、身をめぐる暖かき人の情けを吸いて、気も心もおのずからのびやかになりつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
名医の術も施すに由なく、幾が夜ごと日ごとの祈念もかいなく、病はひびに募りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
近年、西洋において学芸の進歩はことに迅速にして、物理の発明に富むのみならず、その発明したるものを、人事の実際に施して実益を取るの工風くふうひびに新たにして、およそ工場または農作等に用うる機関のたぐいはむろん
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
森羅万象日日ひびあらたにして、いつしか春過ぎ夏来ると雖も、流離の涙しかすがに乾く暇なく、飛ぶ鳥の心いや更にはるる空なし。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
父母の日日ひびのなげきも事古りぬさはさりながら我の貧しさ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
芽生めばえ日日ひびして、
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
と、手の裏返す口上に、気は許さねど、張詰めし、胸には、ひびの入り易く。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
寒風に吹きさらされて、両手にひびを切らせて、紙鳶に日を暮らした三十年前の子供は、随分乱暴であったかも知れないが、襟巻えりまきをして、帽子をかぶって、マントにくるまってふところ手をして、無意味にうろうろしている今の子供は、春が来ても何だか寂しそうに見えてならない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
寒風に吹きさらされて、両手にひびを切らせて、紙鳶に日を暮した二十年ぜんの小児は、随分乱暴であったかも知れないが、襟巻えりまきをして、帽子を被って、マントにくるまって懐手ふところでをして、無意味にうろうろしている今の小児は、春が来ても何だか寂しそうに見えてならない。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
然り而して伏見ふしみの一戰、東兵披靡ひびするものは何ぞや。
二将のむかう所、燕兵披靡ひびす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みわるるうだちひびき。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
このはじかみ、口ひび
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
小夜子の世界は新橋の停車場ステーションへぶつかった時、劈痕ひびが入った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、土坡のような丘の彼方にも、一揆の大衆いたと見え、数百、数千、万にも余る、大勢の声が法螺貝ほらがい、竹法螺、鉄砲の音をさえそれに雑え、ドーッとあがりワーンと反響ひびいた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
文章を作る上の用意として、われ/\の日常ひび心がくべき三つの方法がある。それは読書と観察と思索とである。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こもりゐてはなひり海朶ひびの間も海苔の香立ちて寒からしあはれ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
海苔の田は上潮うはじほ寒き海朶ひびの間に逆さの不二が白う明り来
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「灰色の靴下を穿いた秋」が、わたしの精神の罅裂ひびの隙き間から、もぐりこんでくる。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
君の言ふ裂隙ひびなんて、何處を見たつて見えないぢやないか!
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
舊道徳に裂隙ひびが割れたから、其の裂隙から自然主義といふ樣なものも芽を出して來たんだ、何故其の裂隙が出來たかといふと、つまり先祖の建てた家が、我々の代になつて玄關の構へだの、便所の附け處だの、色々不便なところが出來て來た樣なものだ。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お浜は手早く懐剣を拾い取って、盗み物を隠すように懐中へ入れてみると、胸は山のくずれるような音をしてひびきましたけれども、お浜のかおには一種の気味のよいような笑いがほのめいて、じっと眼を行燈あんどんの光につけたまま失神のていで坐っている。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その声は、もはや、怨霊おんりょうじみたものではなかった。美しい、女のような、ひびきの深い声であった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「その上、死骸の耳の下に傷を拵へて、お玉の黒子ほくろを誤魔化したが、二の腕の(蛇)の彫物ほりものをお關に見られて、たくらみに龜裂ひびが入つた。あの彫物は二人の干支えとだから、歳を繰つて見ると二十年前に捨てられたお關の(兎)の彫物が三杯みつき家の娘に間違ひないわけだ」