ひび)” の例文
政治学、ひびに進歩せざるべからず。国民全体に政治の思想なかるべからず。政談熱心せざるべからず。政事、常に語るべし。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
てだてを尽くして防ぎ止めんとせしかいもなく、目には見えねど浪子の病はひびに募りて、三月の初旬はじめには、疑うべくもあらぬ肺結核の初期に入りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
趣味標準の相違を発見し云々と「病牀六尺」に述べられたるごとき、明かに這般しゃはんの消息を認む、ひびに「モルヒネ」を服してわずかに痛苦を忘れんとしつつある際においても
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
人事の実際に施して実益を取るの工風くふうひびに新たにして、およそ工場または農作等に用うる機関のたぐいはむろん、日常の手業てわざと名づくべき灌水・割烹・煎茶・点燈の細事にいたるまでも
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
名医の術も施すに由なく、幾が夜ごと日ごとの祈念もかいなく、病はひびに募りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
春寒きびしき都門を去りて、身を暖かき湘南しょうなんの空気に投じたる浪子は、ひびに自然の人をいつくしめる温光を吸い、身をめぐる暖かき人の情けを吸いて、気も心もおのずからのびやかになりつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)