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皸
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ひび
ふりがな文庫
“
皸
(
ひび
)” の例文
髪には
櫛
(
くし
)
が一つだけ、手も足も水仕事でひどくあれているし、
白粉
(
おしろい
)
けなど
些
(
いささ
)
かもみられない顔の赤くなった頬には、もう
皸
(
ひび
)
がきれていた。
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
透きまもなく繁りあった雑木のなかに
皸
(
ひび
)
だらけの獰猛な腕をひろげた栗の木の姿はあっぱれ武者ぶりではあるがかんじんの栗は一つもない。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
「小山さん、そんな水いじりをなすっちゃ、いけませんよ。御覧なさいな、お
悪戯
(
いた
)
をなさるものだから、あなたの手は
皸
(
ひび
)
だらけじゃありませんか」
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
時とするとジャン・ヴァルジャンはコゼットの
皸
(
ひび
)
のきれたまっかな小さい手を取って、それに
脣
(
くちびる
)
をつけることもあった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お婆さんは、ごくりごくりと
咽喉
(
のど
)
を鳴らしながら水を呑んだ。お美代はすぐに眼を伏せて、膝の上の自分の手を見た。
玄
(
くろ
)
い肌には一面の赤い
皸
(
ひび
)
だった。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
それは油気のない髪をひつつめの
銀杏返
(
いてふがへ
)
しに結つて、横なでの痕のある
皸
(
ひび
)
だらけの両頬を気持の悪い程赤く
火照
(
ほて
)
らせた、如何にも
田舎者
(
ゐなかもの
)
らしい娘だつた。
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
眼球が脱却して洞穴になつた二つの眼窩、頬が凹んでその上に突起した顴骨、毛の一本も生えてゐない頭と、それに這入つてゐる
皸
(
ひび
)
のやうな條、これが氏の首である。
続癩院記録
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
風が吹く、土が飛ぶ、霜が
冴
(
さ
)
える、水が荒い。四拍子
揃
(
そろ
)
って、妻の手足は直ぐ
皸
(
ひび
)
、霜やけ、あかぎれに飾られる。オリーヴ
油
(
ゆ
)
やリスリンを
塗
(
ぬ
)
った位では、血が止まらぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お三どんが
皸
(
ひび
)
を切らしたってそれが
不便
(
ふびん
)
というんじゃありません、そんなのははじめッからその気でつき合っているんですからね、甘いことをいうと附上りまさ、癖になりますからね
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これなら大丈夫と思ううちに、これも同じく隠しようのないままに残されていた
皸
(
ひび
)
だらけの足の
踵
(
かかと
)
も、美少女の小さな
足袋
(
たび
)
の中に無理やりに押込んでヒシヒシとコハゼをかけてしまいました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ぼんやりとして、
錫
(
すず
)
色の円い輪が、空の中ほどを
彷徨
(
さまよ
)
っている、輪の
周囲
(
まわり
)
は、ただ混沌として一点の光輝も放たない、霧の底には、平原がある、平原の
面
(
プレーン
)
は
皸
(
ひび
)
が割れたようになって、銀白の川が
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
百姓が手につかむ霜にも、水仕事するものが皮膚に切れる
皸
(
ひび
)
あかぎれにも、やがて来る長い冬を思わせないものはない。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは油気のない髪をひっつめの
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに結って、横なでの
痕
(
あと
)
のある
皸
(
ひび
)
だらけの両
頬
(
ほお
)
を気持の悪い程赤く
火照
(
ほて
)
らせた、
如何
(
いか
)
にも
田舎者
(
いなかもの
)
らしい娘だった。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
皸
(
ひび
)
あかぎれの手を、けちで炭もよくおこさないから……息で暖める
隙
(
ひま
)
もなしに、鬼婆の肩腰を、
擦
(
さす
)
るわ、
揉
(
も
)
むわ、で、そのあげくが床の
上下
(
あげおろ
)
し、坊主枕の
蔽
(
おお
)
いまで取りかえて、旦那様、
御寝
(
げし
)
なれだ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは
油氣
(
あぶらけ
)
のない
髮
(
かみ
)
をひつつめの
銀杏返
(
いてふがへ
)
しに
結
(
ゆ
)
つて、
横
(
よこ
)
なでの
痕
(
あと
)
のある
皸
(
ひび
)
だらけの
兩頬
(
りやうほほ
)
を
氣持
(
きもち
)
の
惡
(
わる
)
い
程
(
ほど
)
赤
(
あか
)
く
火照
(
ほて
)
らせた、
如何
(
いか
)
にも
田舍者
(
ゐなかもの
)
らしい
娘
(
むすめ
)
だつた。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
下婢は
酷
(
ひど
)
い荒れ性で、
皸
(
ひび
)
の切れた手を冷たい水の中へ突込んで、土のついた大根を洗った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
小娘
(
こむすめ
)
は
何時
(
いつ
)
かもう
私
(
わたくし
)
の
前
(
まへ
)
の
席
(
せき
)
に
返
(
かへ
)
つて、
不相變
(
あひかはらず
)
皸
(
ひび
)
だらけの
頬
(
ほほ
)
を
萌黄色
(
もえぎいろ
)
の
毛絲
(
けいと
)
の
襟卷
(
えりまき
)
に
埋
(
うづ
)
めながら、
大
(
おお
)
きな
風呂敷包
(
ふろしきづつ
)
みを
抱
(
かか
)
へた
手
(
て
)
に、しつかりと三
等
(
とう
)
切符
(
ぎつぷ
)
を
握
(
にぎ
)
つてゐる。……
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小娘は何時かもう私の前の席に返つて、
不相変
(
あひかはらず
)
皸
(
ひび
)
だらけの頬を萌黄色の毛糸の襟巻に埋めながら、大きな風呂敷包みを抱へた手に、しつかりと三等切符を握つてゐる。…………
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、重い
硝子戸
(
ガラスど
)
は中々思ふやうにあがらないらしい。あの
皸
(
ひび
)
だらけの頬は
愈
(
いよいよ
)
赤くなつて、時々
鼻洟
(
はな
)
をすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しよに、せはしなく耳へはいつて来る。
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、重い
硝子
(
ガラス
)
戸は中々思うようにあがらないらしい。あの
皸
(
ひび
)
だらけの頬は
愈
(
いよいよ
)
赤くなって、時々
鼻洟
(
はな
)
をすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しょに、せわしなく耳へはいって来る。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、
重
(
おも
)
い
硝子戸
(
ガラスど
)
は
中中
(
なかなか
)
思
(
おも
)
ふやうにあがらないらしい。あの
皸
(
ひび
)
だらけの
頬
(
ほほ
)
は
愈
(
いよいよ
)
、
赤
(
あか
)
くなつて、
時時
(
ときどき
)
鼻洟
(
はな
)
をすすりこむ
音
(
おと
)
が、
小
(
ちひ
)
さな
息
(
いき
)
の
切
(
き
)
れる
聲
(
こゑ
)
と一しよに、せはしなく
耳
(
みみ
)
へはひつて
來
(
く
)
る。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
皸
漢検1級
部首:⽪
14画
“皸”を含む語句
相不変皸
胼皸