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顫動
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せんどう
ふりがな文庫
“
顫動
(
せんどう
)” の例文
老教授の
顳顬筋
(
せつじゅきん
)
はぴりぴりと
顫動
(
せんどう
)
し、蒼ざめた顔には、さっと血の色がのぼった。それも無理もない、息子の生死のわかれ目なのだ。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
この問題に奥深く底の底まで頭を突ッ込むとき、そこに必ず私らの全身を
顫動
(
せんどう
)
せしめるほどの価値に触れることができるだろうと思った。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
埒
(
らち
)
もない対話をしているのに、
一一
(
いちいち
)
の
詞
(
ことば
)
に応じて、一一の表情筋の
顫動
(
せんどう
)
が現れる。
Naif
(
ナイイフ
)
な小曲に
sensible
(
サンシイブル
)
な伴奏がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
芝居じみた
一刹那
(
いっせつな
)
が彼の予感を
微
(
かす
)
かに
揺
(
ゆす
)
ぶった時、彼の神経の
末梢
(
まっしょう
)
は、眼に見えない風に
弄
(
なぶ
)
られる細い小枝のように
顫動
(
せんどう
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうなって始めて、右掌の無名指が不安定を訴えだしたことは云うまでもない。そうして、あの解しきれない
顫動
(
せんどう
)
が起されたという訳なんだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
その鉛筆の不規則な
顫動
(
せんどう
)
によって彼の代表している犯人の内心の動乱の表識たるべき手指のわななきを見せるというような細かい技巧が要求される。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
よく見ると、それには
盥
(
たらい
)
のような眼玉が二つ、クルクルと動いていた。畳一枚ぐらいもあるような
翅
(
はね
)
がプルンプルンと
顫動
(
せんどう
)
していた。物凄い怪物だッ!
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
芬
(
ぷん
)
と薬の香のする
室
(
へや
)
の
空間
(
あきま
)
を
顫動
(
せんどう
)
させつつ
伝
(
つたわ
)
って、雛の全身に
颯
(
さっ
)
と流込むように、その一個々々が活きて見える……
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この歌は、志貴皇子の他の御歌同様、歌調が明朗・直線的であって、然かも
平板
(
へいばん
)
に
堕
(
おち
)
ることなく、細かい
顫動
(
せんどう
)
を伴いつつ荘重なる一首となっているのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
すると、その
顫動
(
せんどう
)
が電波のように心に伝わって
刹那
(
せつな
)
に不思議な意味が
仄
(
ほの
)
かに
囁
(
ささや
)
かれる——いのちの呼応。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
熱烈にとびかえり、ぴったりとよっても、まだその緊張の
顫動
(
せんどう
)
はのこっているというわけなのです。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
不思議
(
ふしぎ
)
な
顫動
(
せんどう
)
が
何
(
なに
)
か
必死的
(
ひつしてき
)
な
感
(
かん
)
じで二三
分間
(
ぷんかん
)
つづくと、
蜂
(
はち
)
はやがて
穴
(
あな
)
のそとへ
出
(
で
)
て
來
(
き
)
た。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
ここではパートの崩壊、積重、綜合の排列情調の動揺若くはその突感の差異分裂の
顫動
(
せんどう
)
度合の対立的要素から感覚が閃き出し、主観は語られずに感覚となって整頓せられ爆発する。
新感覚論:感覚活動と感覚的作物に対する非難への逆説
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そうしてあの
頸
(
くび
)
の、静かな、柔らかな、そうしてきわめてわずかなうねり方は、ロシア舞踊に満足すると全然異なった方向において、我々の心に鋭い
顫動
(
せんどう
)
を呼び起こしはしないか。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
墜ちがけに、からかさのように拡がった隣りのトド松の枝をつき飛ばした。それは、
篩
(
ふるい
)
のように揺すぶれ、弾力のあるかたい葉は
顫動
(
せんどう
)
しつづける。雪はほこりのように降って来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
浄明寺
(
じょうみょうじ
)
の出陳である。
舟型光背
(
ふながたこうはい
)
につつまれた、明快で優に
妙
(
たえ
)
なる御姿である。技巧は極めて繊細であるが、よく味ってみれば作者の
弛
(
ゆる
)
みなき神経が仏像を一貫して、活きて
顫動
(
せんどう
)
している。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
八右衛門岳が立っている、東西は一里に足らず、南北は三里という
薬研
(
やげん
)
の底のような谷地であるが、今憶い出しても脳神経が盛に
顫動
(
せんどう
)
をはじめて来る心地のするのは、晶明、透徹のその水
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
占
(
うらな
)
ひ、
禁呪
(
まじなひ
)
、
呪文
(
じゆもん
)
、そんなものの外に、或種の魔法の杖を持つて歩き、それが倒れた方角と角度と、
顫動
(
せんどう
)
とで、地下の埋藏金を見出す方法をさへ、一般に信じられた時代があつたのでした。
銭形平次捕物控:306 地中の富
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつか彼女が金か何か盗んだときに、みんなで捕まえようとしたが、彼女の肩や手に手をふれると、異様なエレクトリックの
顫動
(
せんどう
)
をかんじると同時に、とくに変な悪寒さえ感じたのであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
信号が鳴らされた——マストの上にいる水夫やデッキにいるその仲間の耳にはあまりに低いが、それでも寺院の石がオルガンの低い音響にふるえるように、船のなかではその
顫動
(
せんどう
)
を感じるのだ。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
顫動
(
せんどう
)
し、波動し、光を力となし思想を原素となし、
伝播
(
でんぱ
)
して分割を許さず、「我」という幾何学的一点を除いてはすべてを溶解し、すべてを原子的心霊に引き戻し、すべてを神のうちに開花させ
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
互いの微苦笑が、頬の神経に細かい
顫動
(
せんどう
)
を与えたことであろう。
春宵因縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
絶えずビクビク……ビクビク……と
顫動
(
せんどう
)
しているだけであった。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そは
遮
(
さえ
)
ぎられたる風の静なる
顫動
(
せんどう
)
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
匂
(
にほひ
)
高き
空気
(
くうき
)
の
迅
(
はや
)
き
顫動
(
せんどう
)
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
單色
(
たんしよく
)
の
顫動
(
せんどう
)
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
またそれから波打つような
顫動
(
せんどう
)
が伝わってくるのも感ぜずに、ひたすら耳が鳴り顔が火のように
熾
(
ほて
)
って、彼の眼前にある驚くべきもの以外の世界が
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
但
(
ただ
)
し、
潜水兜
(
せんすいかぶと
)
とちがっているのは、その
頂天
(
てっぺん
)
のところに、赤い一本の
触角
(
しょくかく
)
のようなものが出ていて、これがたえず、ぷりぷりと
厭
(
いや
)
な
顫動
(
せんどう
)
をつづけているのだ。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしてアムゼル鳥の朗かなこゑは、ときどき夕の空気を
顫動
(
せんどう
)
させてゐる。歩道にはところどころにベンチが据ゑてあつて、そこに人が群がつて腰をかけてゐる。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ただその心臓は音するばかり、波立つごとく
顫動
(
せんどう
)
せるに、
溢敷
(
こぼれし
)
きたる黒髪
揺
(
ゆら
)
ぎて、
千条
(
ちすじ
)
の
蛇
(
くちなわ
)
蠢
(
うご
)
めきぬ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふだん長い
睫毛
(
まつげ
)
をかむって煙っている彼女の眼は、切れ目一ぱいに裂け
拡
(
ひろ
)
がり、白眼の中央に取り残された瞳は、異常なショックで凝ったまま、ぴりぴり
顫動
(
せんどう
)
していた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
打ち崩されるたびに
復
(
また
)
同じ順序がすぐ繰返された。自分はついに彼女の
唇
(
くちびる
)
の色まで鮮かに見た。その唇の
両端
(
りょうはし
)
にあたる筋肉が声に出ない言葉の
符号
(
シンボル
)
のごとく
微
(
かす
)
かに
顫動
(
せんどう
)
するのを見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、それを
押
(
お
)
し
入
(
い
)
れきつてしまふと、
蜂
(
はち
)
は
今度
(
こんど
)
は
逆
(
ぎやく
)
にあとずさりしながら、
自分
(
じぶん
)
の
尻
(
しり
)
の
方
(
はう
)
を
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
へ
差
(
さ
)
し
込
(
こ
)
んだ。と
同時
(
どうじ
)
に、
穴
(
あな
)
のそとに
出
(
で
)
た
頭
(
あたま
)
と
前半身
(
ぜんはんしん
)
が
不思議
(
ふしぎ
)
な
顫動
(
せんどう
)
を
起
(
おこ
)
しはじめた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
声は無いが、強烈な、
錬稠
(
れんちゅう
)
せられた、
顫動
(
せんどう
)
している、別様の生活である。
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
下からぴりぴり響いて来る機関の
顫動
(
せんどう
)
にも気を取られなくなった。ざぶんざぶんと船腹に砕ける浪の音にもおどろきを感じなくなった。一刻々々船に馴れているのだ。そして彼らはとろッとした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
おいおい知覚されて来た刺戟によってピリピリと瞼や唇が
顫動
(
せんどう
)
する。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
最後の一句が終らぬうちに、ジナイーダの総身に細かい
顫動
(
せんどう
)
が
戦
(
おのの
)
いた。が、次の瞬間、彼女はカラカラと
哄笑
(
たかわらっ
)
って
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
旅人の歌は明快で、
顫動
(
せんどう
)
が足りないともおもうが、「見し人ぞ亡き」に詠歎が籠っていて感深い歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そこには一種のアイロニーが
顫動
(
せんどう
)
していた。
縕袍
(
どてら
)
は何かの
象徴
(
シンボル
)
であるらしく受け取れた。多少気味の悪くなった津田は、お延に背中を向けたままで、
兵児帯
(
へこおび
)
の先をこま結びに結んだ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
舞台の端に「エジプト筋肉
顫動
(
せんどう
)
ダンス」と書いた札が出ていた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その不安定な無名指に異様な
顫動
(
せんどう
)
が起って、クリヴォフ夫人は俄然
燥
(
はしゃ
)
ぎだしたような態度に変ったからだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
即ち憶良のこの歌の如きは、細かい
顫動
(
せんどう
)
が足りない、而してたるんでいるところのあるものである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
兄さんの調子にも兄さんの
眉間
(
みけん
)
にも
自烈
(
じれっ
)
たそうなものが
顫動
(
せんどう
)
していました。兄さんは突然
足下
(
あしもと
)
にある小石を取って二三間
波打際
(
なみうちぎわ
)
の方に
馳
(
か
)
け出しました。そうしてそれを
遥
(
はるか
)
の海の中へ投げ込みました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“顫動”の意味
《名詞》
顫 動(せんどう)
小刻みに震え動くこと。
(出典:Wiktionary)
顫
漢検1級
部首:⾴
22画
動
常用漢字
小3
部首:⼒
11画
“顫動”で始まる語句
顫動音