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頽廃
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たいはい
ふりがな文庫
“
頽廃
(
たいはい
)” の例文
旧字:
頽廢
互いに口角泡を飛ばして世の
頽廃
(
たいはい
)
を怒り、人心の堕落と無恥を
叱咜
(
しった
)
している、「要するに彼らは猿だ、犬だ、豚だ」などとわめく。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
新院は五つ、天皇は八つ、西も東もわからない、いたいけな幼児たちは、この
頽廃
(
たいはい
)
した院政の、最も大きな犠牲者だったのである。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
そういう中にあって彼女は、進んだ理論や極度に
頽廃
(
たいはい
)
的な芸術や世態の動揺や市民的感情などの、最も不思議な混和体を形造っていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ルーレットのモナコ、悪徳の町、三十九の
機会
(
チャンス
)
の町、妾の運命、そんなとりとめのない
頽廃
(
たいはい
)
した意思が妾を支配していたのです。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
旧
(
ふる
)
い小泉の家——その
頽廃
(
たいはい
)
と零落との中から、若草のように成長した娘達は、叔父に聞かせようとして一緒に唱歌を歌い出した。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
現代の道徳的
頽廃
(
たいはい
)
に特徴的なことは、偽善がその頽廃の普遍的な形式であるということである。これは頽廃の新しい形式である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
憂鬱
(
ゆううつ
)
でなしに力を、精神の
頽廃
(
たいはい
)
でなしに緊張を、たえず摂取していったのは、彼の強烈な生命の力のゆえにほかならなかった。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その時代の
頽廃
(
たいはい
)
派でもあったのか、生家とは
行来
(
ゆきき
)
もせず、東京へ出て愛する者と共に住み、須磨子さんを生ませたのだった。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
凡
(
すべ
)
てが
頽廃
(
たいはい
)
の影であり
凋落
(
ちょうらく
)
の色であるうちに、血と肉と歴史とで結び付けられた自分をも併せて考えなければならなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「作業ノ健康ニヨキハ其休止ト適当ニ交代スルニアリ。精励勉強ノミアリテ逸予
休竭
(
きゅうけつ
)
ナケレバ精神身体共ニ
頽廃
(
たいはい
)
スベシ」。
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
だのに、江戸はこの
頽廃
(
たいはい
)
ぶりだ。幕府は無能だ。——誰が、神国のこの危機を救うか。われわれはもう、
腐
(
す
)
えた幕府などはとうに見捨てている。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
経済的には
膨脹
(
ぼうちょう
)
していても、真の生活意識はここでは、京都の固定的なそれとはまた異った意味で、
頽廃
(
たいはい
)
しつつあるのではないかとさえ疑われた。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんな所へ人の出入りがあろうなどと云うことは考えられない程、寂れ果て、
頽廃
(
たいはい
)
し切って、見ただけで、人は
黴
(
かび
)
の臭を感じさせられる位だつた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
この街にあるものは、ただ、如何にも植民地の場末と云った感じの・
頽廃
(
たいはい
)
した・それでいて、妙に虚勢を張った所の目立つ・貧しさばかりである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
従つて美しいと云ふことから言へば、彼等の作品に
溢
(
あふ
)
れた空気は
如何
(
いか
)
にも美しい(勿論多少
頽廃
(
たいはい
)
した)ものであらう。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夕焼は、それを諸君に訴えて、そうして悲しく
微笑
(
ほほえ
)
むのである。そのとき諸君は夕焼を、不健康、
頽廃
(
たいはい
)
、などの暴言で罵り嘲うことが、できるであろうか。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
敗戦後国民の道義
頽廃
(
たいはい
)
せりというのだが、然らば戦前の「健全」なる道義に復することが望ましきことなりや、賀すべきことなりや、私は最も然らずと思う。
続堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
* 浮世絵の哲学は或る
頽廃
(
たいはい
)
的なる官能の世界に没落し、それと情死しようとするニヒリスティックなエロチシズムで、
歌麿
(
うたまろ
)
や
春信
(
はるのぶ
)
が最もよく代表している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
これは郷里に帰つて城北の侍町を過ぎた時の所感を述べたもので無論維新後に
頽廃
(
たいはい
)
した侍町のつもりである。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
自分らが目撃しているのは、無論
頽廃
(
たいはい
)
を極めた最後の姿であって、以前は統制ある一つの組織を具えていた。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この酒場、
頽廃
(
たいはい
)
しきった様子、乾草舟の五夜、ウォートカの瓶——しかもそれと同時に、妻と家族に対するこの病的な愛情は、青年をとまどいさせてしまった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
年齢から来ているのかも知れない。しかしその当時は彼は自分の心が
頽廃
(
たいはい
)
することが一番こわかったのだ。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
いわゆる
我
(
われ
)
あるを知って
他
(
た
)
あるを忘れ、個人あるを知って国家を思わぬので、
彼我
(
ひが
)
の信用は地に
堕
(
お
)
ちて実業も振わない、社会の徳義は
紊乱
(
びんらん
)
する、風俗は
頽廃
(
たいはい
)
する
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
頽廃
(
たいはい
)
して行くヨーロッパを逃れて、彼は南海の孤島に土人の娘とともに原始の生活をつづけた。
赫熱
(
かくねつ
)
する太陽の光りと強烈な色彩につつまれて裸体の生活に還った。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
その人と今並んで歩く自分の顔のいかに不健全に病人のごとく
蒼
(
あお
)
ざめ、
頽廃
(
たいはい
)
して見えることであろう。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
何となればわたくしは癸亥震災以後、現代の人心は一層険悪になり、風俗は
弥
(
いよいよ
)
頽廃
(
たいはい
)
せんとしている。
此
(
かく
)
の如き時勢にあって身を処するにいかなる道をか取るべきや。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その子は今桑摘みに行っていないがとにかく
是非
(
ぜひ
)
休んで行けといって、
連
(
しき
)
りに一行の者を引止めて茶をすすめながら、木曾街道の駅々の
頽廃
(
たいはい
)
して行く姿をば
慨歎
(
がいたん
)
して
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
時局のために精神主義の名において恋愛を軽視することが、かえって精神を低下させ、国民道徳の
頽廃
(
たいはい
)
を招く、というような結果にならないとは限らないと思います。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
昔ながらの
松明
(
まつのあかり
)
の
覚束
(
おぼつか
)
なき光に見廻はせば、
寡婦
(
やもめ
)
暮
(
ぐ
)
らしの何十年に屋根は漏り、壁は破れて、幼くて
我
(
わが
)
引き取られたる頃に思ひ
較
(
く
)
らぶれば、いたく
頽廃
(
たいはい
)
の色をぞ示す
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
只今は明治の新道徳が
何処
(
どこ
)
まで実行せられているかという事を
撿
(
けん
)
して、それを各自に奨励し合うべき時でこそあれ、最早旧道徳の
頽廃
(
たいはい
)
などを慨歎する時ではありません。
女子の独立自営
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
十九世紀末のフランス的な、最も
妖麗
(
ようれい
)
な、最も
頽廃
(
たいはい
)
的な美を持った歌劇を書いた作曲家である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
これは考えものだ……ことに今日のような
頽廃
(
たいはい
)
を極めた時代を、かえって
諷誡
(
ふうかい
)
しているような文字とも思われるが、しかし、よく考えてみると、古来、日本武人の一面には
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……何といふ
頽廃
(
たいはい
)
、何といふ無気力と人は言ふであらう。
然
(
しか
)
り、私もそれは知つてゐる。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
……
糜爛
(
びらん
)
した神経、磨ぎ澄まされた感覚、
頽廃
(
たいはい
)
した情緒、衰え切った意志、——いわゆる浮世のすたれ者! そういう者にはそういう者だけの、享楽の世界があろうというものだ
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ああ、この事件はあらゆる犯罪の中で、道徳の最も
頽廃
(
たいはい
)
した型式なのでございます。そして、その
黝
(
くろ
)
ずんだ
溝
(
どぶ
)
臭い溜水の中で、あの五人の方々が
喘
(
あえ
)
ぎ
競
(
せめ
)
いていたのでございますわ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私は同じように工藝時代をこの地上に来らすために、日常品の救いを極めて重要視する者の一人です。民藝品は用器中の用器です。その堕落は直ちに工藝の
頽廃
(
たいはい
)
を意味するのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
殊
(
こと
)
に文化文政以後の
頽廃
(
たいはい
)
し始めた江戸文明の研究が、大好きで、その時代を背景として、いい歴史小説を書こうと思っていた私は、その時代を眼で見
身体
(
からだ
)
で暮して来た祖母の口から
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
勿論その尊敬は、悲壮と云うような観念から惹き起される一種の尊敬心で、例えば
頽廃
(
たいはい
)
した古廟に白髪の
伶人
(
れいじん
)
が端坐して
簫
(
ふえ
)
の秘曲を奏している、それとこれと同じような感があった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この女体は押原右内の道具のようなものでしかないが、御家
頽廃
(
たいはい
)
の源の一つはたしかにそこにあるのである。そのうちにお糸の方が舞いだした。毒のある花だが、美しいことは美しい。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
頽廃
(
たいはい
)
させ、堕落させ、
迷乱化
(
めいらんか
)
させ、悶絶化させつつ、何喰わぬ顔をして頭蓋骨の空洞の中にトグロを巻いているという、悪魔中の悪魔ソレ自身が脳髄ソレ自身になって来るという一事だ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
したがって何故淫蕩
頽廃
(
たいはい
)
を極めた往古の
埃及
(
エジプト
)
貴族の夫人たちが、この犬を愛育したか
君寵
(
くんちょう
)
を失った
後宮
(
ハレム
)
の宮女たちがこの犬を愛玩したか、これで大体の御想像もお付きになれたことと思いますが……
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
頽廃
(
たいはい
)
の気風がなにか船中に
漂
(
ただよ
)
いだした感じがしてなりませんでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
三菱ヶ原の四軒長屋と
称
(
とな
)
えた頃であとは狐狸の住んでいそうな原であった。中には大名屋敷であった時分の築山が、
頽廃
(
たいはい
)
したままで残っていたりした。有名なお艶殺しのあったのもその時分であった。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それはわれわれ大人の
頽廃
(
たいはい
)
しかけた徳義に対して子供の光り輝く清浄無垢が有する神秘である。あたかも彼らは自ら天使であることを感じ、われわれ大人が人間であることを知ってるかのようである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてだれも皆、印象派の画を集め、
頽廃
(
たいはい
)
派の書物を読み、彼らの思想とは大敵である極端に貴族的な芸術を、
追従
(
ついしょう
)
的に味わっていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
まして好むと否とにかかわらず
頽廃
(
たいはい
)
は人を酔わすものだ。梅八はすでにその酔いを忘れる事の出来ない女になっていた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
然しこういう人間は、松井の四人兄弟ばかりでなく、すでに末期相を
兆
(
あら
)
わした
頽廃
(
たいはい
)
文化の中には、ほかにも、類型が沢山うごめいていたに違いない。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岸本はそうした
頽廃
(
たいはい
)
した心を
有
(
も
)
った人が極度の
寂寞
(
せきばく
)
を感じながら
曾
(
かつ
)
てこの世を歩いて行ったことを想って見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
敗戦後国民の道義
頽廃
(
たいはい
)
せりというのだが、
然
(
しか
)
らば戦前の「健全」なる道義に復することが望ましきことなりや、賀すべきことなりや、私は最も然らずと思う。
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
零落
(
おちぶ
)
れた家の後添えの腹に三男として産れて、
頽廃
(
たいはい
)
した空気のなかに生い立って来た笹村の頭には、家庭とか家族とかいうような観念もおのずから薄かった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
“頽廃”の意味
《名詞》
頽廃(たいはい)
くずれ廃れること。
不健全になること。
(出典:Wiktionary)
頽
漢検1級
部首:⾴
16画
廃
常用漢字
中学
部首:⼴
12画
“頽廃”で始まる語句
頽廃的
頽廃人
頽廃期
頽廃派