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ちんにゅう
ふりがな文庫
“
闖入
(
ちんにゅう
)” の例文
教師
愈
(
いよいよ
)
仏頂面をして曰、「それはお断り申します。先達もここの寄宿舎へは兵卒が五六人
闖入
(
ちんにゅう
)
し、強姦事件を惹き起した後ですから」
雑信一束
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
物騒な
代
(
よ
)
の富家大家は、家の内に上り下りを多くしたものであるが、それは勝手知らぬ者の潜入
闖入
(
ちんにゅう
)
を不利ならしむる設けであった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
事件のあったためか、一般の外客は禁足してあり、ただ数人の係員が、私達の
闖入
(
ちんにゅう
)
に対して、好奇の眼を
瞠
(
みは
)
っていたに過ぎなかった。
デパートの絞刑吏
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
彼等は格太郎の顔を見ると、きまり
悪相
(
わるそう
)
にそんなことを叫んで、向うへ逃げて行った。しまいには正一までが彼の部屋へ
闖入
(
ちんにゅう
)
した。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ところが、やがて其の厳しい門を押し破って、
和田
(
わだ
)
合戦の
板額
(
はんがく
)
のように
闖入
(
ちんにゅう
)
した勇者があらわれた。その闖入者は
松居松葉
(
まついしょうよう
)
君であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
新しい自分の生涯に過去が
闖入
(
ちんにゅう
)
してくる口は、わずか開いている一つの
扉
(
とびら
)
があるきりだった。がその扉も今や閉ざされてしまった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
こちらが
闖入
(
ちんにゅう
)
して来たようにもなり、お雪ちゃんとしても、改まっての紹介のとっつき場に、ちょっと迷うのも無理はないと思いました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
七匹いる猫のうち、勇敢で忠実な数匹が、怪しい
闖入
(
ちんにゅう
)
者に向かって、背の毛を逆立ちにし、歯をむきだして、唸りながら、
対峙
(
たいじ
)
していた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
第一には内地からの安ものが無遠慮にこの島に
闖入
(
ちんにゅう
)
してきたからです。外来ものは新しさがあって、とかく美しく思えるのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
天外の楽園にまどかな昼寝の夢を破られた彼等は、不意に
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た人間の声や姿に、どれ程驚かされたことであったろう。
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
その際警官隊の行動は狼藉を極め、争って屋内に
闖入
(
ちんにゅう
)
し、私や妻の室まで土足で踏み荒し、言語道断の暴れようをして行った。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
小山嬢は
額
(
ひたい
)
に青筋をたてて
憤慨
(
ふんがい
)
の
面持
(
おももち
)
で突然
闖入
(
ちんにゅう
)
したる背の高い美女を
睨
(
にら
)
みつけている。美貌の青年は、にやりと笑っている。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ゆるしも待たず、あるじ
柴進
(
さいしん
)
の室へ
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た彼は、柴進の身に降って湧いた急な旅行がどんな心配事であるかなどは一こうに無頓着で
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こう考えたからと言って自慢になるものではないが、
若
(
も
)
しかしたなら彼は
疾
(
と
)
うにあの郵便局へ
闖入
(
ちんにゅう
)
していたのかも知れない。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
その私室へ
闖入
(
ちんにゅう
)
することは出来ないにしても、少なくとも彼が甲板にある限りは、私もかならず甲板にとどまっていることにしようと思った。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
ある家では、乱暴にも女中部屋の窓を打ち破って
闖入
(
ちんにゅう
)
した者があった。そこの家では、困り果てたので大きな犬を他家から貰って来て飼った。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
我々の
闖入
(
ちんにゅう
)
してきたのに神経を
尖
(
とが
)
らせているこの国の人たちにとっては、決して嬉しい感情のものではなかったに違いない。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
夫を奪おうとした憎むべきリメイに断乎としてヘルリスを挑むべく、
海盤車
(
ひとで
)
に襲いかかる
大蛸
(
おおだこ
)
の様な猛烈さで、彼女はア・バイの中に
闖入
(
ちんにゅう
)
した。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
教室全体がしんとしているのに、ひそかにぶつぶついう声がみなぎっているのだ。ところが突然その静粛を破って、黒人がひとり
闖入
(
ちんにゅう
)
してきた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それは、
羞
(
はじら
)
いながらも、彼の
闖入
(
ちんにゅう
)
を許している微笑だった。彼の闖入というよりも、彼自身を許している微笑だった。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
天床ふすまにぴんと反響する叫び声、同時に座敷の三方から身ごしらえ厳重な捕方役人がばらばらと
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「霊場を荒す
狼藉者
(
ろうぜきもの
)
が
闖入
(
ちんにゅう
)
じゃッ。
末院
(
まついん
)
の御坊達お山警備の
同心衆
(
どうしんしゅう
)
! お出合い召されいッ、お出合い召されいッ」
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
同時に公が忍び込んだ地下道の方からも、五六人の小姓共が公の跡を追いながら、ひとかたまりになって
闖入
(
ちんにゅう
)
した。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何より御詫びしておきたいのは、僕は貴女の御許しを
俟
(
ま
)
たずに、心像奥深くを探って
闖入
(
ちんにゅう
)
していったのですから……
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
初めからこれは
闖入
(
ちんにゅう
)
者であると知っていたならば今少し抵抗のしかたもあったのであろうが、こうなれば夢であるような気がするばかりの姫君であった。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
けれども、にわかに荒くれた、彼等の仲間ではこんなに無慈悲で、不作法なものはなかった人間どもが、昔ながらの「仕合わせの領内」へ
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
次郎はむろんお祖母さんの
闖入
(
ちんにゅう
)
によって、ひどく気分をみだされた。しかし彼はもう、彼がこれまで彼女からうけていたような強い圧迫を感じなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼理
(
ペリー
)
江戸湾に
闖入
(
ちんにゅう
)
するに際し、
蒼皇
(
そうこう
)
措置を失したる、また
宜
(
う
)
べならずや。外交の紛雑、幕閣
豈
(
あ
)
に責なしとせんや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
何気
(
なにげ
)
なく
閉
(
と
)
じたる目を見開けば、こはそも
如何
(
いか
)
に警部巡査ら十数名手に手に警察の
提燈
(
ちょうちん
)
振り照らしつつ、われらが城壁と
恃
(
たの
)
める室内に
闖入
(
ちんにゅう
)
したるなりけり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
クリストフがやって来るときには、いつも二人の間にいて客間を去りたがらなかった。あるいは二人がいっしょにいる室へ突然
闖入
(
ちんにゅう
)
するように振る舞った。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
暫
(
しばら
)
くは、次の動作に移る考えも浮ばず、ぼんやり湯気の中に
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た八五郎を眺めて居りましたが、次の瞬間、何を考えたか、立上って柱の上の
手燭
(
てしょく
)
を
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
三蔵は鉢巻、襷がけ、草鞋ばきで抜刀し、入口から
闖入
(
ちんにゅう
)
する者に備えている。雨戸を叩く音が激烈になる。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
その異様な声は、争ひながら古島さんが夢中で立てた悲鳴だつたらしいのです。のこる三人は思はず棒ブラシを捨てて、その不意の
闖入
(
ちんにゅう
)
者のそばへ走せ寄りました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
三斎屋敷
闖入
(
ちんにゅう
)
を決心、がに股のちび助、吉公に打ちあけて、
諫
(
いさ
)
めるのを振り切って、忍び込んだのだったが、その晩、あの雪之丞に
見咎
(
みとが
)
められ、それがきっかけで
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
暫くしてから、朝井刑事が猛烈に手を振ったので部下の警官は応接室へ
闖入
(
ちんにゅう
)
して二人を引き離した。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
成経 野武士らはわしの
懇願
(
こんがん
)
を
下等
(
かとう
)
な
怒罵
(
どば
)
をもって拒絶した。そして扉を破って
闖入
(
ちんにゅう
)
し、
武者草鞋
(
むしゃわらじ
)
のままでわしの
館
(
やかた
)
を
蹂躪
(
じゅうりん
)
した。わしはすぐに飛び出て馬車に乗った。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それをいやらしいと思い、ひどいと思い、たかが窓を開けのぞいたぐらいのことで私に
闖入
(
ちんにゅう
)
されたと非難するのは、すべて相手の事情であり、私の知ったことではない。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
そこで二万銭の賞金を懸けて二人の自衛団が危険を冒してやっとこさと垣根を越えて、内外相応じて一斉に
闖入
(
ちんにゅう
)
し、阿Qを
抓
(
つま
)
み出して
廟
(
おみや
)
の外の機関銃の左側に引据えた。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そのいずれか、とフト胸がせまって、涙ぐんだ目を、たちまち血の電光のごとく射たのは、林間の自動車に
闖入
(
ちんにゅう
)
した、五体個々にして、しかも
畝
(
うね
)
り
繋
(
つなが
)
った赤色の
夜叉
(
やしゃ
)
である。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この状態において民衆の暴動の起こるのは当然である。彼らは徒党をくんで富家に
闖入
(
ちんにゅう
)
し、手当たり次第に飲み食った。あるいは銭米を
強請
(
ごうせい
)
してそれを徒党の間に分配した。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
これは友人が警告したにもかかわらず、江戸へ向く途中の薩摩の大名の行列に
闖入
(
ちんにゅう
)
して殺された、一人の高慢きわまる英国人の、かたきをとるためにやったことなのである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「どこの何者かわからん奴が垣を越えて邸内に
闖入
(
ちんにゅう
)
するのを、そう
容易
(
たやす
)
く許されると思うか」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
敲音
(
ラップ
)
を
以
(
もっ
)
て一字ずつ書き綴るのは
煩
(
わずら
)
わしきに過ぎ、又
入神状態
(
にゅうしんじょうたい
)
に
於
(
おい
)
て口で
喋
(
しゃべ
)
るのは、その全部を保存し難く、又潜在意識の
闖入
(
ちんにゅう
)
を、充分に防止し得るとは保証し難い所がある。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
すでにそこにはお艶の姿はなく、この狂気めいた武士の
闖入
(
ちんにゅう
)
に、家の内外に人の立ちさわぐのが、聞こえるばかり……ポカンとした源十郎が、血走った眼でそこらを見まわす!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
岡田の空想の領分に折々この女が
闖入
(
ちんにゅう
)
して来て、次第に我物顔に立ち振舞うようになる。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ラサ府にうろついて居るところのごろつき壮士坊主というような
無頼漢
(
ならずもの
)
も沢山に混って居て、セラの壮士坊主と共にパルポ商人の店々に
闖入
(
ちんにゅう
)
し夜の明けるまで乱暴
狼藉
(
ろうぜき
)
を働いて
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
半裸体
(
はんらたい
)
の女が幾人となくごろごろ
寐転
(
ねころ
)
がっている部屋へ、無断で
闖入
(
ちんにゅう
)
しても、風紀を
紊乱
(
びんらん
)
することの出来るような体力は既に
持合
(
もちあわ
)
していないものと、
見做
(
みな
)
されていたと言ったなら
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「うん。おまえは二十七日の晩ファゼーロと連れだって村の園遊会へ
闖入
(
ちんにゅう
)
したなあ。」
ポラーノの広場
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
紅葉はこれに反して、腹の中には鉄条網を張って余人の
闖入
(
ちんにゅう
)
を決して許さなかったが、
表面
(
うわば
)
は城門を開放して靴でも
草鞋
(
わらじ
)
でも
出入
(
しゅつにゅう
)
通り抜け勝手たるべしというような顔をしていた。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
闖入
(
ちんにゅう
)
して来た四人の者は小屋に向ってまっすぐに突進し、走りながら喚き声をあげた。すると樹立の中にいる連中もわあっと喚き返して彼等を声援した。こちらからは数発撃った。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
“闖入”の意味
《名詞》
闖 入 (ちんにゅう)
無断で押し入ること。
(出典:Wiktionary)
闖
漢検1級
部首:⾨
18画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“闖入”で始まる語句
闖入者