おさ)” の例文
州の諸侯をはじめ、郡県市部のおさや官吏は、逃げ散るもあり、くだって賊となるもあり、かばねを積んで、き殺された者も数知れなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
定基は図らずも三河の赤坂のおさの許の力寿という美しい女に出会った。長というのはうまやの長で、駅館をつかさどるものが即ち長である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼は部落のおさだけに深く責任を感じていた。そうして長となるだけあって宗介天狗を尊ぶ情と部落を愛する心持ちとは人一倍強かった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
現世的な刑罰機関のおさたる典獄迄が、その便宜を計り、それを奨励するに至っては、被害者達の魂は浮ばれようもないではありませんか。
ある抗議書 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さらに同書によれば命は『天地あめつちの初りの後、あめ御領田みしらたおさ供奉つかえたてまつりき』とあるので、農耕に親しまれた事も判然する。
関七流のおさ、孫六の把握し得た水火鍛錬たんれんの奥義、かれの死とともにむざむざ墓穴に埋もれはてたというのであろうか?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
壬生部の中心が、氏のおさの近親の女であったことも確かである。こうして出現した貴種の若子わくごは、後にその女と婚することになったのが、古い形らしい。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
光彩を放ちながら傲然ごうぜんとつっ立って彼は、獰猛どうもうなる天使のおさの超人間的獣性を青空のまんなかにひろげていた。
でケメトスは、飛び方のおさとして王様からかかえられ、宮殿のうちの立派な部屋に住むこととなりました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
サルとは何の意か知らぬが巫女のおさを猨女の君と呼んだなどより考うると、本邦固有の古名らしく、朝鮮とアイヌの辞書があいにく座右にないからそれは抜きとして
多くの場合には幸い新たに召抱えの必要もある場合であるから、以前の通り刀がさしておりたければ出て来て奉公をせよ、もしまた奉公がいやなら普通のおさ百姓の通りに年貢を納めよと
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昨日までの身どもらはおさなき船も同然、それも今日では昔がたりになりました。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
天皇陛下は上にましまして、多くの貴族のおさにておわしたばかりでなく、御自身にも直属の土地人民を御所有になりました。その土地を耕す農民を田部とも、オオミタカラとも申しました。
播磨守泰親は陰陽博士おんようはかせ安倍晴明あべのせいめいが六代の孫で、天文亀卜きぼく算術のおさとして日本国に隠れのない名家である。その人の口からお前には怪異が憑いていると占われて、千枝松はいよいよ怖ろしくなった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それによると女の父は、この川上かわかみの部落のおさをしている、足名椎あしなつちと云うものであった。ところが近頃部落の男女なんによが、続々と疫病えきびょうたおれるため、足名椎は早速巫女みこに命じて、神々の心を尋ねさせた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
麦秋やいたち啼くなるおさがもと
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
まさに絶えなんとする息の下で、お前の母は、原士のおさの老武士へ頼んだ。——孫兵衛が改心するまで月代さかやきをのばすことはなりませぬ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私、殿の内命を受け、杉窪の里へまかりこし、二代目のおさ楠右衛門なんえもんについて、取り調べましたところでは、それに相違ございません」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
関白忠通卿が桂の里の山荘でも、三月のなかばに花のうたげが催された。うじおさという忠通卿の饗宴に洩れるのは一代の恥辱であると言いはやされて、世にあるほどの殿上人は競ってここに群れ集まった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
福人ふくじんなりとて売薪者たきぎうりを急に一聚落ひとむらおさに封ぜられしとぞ。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
銅兵衛という杉窪のおさと、将右衛門という木地師のかしらだ。……そのうち原の城は落ちてしまった。二人の家来からはたよりがない。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「わしは原士のおさ郷高取謁見格ごうたかとりえっけんかく、お前たちが退れの、下におれのというのは僭越せんえつじゃ。殿様にもう一言ひとこといわねばならぬことがある、離せ」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と窩人のおさの、杉右衛門はきっと眼をいからせ、彼の前にずらりと並んでいる五百に余る窩人の群を隅から隅まで睨み廻したが
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
拝郷はいごう殿、おさ殿、原殿、——浅見殿。御子息権六勝敏様なども加えられ、御幕下のみで御陣幕にもられておられまする」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはどっちとも解らないが物語はここで岐路へはいり、牢番のおさ、石右衛門と石右衛門の娘葉末はずえについて少しく説明をしなければならない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それや龍耳りゅうじ老人は怖ろしいにきまっている。原士のおさはあの人だから治まっているといわれているくらいなものだ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元お父様の住んでいた西班牙イスパニアという国なのじゃ。その西班牙の会堂なのじゃ。お前のお父様のこの私は、日本に渡らぬその前はこの会堂のおさであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昼のうちこの辺りまで、六波羅ろくはらの武士が来て、宿場のおさや、沙汰人どもをあつめ、訓示して去ったことばには
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それの秘密をあばいた者は、道教でいうところの寿福栄華を、一度に掴むことが出来るのだから、山尼のおさ高蔵尼こうぞうにが、欲しく思ったのは当然といえよう
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思うに、ばばは、一家のおさとしてまた、子の母として、人間として、自分は善人無欠の人間と信じているのだ。自分の行為はすべて善なりとしているのだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弾正太夫というたところでたかが我々賤民のおさじゃ。それに比べては神保様は足利将軍より許されて飛騨を領する国司大名じゃ。おのずから身分に高下がある。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
石浜宿の住民が、隅田川でったという鮮魚を小舟で献上に来た。それから少し後、附近の神社の神官や土民のおさが、連れ立って、拝礼を遂げて帰ってゆく。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……水狐族の妖術だな。あの老婆がおさなのであろう。人を音楽で引き寄せる。不思議なことがあればあるものだ。……家の中で何をしているのだろう?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と——原士のおさ、七人の肉親たちとともにしばらく黙祷もくとうをささげ、死者の前で厳然とお前にいい渡した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
原士のおさ龍耳りゅうじ老人とおっしゃる方の飛耳張目ひじちょうもくに使われまする者で、永年の間、私のいいつけられていた役目は、関屋孫兵衛の頭巾を監視することでございました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、時々道人を訪ね、思い出話をやりながら、萩原部落のおさとして、繁栄を計ったということである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
旅行者は絶え、駅路のおさや役人も、みな逃げ去ったか、姿も影も見せない。——こんなわけなので、征夷大将軍忠文自身が、足柄あしがらノ関へかかるのさえ、容易でなかった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後に原の城をぬけ出したのが、杉窪のおさの銅兵衛で、かれはその時思ったものである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土地の郡司や村のおさなど、一かたまりになって迎えに出ていた。頼朝は馬上から一べつを与え
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竈の火口ほくちへ手をかざしながら、草賊そうぞくおさ毛利薪兵衛は、物臭ものぐさそうにこう云った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だから誰よりもおまえの心に相談するのだが、おまえは、わしが所司代となっても、市尹しいんおさ〉たるわしのすることには、一切口出ししないと誓うなら、任官しようと思うが
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高麗国こまのくにの滅亡するや、その遺民唐のぞくむことを潔しとせず、相率いて我が国に帰化し、その数数千に及び、武蔵その他の東国に住んだが、それらの者のおさ剽盗ぞくに家財を奪われるを恐れ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それです。それがしも一個の隊商のおさに化け、なるべく野盗の眼を避けて、お引きうけした以上は、東京とうけいさい大臣がご門前まで、無事、おとどけ申したい存念にございますれば」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれほど鳴らした海賊のおさ、さぞ立派な最期さいごをとげようぞ」
そしてこの秋を、部落のおさ千蛾せんが老人は、ひどくさびしく閉じこめていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帷幕いばくに会する者、前田利家父子おやこを始めとし、勝家の養子勝政、不破ふわひこ勝光かつみつ、徳山五兵衛則秀のりひで、金森五郎八長近ながちか、原彦次郎房親ふさちか、拝郷五郎左衛門家嘉いえよしおさ九郎左衛門連龍つらたつ、安井左近太夫家清いえきよなど。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この天嶮てんけんをかく短時間に落城させた原因の一つだが、もっと大きな理由はもともとこの犬山はそれ以前に、池田勝入が城主となっていたことがあり、町の人々や近郷きんごうおさ、百姓にいたるまでが、今も
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多くは一様な強力ごうりき姿だが、楊志と謝は隊商のおさといったよそおい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はいった家は、その村のおさやしきらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、ここの別府を守るさくおさか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)