トップ
>
蜒
>
うね
ふりがな文庫
“
蜒
(
うね
)” の例文
痣のある武士、ムーッと呻くと、ポタリと刀を落としたが、全身を弓のように
蜒
(
うね
)
らせると、ヒョロヒョロヒョロヒョロと前へ出た。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして時には甲板よりも高く
蜒
(
うね
)
ってゆく長いうねりを息をひそめて見つめていたが、思わず知らず或時大きな声を上げてしまった。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
さらに、もう一息、山道を登ってゆくと、東山殿の泉は、余りに近すぎて足元の木蔭にかくれ、加茂川の白い
蜒
(
うね
)
りがずっと眼の下へ寄っている。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
否
(
いいえ
)
、今
謂
(
い
)
つたぢやないか、人の通る
路
(
みち
)
は廻り/\
蜒
(
うね
)
つて居るつて。だから聞くんですが、
他
(
ほか
)
に何か
歩行
(
ある
)
きますか。」
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
カーブにつれて列車が
蜒
(
うね
)
り、幸子の振る手が見えなくなってから、朝子は歩き出した。すると、人ごみの中から
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
浅虫の濃灰色の海は重く
蜒
(
うね
)
り、浪がガラスの破片のように三角の形で固く飛び散り、墨汁を流した程に真黒い雲が海を圧しつぶすように低く垂れこめて、
嗟
(
ああ
)
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
紅を
潮
(
さ
)
してゐる、日は少し西へ廻つたと見えて、崖の影、
峯巒
(
ほうらん
)
の影を、深潭に
涵
(
ひた
)
してゐる、
和知川
(
わちがは
)
が西の方からてら/\と河原を
蜒
(
うね
)
つて、天竜川へ落ち合ふ。
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
それは、蒼味を帯びた透明な深さであるが、水面に
蜒
(
うね
)
りが立つと、たぶんさまざまな屈折が影響するのであろうか、その光明には
奇異
(
ふしぎ
)
な変化が起ってゆくのだった。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
日高川の
源
(
みなもと
)
が社の下を
蜒
(
うね
)
って流れて、村の
谷間
(
たにあい
)
をかくれて行く。
小半時
(
こはんとき
)
も村の方を見下ろしていたが、村では別に誰も騒ぐものがない。それで、修験者は扉をあけて社の中へ入ってしまいます。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
両手を前にさし伸べて……手探りをするように
身体
(
からだ
)
をうねうねと
蜒
(
うね
)
らして……中心を取りかねているようであったが、そのうちに両手で夜具を押えつけると、スックリと寝床の上に立ち上った。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
道路
(
だうろ
)
が
朱
(
しゆ
)
のやうに
蜒
(
うね
)
つてゆく。
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
回教寺院
(
モスク
)
型の伽藍の方向へ向かって、波の
蜒
(
うね
)
るように押し出して行き、その回教寺院を破壊するべく、得物々々を揮っているのであった。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
町も場末の、細い道を、たらたらと下りて、ずッと低い処から、また山に向って
径
(
こみち
)
の坂を
蜒
(
うね
)
って上る。その
窪地
(
くぼち
)
に当るので、浅いが谷底になっている。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山の尾根から傳つて歩いてゐると、遠く
渥美
(
あつみ
)
半島が見えた。またその反對の北の方には果もなく次から次と
蜒
(
うね
)
り合つた山脈が見えて、やがて雲の間にその末を消してゐる。
鳳来寺紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
一度は
金色
(
こんじき
)
の
飛沫
(
しぶき
)
が、
室
(
へや
)
いっぱいに飛び散ったかと思うと、次の瞬間、それが濃緑の深みに落ち、その中に
蜒
(
うね
)
りの影が
陽炎
(
かげろう
)
のようにのたくって、その
燦
(
きら
)
びやかさ美しさといったら
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
蜒
(
うね
)
つて
上
(
あが
)
つた段々畑の珊瑚樹に
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蜒
(
うね
)
り
折
(
くね
)
った帯のように、町を横断しているのは、西村堀に相違ない。船が二三隻よっていた。寺々から梵鐘が鳴り出した。
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
畑中の坂の中途から、
巨刹
(
おおでら
)
の峰におわす大観音に詣でる広い道が、松の中を
上
(
のぼ
)
りになる
山懐
(
やまふところ
)
を高く
蜒
(
うね
)
って、枯草葉の
径
(
こみち
)
が細く分れて、立札の道しるべ。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのおり、海は湧き立ち泡立って、その人たちにあらんかぎりの
威嚇
(
いかく
)
を
浴
(
あび
)
せた。
荒
(
し
)
けあとの高い
蜒
(
うね
)
りが、岬の鼻に
打衝
(
ぶつ
)
かると、そこの稜角で真っ二つに
截
(
た
)
ち切られ、ヒュッと喚声をあげる。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
波のように背中を
蜒
(
うね
)
らせて追い、蜈蚣の大群は壁から下りて、床の上をさながら
漣
(
さざなみ
)
のように、騒ぎ立てながら追いかけた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
此方
(
こなた
)
の
麓
(
ふもと
)
に薄もみじした中腹を
弛
(
ゆる
)
く
繞
(
めぐ
)
って、
巳
(
み
)
の字の形に一つ
蜒
(
うね
)
った青い水は、町中を流るる川である。町の上には霧が
掛
(
かか
)
った。その霧を
抽
(
ぬ
)
いて、青天に
聳
(
そび
)
えたのは昔の城の天守である。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぼんやり
点
(
とも
)
っている
行燈
(
あんどん
)
の光で、背を波のように
蜒
(
うね
)
らせながら伊太郎目掛けて飛び掛かって行く巨大な鼬の姿が見えた。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
然
(
そ
)
うぢやの、もの十七八
町
(
ちょう
)
もござらうぞ、さし
渡
(
わた
)
しにしては
沢山
(
たんと
)
もござるまいが、人の
歩行
(
ある
)
く
路
(
みち
)
は廻り廻り
蜒
(
うね
)
つて居るで、
半里
(
はんり
)
の
余
(
よ
)
もござりましよ。」と首を引込め、又
揺出
(
ゆりだ
)
すやうにして
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
香の煙りが流れて来て、屏風を越した衾の上で、淡くウネウネと
蜒
(
うね
)
って見せたが、はかないものの
例
(
たと
)
えかのように、次第に薄れて消えてしまった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
麓
(
ふもと
)
の川の橋へかかると、鼠色の水が一杯で、ひだをうって
大蜿
(
おおうね
)
りに
蜒
(
うね
)
っちゃあ、どうどうッて聞えてさ。
真黒
(
まっくろ
)
な
線
(
すじ
)
のようになって、横ぶりにびしゃびしゃと
頬辺
(
ほっぺた
)
を打っちゃあ霙が消えるんだ。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
プーッと頬を
膨
(
ふく
)
らせた。全身をウネウネと
蜒
(
うね
)
らせた。真っ直ぐに体を押っ立てた。長い
蝋燭
(
ろうそく
)
が立ったようであった。俄然六匹は食い合いを始めた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一
(
ひと
)
ツ
蜒
(
うね
)
つて
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
るのを、肩で乱して払ひながら
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
間もなく
蜒
(
うね
)
る長い紐が、板壁を伝って、床へ下り、薄蒼く月光の射している中を、鎌首を立て尾を揺すり、頼春と浮藻との方へ泳いで行くのが見えた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頭はおおかた禿げているが
諸所
(
ところどころ
)
に
白髪
(
しらが
)
がある。河原に残った枯れ
芒
(
すすき
)
と形容したいような白髪である。黄色い色の
萎
(
しな
)
びた顔。蛇のように
蜒
(
うね
)
っている無数の皺。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一匹の奇形な動物が、背を
蜒
(
うね
)
らして走り廻っていた。犬のように大きな鼬であったが、口に手箱を銜えていた。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は鳥獣を
愛
(
いつく
)
しみ
鰐魚
(
わに
)
をさえも
手
(
て
)
なずけた。彼には鳥獣の啼き声やあるいはその眼の働きやもしくは肢体の
蜒
(
うね
)
らし方によってその感情を知ることが出来た。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まんざらそうでもござんすまいと、そう云いたげに今度は梶子は、グラリと躰を右の方へ
蜒
(
うね
)
らせ、ムーッとするような濃厚な色気をまた腰のつがいに見せた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その桜並木の遙か
彼方
(
むこう
)
の、斜面をなしている丘の上の、諏訪神社の辺りでは、火祭りの
松明
(
たいまつ
)
の火が、数百も列をなし、
蜒
(
うね
)
り、渦巻き、揉みに揉んでいるのが
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
坐っている腰から股のあたりへかけて、ねばっこい
蜒
(
うね
)
りが蜒っていて、それだけでも男を
恍惚
(
うっとり
)
させた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここ奥まった部屋の中へ、見事な
蜒
(
うね
)
りを見せながら、さも
緩
(
ゆるや
)
かに紫煙が立ち、末拡がりにひろがった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もし空想を許されるなら、何者か紙帳の中で
屠腹
(
とふく
)
し、
腸
(
はらわた
)
を掴み出し、投げ付けたのが紙帳へ
中
(
あた
)
り、それが
蜒
(
うね
)
り、それが飛び、瞬時にして描出したような模様であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
膝
(
ひざ
)
のある所と思われる辺へ、
蜒
(
うね
)
りをつくり
襞
(
ひだ
)
をつくり、しずしずと先へ
辷
(
すべ
)
って行く様子は、白衣を頭からスッポリとかずいた、
上﨟
(
じょうろう
)
が歩いて行くのと変わりがなかった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
胴から腰への
蜒
(
うね
)
り具合と来ては、ねばっこくてなだらかでS字形をしていて、爬虫類などの蜒り具合を、ともすると想わせるものがあった、で、どのような真面目な男でも
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
野道はウネウネと
蜒
(
うね
)
っていた。飛び飛びに農家が立っていた。それを避けながら歩いて行く。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
櫓に連れて
蜒
(
うね
)
る波に揺れて、湖面の月は折り畳まれたり、延び縮みしたり砕けたりした。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
仏国船や
独逸
(
ドイツ
)
船が、国々の趣味を現わした、さまざまの船体に浮かんでい、それのマストや甲板から、河上へ投げている電燈の光が、波の
蜒
(
うね
)
りに従って、縄のようになわれるのも
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
腰のあたりの
蜒
(
うね
)
りに見せ、さてそれからヤンワリと、民弥に近々と寄って坐った。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時、山の
一所
(
ひとところ
)
から、一筋真っ直ぐに白い煙りが空に向かって立ち上った。煙りは忽ち火光を纏い、金竜雲に
蜒
(
うね
)
るがように次第次第に弧形を画き、どこまでもどこまでも上って行く。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
大岩を畳んで築かれた幅三間の階段が
無間
(
むげん
)
地獄の地の底眼掛け、
螺旋形
(
らせんけい
)
に
蜒
(
うね
)
っていたが、四人の者は一歩一歩それを下へ下へ下って行く。行くに従い様々の音が地の底から聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、ノロノロと身を
蜒
(
うね
)
らした。軈て幽に眼を開いた。一つ大きな欠伸をした。
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
土に喰い付き草を
挘
(
むし
)
りあたかも断末魔の蛇のように体を
蜒
(
うね
)
らせノタ打った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ドッと
颪
(
おろ
)
して来た
御岳嵐
(
おんたけあらし
)
、なびくは雑草、波を
蜒
(
うね
)
らし、次第に拡がり、まるで海だ! 泡となって漂うのは、咲き乱れている草の花! 掻き立てられた薬草の香が、プーッと野っ原を吹き迷う。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鈎
(
かぎ
)
のような鼻が盛り上っているし、牛のようにも太い頸筋には静脈が紐のように
蜒
(
うね
)
っている、半白ではあったがたっぷりとある髪を、太々しく髷に取り上げている、年の格好は六十前後であったが
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と帳が
蜒
(
うね
)
をつくり、
龕
(
がん
)
の灯がそこだけ暗くなった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は体を
蜒
(
うね
)
らせた。鎖が肉へ食い込んだ。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蜒
漢検1級
部首:⾍
13画
“蜒”を含む語句
蜿蜒
蚰蜒
蜒々
蝘蜒
蜻蜒
尻切蜻蜒
蚰蜒眉
蚰蜒魂
蜒女
蜒転
蜒轉𢌞
蜿蜒裊娜
蟠蜒