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苦界
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くがい
ふりがな文庫
“
苦界
(
くがい
)” の例文
「そう云わなくても四十九回、
始終
(
しじゅう
)
苦界
(
くがい
)
さ。そこでこの機会に於て、
遺言
(
ゆいごん
)
代りに、子沢山の子供の上を案じてやってるんだあナ」
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
畢竟するに婦人が婚姻の契約を
等閑
(
なおざり
)
に附し去り、却て自から其権利を棄てゝ自から鬱憂の淵に沈み、習慣の
苦界
(
くがい
)
に苦しむものと言う可し。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
苦界
(
くがい
)
十年親のために身を売りたる遊女が
絵姿
(
えすがた
)
はわれを泣かしむ。
竹格子
(
たけごうし
)
の窓によりて唯だ
茫然
(
ぼうぜん
)
と流るる水を眺むる芸者の姿はわれを喜ばしむ。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それに反して、「英雄主義」が、か弱い女性、しかも「
苦界
(
くがい
)
」に身を沈めている女性によってまでも呼吸されているところに「いき」の特彩がある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
ひそかに
心覺
(
こゝろおぼえ
)
に
因
(
よ
)
ると、
我朝
(
わがてう
)
にても
以前
(
いぜん
)
から、
孝行
(
かうかう
)
な
娘
(
むすめ
)
が
苦界
(
くがい
)
に
沈
(
しづ
)
んで、
浮川竹
(
うきかはたけ
)
の
流
(
ながれ
)
の
身
(
み
)
と
成
(
な
)
るのは、
大概
(
たいがい
)
人參
(
にんじん
)
。
人参
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
苦界
(
くがい
)
のうちの
楽
(
たのし
)
みにしているのざますから、年に一度でもようございますから、顔でも見せておくんなましな
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また、
行燈
(
あんどん
)
とさし向いで、
上方
(
かみがた
)
の空に残して来た
契
(
ちぎ
)
りある男へ、筆を走らせている
苦界
(
くがい
)
の後ろ姿もある。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
実在の
苦境
(
くぎょう
)
の外に文三が別に
妄念
(
もうねん
)
から一
苦界
(
くがい
)
を産み出して、求めてその
中
(
うち
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して、あせッて
踠
(
もが
)
いて
極大
(
ごくだい
)
苦悩を
甞
(
な
)
めている今日この頃、我慢
勝他
(
しょうた
)
が
性質
(
もちまえ
)
の叔母のお政が
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
果して
易々
(
やすやす
)
とその要求するだけの金が手に入ったならば、自分の今の苦痛はたちどころに解放される。解放されるのは自分だけではない、
苦界
(
くがい
)
に沈む女の身が一人救われる。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
營
(
いとな
)
み居たりしが
偖
(
さて
)
は貴樣が殺したるかと然も驚きたる樣子をなせば三次は最早やつきとなりとぼけなさんな長庵老屋敷へ出すとお安を
欺
(
あざ
)
むき妹娘を
苦界
(
くがい
)
に
沈
(
しづ
)
め
浮
(
うか
)
む
瀬
(
せ
)
も
無
(
なき
)
罪科
(
つみとが
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そんな不人情な男はわたしもすっぱりと思い切った。あきらめてしまった。さてそうなると、こうして廓にいてもなんの望みもない、楽しみもない、一日も早く
苦界
(
くがい
)
をぬけたい。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
なが年の
苦界
(
くがい
)
づとめを、はっきりとひとの眼に告げる
痩
(
や
)
せ細った身体を
斜
(
しゃ
)
にかまえて
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
こよひの
出物
(
でもの
)
なる樂劇の
本讀
(
ラ、プルオバ、ヅン、オペラ、セリア
)
といふ曲はかゝる作者の迷惑を書きたるものなるが、まことは猶一層の
苦界
(
くがい
)
なるべし。樂長の答へんとするに口を開かせず、姫は我前に立ちて語を繼ぎたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ここの世界は
苦界
(
くがい
)
といふ、又忍土とも名づけるぢゃ。みんなせつないことばかり、涙の乾くひまはないのぢゃ。たゞこの上は、われらと衆生と、早くこの苦を離れる道を知るのが肝要ぢゃ。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そうして心の中は
瞋恚
(
しんい
)
の
焔
(
ほのお
)
に燃えたり、また堪えがたい失望のどん底に沈んでしまったような心持になったりしながらもまたふと思い返してみると、女は長い間の
苦界
(
くがい
)
から今ようやく脱け
出
(
い
)
でて
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ことに歎くな、
現世
(
うつしよ
)
を
涯
(
かぎり
)
も知らぬ
苦界
(
くがい
)
よと。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
苦界
(
くがい
)
十年親のために身を売りたる遊女が
絵姿
(
えすがた
)
はわれを泣かしむ。
竹格子
(
たけごうし
)
の窓によりて唯だ
茫然
(
ぼうぜん
)
と流るる水を
眺
(
なが
)
むる芸者の姿はわれを喜ばしむ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
要するに、「いき」は「浮かみもやらぬ、流れのうき身」という「
苦界
(
くがい
)
」にその起原をもっている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
いわんや、かの戦争の如き、その最中には実に
修羅
(
しゅら
)
の
苦界
(
くがい
)
なれども、事、平和に帰すれば禍をまぬかるるのみならず、あるいは禍を転じて福となしたるの例も少なからず。
政事と教育と分離すべし
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
どうやらかのお方はお前様のために
廓
(
くるわ
)
へ身を沈めて、慣れぬ
苦界
(
くがい
)
の勤めからこの世を捨てる気になったのでございましょう、それが死んで行く時まで、あなた様のことを心配して
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なし
在所
(
ざいしよ
)
より
遙々
(
はる/″\
)
と
便
(
たよ
)
り來りし弟十兵衞を芝札の辻に於て殺害し
年貢
(
ねんぐ
)
の
未進
(
みしん
)
に血の
涙
(
なみだ
)
にて娘文を
苦界
(
くがい
)
へ沈めし身の代金を
奪
(
うば
)
ひ取て其罪を浪人藤崎道十郎に
巧言
(
かうげん
)
を以て
負
(
おは
)
せ又妹お富を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この小主水の部屋から妹分で此のごろ
突出
(
つきだ
)
された一人の
娼妓
(
こども
)
は、これも大阪もので
大家
(
たいけ
)
の娘でございましたが、
家
(
うち
)
の没落に身を
苦界
(
くがい
)
に沈め、
夜
(
よ
)
ごとに変る
仇枕
(
あだまくら
)
、
朝
(
あした
)
に
源兵衛
(
げんべえ
)
をおくり
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ここの世界は
苦界
(
くがい
)
という、
又
(
また
)
忍土
(
にんど
)
とも名づけるじゃ。みんなせつないことばかり、
涙
(
なみだ
)
の
乾
(
かわ
)
くひまはないのじゃ。ただこの上は、われらと
衆生
(
しゅじょう
)
と、早くこの苦を
離
(
はな
)
れる道を知るのが
肝要
(
かんよう
)
じゃ。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
こうなると、おつねの身売は無駄なことになったようなわけで、これから十年の長いあいだ
苦界
(
くがい
)
の勤めをしなければならないのですから、姉思いの久松は身を切られるように
情
(
なさけ
)
なく思いました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「どうぞ、
此金
(
これ
)
で、
苦界
(
くがい
)
が抜けられますように。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ことに歎くな、
現世
(
うつしよ
)
を
涯
(
かぎり
)
も知らぬ
苦界
(
くがい
)
よと。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
親の
家
(
うち
)
が
潰
(
つぶ
)
れてしまえば頼みに思う番頭から
詫
(
わ
)
びを入れて
身受
(
みうけ
)
の金を才覚してもらおうという
望
(
のぞみ
)
も今は絶えた
訳
(
わけ
)
。さらばといってどうして今更お園をば二度と憂き
川竹
(
かわたけ
)
の
苦界
(
くがい
)
へ
沈
(
しずめ
)
られよう。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あれさ、小増さんに
此方
(
こっち
)
で三十両出そうと云うと、
彼方
(
あっち
)
で五十両出そうと云って張合ってするのだから、まことに仕様がございませんよ、流行妓てえなア辛いものでそれだから
苦界
(
くがい
)
と云うので、察して気を
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
送りたり
誠
(
まこと
)
に
孝心
(
かうしん
)
の
餘慶
(
よけい
)
報
(
むく
)
い來て
苦界
(
くがい
)
を
遁
(
のが
)
れ
駕籠舁
(
かごかき
)
の實意を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
“苦界”の意味
《名詞》
(仏教)苦しみが絶えない人間の世界。
遊女の身の上。
(出典:Wiktionary)
苦
常用漢字
小3
部首:⾋
8画
界
常用漢字
小3
部首:⽥
9画
“苦”で始まる語句
苦
苦悶
苦笑
苦々
苦痛
苦患
苦力
苦労
苦手
苦衷