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緋鯉
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ひごい
ふりがな文庫
“
緋鯉
(
ひごい
)” の例文
豊
(
ゆたか
)
にまろらかな
立唄
(
たてうた
)
の声と、両花道からしずしずと
鰭
(
ひれ
)
をふりながらあらわれる踊り子の
緋鯉
(
ひごい
)
の列と……とりわけ
鮮
(
あざやか
)
に幻に残ってるのは
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
松と
薄
(
すすき
)
で取廻し、大根畠を小高く見せた周囲五町ばかりの大池の
汀
(
みぎわ
)
になっていて、
緋鯉
(
ひごい
)
の影、真鯉の姿も
小波
(
さざなみ
)
の立つ中に美しく
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
主人は或百姓家の庭の、
藤棚
(
ふじだな
)
の蔭にある
溝池
(
どぶいけ
)
の
縁
(
ふち
)
にしゃがんで、子供に
緋鯉
(
ひごい
)
を見せているお島の姿を見つけると、傍へ寄って来て
私語
(
ささや
)
いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから、わたしが廊下を渡ってお池の傍を通りますと、お池の中の金魚が三つばかり死んでいて、
緋鯉
(
ひごい
)
が一つ死にかけて腹を上にしておりました
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
爾来人々弥左衛門を、釣鐘弥左衛門と称したが、それ程の釣鐘弥左衛門も、兄分と立てなければならなかったのは、
緋鯉
(
ひごい
)
の藤兵衛という町奴であった。
二人町奴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
真鯉
(
まごい
)
と
緋鯉
(
ひごい
)
とがありまして、あるいは布であるいは紙で作り、大きいのになりますと長さが五、六間にも及びます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
中には
緋鯉
(
ひごい
)
の影があちこちと動いた。濁った水の底を
幻影
(
まぼろし
)
のように赤くするその
魚
(
うお
)
を健三は是非捕りたいと思った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大きな鯉、
緋鯉
(
ひごい
)
がたくさん飼ってあって、このごろの
五月雨
(
さみだれ
)
に増した濁り水に、おとなしく泳いでいると思うとおりおりすさまじい音を立ててはね上がる。
竜舌蘭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
池の水面近く、所どころに
緋鯉
(
ひごい
)
の群があつまっているのが、遠くから、うす桃いろにぼやけて眺められるのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかし、お杉の来ているのを知らない二人も、お杉につれて、
章魚
(
たこ
)
や、
緋鯉
(
ひごい
)
や、
鮟鱇
(
あんこう
)
や、
鰡
(
ぼら
)
の満ちている槽を覗き覗き、だんだん花屋の方へ廻っていった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
上の方の一番大きな
緋鯉
(
ひごい
)
も、その次の青も、その下の小さな黒鯉も、雨や夜露に打たれて色が
剥
(
は
)
げ落ちたまま、互いにピシャンコになってヘバリ附き合っている。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まるで一つの
麩
(
ふ
)
を目懸けて、沢山の
緋鯉
(
ひごい
)
真鯉
(
まごい
)
がお互に押しのけながら飛びついてくるかのように。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
道楽隠居が
緋鯉
(
ひごい
)
にも飽きた、ドイツ鯉もつまらぬ、山椒魚はどうだろう、朝夕相親しみたい、まあ一つ飲め、そんなふざけたお話に、まともにつき合っておられますか。
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
たとえば栖鳳池の東の茶屋で茶を飲んだり、楼閣の橋の欄干から
緋鯉
(
ひごい
)
に
麩
(
ふ
)
を投げてやったりなど。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
池
(
いけ
)
と
名付
(
なづ
)
ける
程
(
ほど
)
ではないが、一
坪余
(
つぼあま
)
りの
自然
(
しぜん
)
の
水溜
(
みずたま
)
りに、十
匹
(
ぴき
)
ばかりの
緋鯉
(
ひごい
)
が
数
(
かぞ
)
えられるその
鯉
(
こい
)
の
背
(
せ
)
を
覆
(
おお
)
って、なかば
花
(
はな
)
の
散
(
ち
)
りかけた
萩
(
はぎ
)
のうねりが、
一叢
(
ひとむら
)
ぐっと
大手
(
おおて
)
を
広
(
ひろ
)
げた
枝
(
えだ
)
の
先
(
さき
)
から
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
幾つもの桶をならべて、
緋鯉
(
ひごい
)
、金魚、目高のたぐいがそれぞれの桶のなかに群がり遊んでいるのを、夜の灯にみると一層涼しく美しい。一緒に大きい亀の子などを売っていれば、更におもしろい。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だが考え及ばないものか、そのまま藤棚の下へ這入って、そこにある
陶器床几
(
すえものしょうぎ
)
に腰を下ろし、亀の
日向
(
ひなた
)
へ上がったように、ぽつねんとして、池の
緋鯉
(
ひごい
)
の
游弋
(
ゆうよく
)
に、無為徒然な春の日を過ごしています。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五「大きな
緋鯉
(
ひごい
)
が居ります、
更紗
(
さらさ
)
や何か亀井戸もよろしく申すので」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これらの
草木
(
そうもく
)
とこの風景とを眼前に置きながら、
殊更
(
ことさら
)
に西洋風の建築または橋梁を作って、その上から蓮の花や
緋鯉
(
ひごい
)
や亀の子などを平気で見ている現代人の心理は到底私には解釈し得られぬ処である。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鼻の上に落葉をのせて
緋鯉
(
ひごい
)
浮く
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
取巻いた
小児
(
こども
)
の上を、
鮒
(
ふな
)
、
鯰
(
なまず
)
、黒い頭、
緋鯉
(
ひごい
)
と見たのは赤い
切
(
きれ
)
の
結綿仮髪
(
ゆいわたかつら
)
で、幕の藤の花の末を
煽
(
あお
)
って、泳ぐように
視
(
なが
)
められた。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廊下へ出て、
縁
(
へり
)
に
蘇鉄
(
そてつ
)
や
芭蕉
(
ばしょう
)
の植わった泉水の
緋鯉
(
ひごい
)
などを眺めていると、
褞袍姿
(
どてらすがた
)
のその男が、莨をふかしながら、側へ寄って来て話しかけた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「池の
緋鯉
(
ひごい
)
が
跳
(
は
)
ねますよ」と我は飽くまでも主張する。なるほど濁った水のなかで、ぽちゃりと云う音がした。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは、むかし、さるお大名のお庭であった。池には鯉と
緋鯉
(
ひごい
)
とすっぽんがいる。五六年まえまでには、ひとつがいの鶴が遊んでいた。いまでも、この草むらには蛇がいる。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ぼちゃりと池に水音がはねると、
緋鯉
(
ひごい
)
の尾が躍って見えた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
緋鯉
(
ひごい
)
であったそうな……ごあんじなさるまい」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
住居
(
すまい
)
は狭かりけれど、奥と店との間に
一
(
ひとつ
)
の池ありて、金魚、
緋鯉
(
ひごい
)
など
夥多
(
あまた
)
養いぬ。
誰
(
た
)
が飼いはじめしともなく古くより持ち伝えたるなり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無数の
真鯉
(
まごい
)
緋鯉
(
ひごい
)
が、ひたひた水の浸して来る
手摺
(
てすり
)
の下を苦もなげに
游泳
(
ゆうえい
)
していた。桜豆腐、
鳥山葵
(
とりわさ
)
、それに
茶碗
(
ちゃわん
)
のようなものが、食卓のうえに並べられた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「それにね。近頃は陽気のせいか池の
緋鯉
(
ひごい
)
が、まことによく
跳
(
はね
)
るんで……ここから聞えますかい」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二尺ちかい
緋鯉
(
ひごい
)
がゆらゆら私たちの床几の下に泳ぎ寄って来た。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
肝魂
(
きもだま
)
も
泥亀
(
すっぽん
)
が、
真鯉
(
まごい
)
緋鯉
(
ひごい
)
と雑魚寝とを知って、京女の肌を
視
(
み
)
て帰って、ぼんやりとして、まだその夢の覚めない折から。……
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廊下の
手欄
(
てすり
)
に垂れた
簾
(
すだれ
)
の外には、綺麗に造られた庭の泉水に、涼しげな水が噴き出していたり、大きな
緋鯉
(
ひごい
)
が泳いでいたりした。
碧
(
あお
)
い水の
面
(
おもて
)
には、もう日影が薄らいでいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
下女の遅いのを一層
苦
(
く
)
にしなければならなかった彼は、ふかしかけた
煙草
(
たばこ
)
を捨てて、縁側へ出たり、何のためとも知れず、黙って池の中を動いている
緋鯉
(
ひごい
)
を眺めたり、そこへしゃがんで
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「先生、見事な
緋鯉
(
ひごい
)
でしょう?」
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
湯殿から蒸しかかる暖い霧も、そこで、さっと肩に消えて、池の欄干を伝う、
緋鯉
(
ひごい
)
の
鰭
(
ひれ
)
のこぼれかかる
真白
(
まっしろ
)
な足袋はだしは、素足よりなお冷い。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白雪の飛ぶ中に、
緋鯉
(
ひごい
)
の背、真鯉の
鰭
(
ひれ
)
の紫は美しい。梅も松もあしらったが、大方は
樫槻
(
かしけやき
)
の大木である。
朴
(
ほお
)
の
樹
(
き
)
の二
抱
(
かか
)
えばかりなのさえすっくと立つ。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
石段の下あたりで、緑に包まれた夫人の姿は、色も一際
鮮麗
(
あざやか
)
で、青葉越に
緋鯉
(
ひごい
)
の躍る池の水に、影も映りそうに
彳
(
たたず
)
んだが、
手巾
(
ハンケチ
)
を振って、促がして、茶店から引張り寄せた早瀬に
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鯉七 いや、お腰元衆、いろいろ知ったは結構だが、近ごろはやる==池の鯉よ、
緋鯉
(
ひごい
)
よ、早く出て
麩
(
ふ
)
を食え==なぞと、馬鹿にしたようなのはお唄いなさるな、失礼千万、御機嫌を損じよう。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
緋鯉
(
ひごい
)
が躍ったようである。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
緋
漢検準1級
部首:⽷
14画
鯉
漢検準1級
部首:⿂
18画
“緋”で始まる語句
緋
緋縮緬
緋色
緋縅
緋鹿子
緋毛氈
緋桃
緋葉
緋羅紗
緋鹿