紀念きねん)” の例文
で、勝敗しようはい紀念きねんとして、一先ひとまづ、今度こんど蜜月みつゞきたび切上きりあげやう。けれども双六盤すごろくばんは、たゞ土地とち伝説でんせつであらうもれぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴君きくん! この新造巡洋艦しんざうじゆんやうかんに「」と命名めいめいされたのはまつたきみ想像さうざうごと日出雄少年ひでをせうねん紀念きねんためつてもよいのです。
並びそびゆる櫓には丸きもの角張かくばりたるものいろいろの形状はあるが、いずれも陰気な灰色をして前世紀の紀念きねん永劫えいごうに伝えんと誓えるごとく見える。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは由緒ゆいしょある御方おかたからはは拝領はいりょう懐剣かいけんであるが、そなたの一しょう慶事よろこび紀念きねんに、守刀まもりがたなとしておゆずりします。肌身はだみはなさず大切たいせつ所持しょじしてもらいます……。
のくらゐ苟且かりそめならぬこひ紀念きねんが、其後そのゝちたゞわすられて此背負揚このしよいあげなかのこつてゐるものとは。如何どうしても受取うけとれぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あなた方の幸福の紀念きねんを奪うほど私は冷酷な男ではありませんからな。しかし指環は一つありゃ沢山だ。第一、二つも三つも指輪をはめているのは見っともない。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
大島小學校おほしませうがくかう命名めい/\して老先生らうせんせい紀念きねんとなし一切いつさいのことを若先生わかせんせい伸一しんいちまかしてしまつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
中に雪つもる夜の明星かとばかり紫匂ふダイヤモンド、此指輪ゆびわは彼人の手に日頃光しそれよ白ばらは二人が紀念きねんの、さゝやきし其時の息やこもるなつかしやとばかりつく息も苦氣くるしげなり。
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ゆきけて水となり此の乳頭にうとうより滴下せるをたるをふなるべし、され共水源を以て此処に在りとなすは非なり、水上村長木村政治郎大によろこんで曰く、以後年々此日を以て発見はつけん紀念きねんとなし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
自宅うちにて教授をする時にわたしわずかなるたくわえにてあがないしもので、二面共にわたしにとっては忘るべからざる紀念きねんの品である、のみならず、この苦しく悲しきながの月日のこの中外うちそとを慰めたのもこの品
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
かか怪異あやしみを見てただ怖い怖いとふるえているばかりが能でもあるまい、の怪しい形のありのままを筆にのぼせて、いかにれが恐しくあったかと云う事を他人ひとにも示し、また自分の紀念きねんにも存して置こうと
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十四世紀の後半にエドワード三世の建立こんりゅうにかかるこの三層塔の一階室にるものはその入るの瞬間において、百代の遺恨いこんを結晶したる無数の紀念きねんを周囲の壁上に認むるであろう。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ本國ほんごく大祭日たいさいじつばかりではない、吾等われらためには、終世しうせい紀念きねんともなるき、海底戰鬪艇かいていせんとうてい首尾しゆびよく竣成しゆんせいして、はじめてうみうか當日たうじつであれば、その目出度めでたさも格別かくべつである。
わたくしはこちらの世界せかいりながら、ただの一もまだ竜神りゅうじんさんの御本体ごほんたいおがましていただいたことがない。今日きょうはあなたをおとずれた紀念きねんに、是非ぜひこちらの竜神りゅうじんさまにお目通めどおりをしたい。
両眼りょうがんなみだを一ぱいめて、赤心まごころこめてわたされた紀念きねん懐剣かいけん——それは刀身なかみといい、また装具つくりといい、まことに申分もうしぶんのない、立派りっぱなものでございましたが、しかしわたくしりましては、懐剣かいけんそのものよりも