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稀
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ま
ふりがな文庫
“
稀
(
ま
)” の例文
文化賞か何んかで別口の利用法が工夫される位のものだ。
尤
(
もつと
)
も極く
稀
(
ま
)
れには、棚上げした純小説の作家を取り下して来ることはある。
百万人のそして唯一人の文学
(新字旧仮名)
/
青野季吉
(著)
次第に日はかたむいて、寺院のあたりを
徘徊
(
はいかい
)
する人の遠い足音はいよいよ
稀
(
ま
)
れになってきた。美しい音色の鐘が夕べの
祈祷
(
きとう
)
を告げた。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
最近に生み落とした
犢
(
こうし
)
のことをぼんやり思い出して、わが子恋しさに
啼
(
な
)
くようなことも
稀
(
ま
)
れである。ただ、彼女は人の訪問を悦ぶ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
川上を世に
稀
(
ま
)
れな男らしい男、真に快男子であると、全盛がもたらす彼女の誇りを捨て、わが
生命
(
いのち
)
として尽していたのである。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
むしろ吾人の困難は、彼等の中から「詩的のもの」を発見することでなくして、
稀
(
ま
)
れに「詩的でないもの」を発見することにかかっている。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
▼ もっと見る
自分は無論先生の比類
稀
(
ま
)
れな長寿を祝する事には異存は無いが、しかし一面早くも研鑽心を忘れた先生を弔する事にも敢て臆病では無いのだ。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
臨湍寺
(
りんたんじ
)
の僧
智通
(
ちつう
)
は常に
法華経
(
ほけきょう
)
をたずさえていた。彼は
人跡
(
じんせき
)
稀
(
ま
)
れなる寒林に小院をかまえて、一心に経文
読誦
(
どくじゅ
)
を怠らなかった。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
どういうお気もちで御見物になったろうか。帝系のお人には
稀
(
ま
)
れに見る心臓のお強い法皇であらせられたというほかはない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「訴えて参った女というのを、わしが一つ当てて見せようか。まず年若、
稀
(
ま
)
れなる美女、世に申す羽織、深川の芸妓ふうのつくりであろうがな?」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
寝ぼけ眼をこすりこすり戸を開けて見ると驚いた、近所に
稀
(
ま
)
れな、盛装した、十八九の娘が立っていて、方丈の私に
是非
(
ぜひ
)
会いたいというのであった。
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
が、それすら世間は春廼舎の別号あるいは
傀儡
(
かいらい
)
である如く信じて二葉亭の存在を認めるものは殆んど
稀
(
ま
)
れであった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
斉彬公は、非常に高い科学精神と、恐るべき直観力とを兼ね備えた
稀
(
ま
)
れな
天賦
(
てんぷ
)
の人であったことを初めて知った。
島津斉彬公
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ミチは彼女の肉体が素晴らしく均整のとれた美しさと、
類
(
たぐ
)
い
稀
(
ま
)
れな色白であることを充分に承知して居るのだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
女は
稀
(
ま
)
れに窓から顔を出して夕空を覗うことがあるけれど、それがために何物をか恋い、憧がれてほっと顔を赤くするようなことがない。ただ
冷
(
ひやや
)
かに笑った。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
日本の切支丹史では特に切支丹信徒の殉教を日本人にも
稀
(
ま
)
れな特例と見ているようだが、それは切支丹学者が己れの宗門に偏しての見方で、公平な見解ではない。
安吾史譚:01 天草四郎
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
穿
(
うが
)
ち作れる妙案にて喜怒哀楽の其の内に自ずと含む勧懲の深き趣向を
寄席
(
よせせき
)
へ通いつゞけて始めから終りを全く聞きはつることのいと/\
稀
(
ま
)
れなるべければ其の
顛末
(
もとすえ
)
を
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして近頃は、荷の動く日は
稀
(
ま
)
れであった。それに、農家からの出具合は、
一寸
(
ちょっと
)
も変っていなかった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「人生五十、七十古来
稀
(
ま
)
れなり」と申していますが、かりに人生を六十年とし、一年を一間として計算するならば、人間の一生は、つまり「六十間の橋渡り」です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
同じ石狩川でも余程上流になっていたが、雑穀や米を運ぶために、
稀
(
ま
)
れに発動機船がポンポンと音をさせて上ってきた。その音は日によっては、ずウと遠く迄聞えた。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
軈
(
やが
)
て、ウラスマルはその短く太い首をめぐらして、私の方を見ながら、最も
稀
(
ま
)
れな微笑を見せた。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
私の
実見
(
じっけん
)
は、
唯
(
ただ
)
のこれが一度だが、実際にいやだった、それは
曾
(
かつ
)
て、
麹町三番町
(
こうじまちさんばんちょう
)
に住んでいた時なので、
其家
(
そこ
)
の
間取
(
まどり
)
というのは、
頗
(
すこぶ
)
る
稀
(
ま
)
れな、
一寸
(
ちょいと
)
字に書いてみようなら
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
例の雨や神鳴りは
稀
(
ま
)
れになつて、この二三日來、田を渡つて來る風が急にひイやりして來た。
泡鳴五部作:01 発展
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
粗末な学校の廊下も窓もびっしりと湿り、
稀
(
ま
)
れにしかやって来ない電車は、これも雨に痛めつけられていたし、電車の窓の外に見える野づらや海も
茫
(
ぼう
)
として色彩を失っていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
それに
稀
(
ま
)
れではありましたけれど、確にあなたの仰有ったように、チリチリチリという鈴の音が一緒に聞えて参りました。人間が咳をするような山羊の鳴声も聞えて来ました。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お絹は人出入
稀
(
ま
)
れな家庭に入って来た青年の鼈四郎を珍しがりもせず、ときどきは傍にいても、忘れたかのように、うち捨てて置いたまま、ひとりで夢見たり、遊んだりした。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
途上
人影
(
ひとけ
)
の
稀
(
ま
)
れに成った頃、同じ見附の内より
両人
(
ふたり
)
の
少年
(
わかもの
)
が話しながら出て参った。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
自分も死んでしまえばいいと思いながら、人間はこうした
稀
(
ま
)
れな心理のなかには仲々飛び込めないものだと思う。穏かに暮してゆくには、日々の最少の糧がなくては生きてゆけない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そういえば、彼は、出征以来、実に
稀
(
ま
)
れにしか家へ手紙を出していない。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
終
(
つひ
)
には労働者の数を増加し労働供給の過剰を招き、久しからずして賃銀の市場価格は下落し、結局自然価格はおろか、時には反動的現象としてそれ以下に下落すること
稀
(
ま
)
れにあらざるなり——。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
母はニツコリ笑つて、それは西洋風の
譬
(
たとへ
)
の言葉で、金といふものは大層貴い、
稀
(
ま
)
れなものだから、其場合が貴くつて
稀
(
まれ
)
な機会だといふ代りに黄金といふ重宝な一字で間に合せるのだとおいひでした。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
その人達の仕事の全量がある。その人々や仕事を取り囲んでいた大きな世界もある。或る時にはその上を日も照し雨も潤した。或る時は天界を
果
(
はて
)
から果まで遊行する
彗星
(
すいせい
)
が、その
稀
(
ま
)
れなる光を投げた。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
などいう歌が所々にごく
稀
(
ま
)
れに見えるだけである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
(こんなことは実に
稀
(
ま
)
れです。)
革トランク
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「ほう。……またいつもの部屋掃除でもしてくれるのかな。昼は蚊、夜は蚤。
稀
(
ま
)
れには、外の風も欲しいところだ。では、風入れを待つとするか」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「人間」という言葉によって、それが
如何
(
いか
)
にも物珍しく、人跡全く絶えた山中であり、
稀
(
ま
)
れに鳴く鶯のみが、四辺の静寂を破っていることを表象している。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
恐らく全国の大学で、一年間に正味四時間の指示実験をして見せるところは、非常に
稀
(
ま
)
れであろう。
テレビの科学番組
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しかし、わたしはそのような恋わずらいが男性にとっては致命的になることが
稀
(
ま
)
れだと思う。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
稀
(
ま
)
れに餓死から逃れ得ても、その荒ブ地を十年もかかって耕やし、ようやくこれで普通の畑になったと思える頃、実はそれにちアんと、「外の人」のものになるようになっていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
まして世に
稀
(
ま
)
れなる才能と、
比
(
たぐ
)
いなき
麗貌
(
れいぼう
)
の武子姫が、世間的に地位なく才腕なき普通の連枝へ、御縁づきになる事は、法主鏡如様の権威に
関
(
かか
)
わり、なお自分たち一同の私情よりしても
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
梢
(
こずえ
)
をふり仰ぐと、
嫩葉
(
わかば
)
のふくらみに優しいものがチラつくようだった。樹木が、春さきの樹木の姿が、彼をかすかに慰めていた。
吉祥寺
(
きちじょうじ
)
の下宿へ移ってからは、人は
稀
(
ま
)
れにしか
訪
(
たず
)
ねて来なかった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
(こんなことはごく
稀
(
ま
)
れです。)
革トランク
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
いやいかに道義が
廃
(
すた
)
った今でも彼のごときは全く
稀
(
ま
)
れです。稀れな
鵺
(
ぬえ
)
です。箱根合戦の
後陣
(
ごじん
)
から裏切って、この義貞を死地におとしたのも彼の才覚。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしながら実際には、真に「観照のための観照」を考えている芸術は、
殆
(
ほとん
)
ど
稀
(
ま
)
れにしか無いであろう。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
一つの図形の大きさは、数フィートから、数十フィート、
稀
(
ま
)
れには百フィートくらいのものもある。
白い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
平家の
氏
(
うじ
)
ノ
社
(
やしろ
)
であり、海の神社として知られている厳島の神が、熊本県から宮崎県にわたる九州脊梁の人煙も
稀
(
ま
)
れな山間に村社としてあるというだけでも
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
普通は門下生が恩師の遺著について行うことが、
稀
(
ま
)
れにあるという程度の話である。
『日本石器時代提要』のこと
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
然るに、日本の小説家には、そうした
風貌
(
ふうぼう
)
を感じさせる作家が、殆ど
稀
(
ま
)
れにしかいないのである。日本のたいていの作家は、単に文士 Writer という
雑駁
(
ざっぱく
)
な感銘をあたえるのみである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
豪邁
(
ごうまい
)
、英気、また
稀
(
ま
)
れなほど御自尊のつよい天皇ではあらせられたが、ときにより御反省もなくはない——。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしたらその奥さんから「中谷さんの南画というのは、配置と文句で胡魔化しているのね」と言われた。しかしこういう
御難
(
ごなん
)
に
遭
(
あ
)
うことは
稀
(
ま
)
れで、一般には賛を入れておいた方が通りがよい。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その祭の様子は、彼ら以外の普通の人には全く見えない。
稀
(
ま
)
れに見て来た人があっても、なぜか口をつぐんで話をしない。彼らは特殊の魔力を有し、所因の解らぬ
莫大
(
ばくだい
)
の財産を隠している。等々。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
稀
漢検準1級
部首:⽲
12画
“稀”を含む語句
稀代
稀々
類稀
稀覯書
稀少
稀有
稀薄
稀人
稀塩散
稀物
稀世
古稀
稀〻
時稀
稀覯
稀品
稀覯本
稀塩酸
稀飯
古稀庵
...