白雪しらゆき)” の例文
奧山家おくやまが一軒家いつけんやに、たをやかなをんなて、白雪しらゆきいとたに絲車いとぐるまおとかとおもふ。……ゆかしく、なつかしく、うつくしく、心細こゝろぼそく、すごい。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時分じぶんは、あおかったうみいろが、いま銀色ぎんいろになっているのをても、また、からだりかかる白雪しらゆきても、かなしみがこころをそそったのであります。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
操縦士は、そのたびに、かじをひいて方向をかえ、白雪しらゆきをいただいた峰のまわりをぐるっとうかいしなければならなかった。
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
政宗の「さゝずとも誰かは越えん逢坂あふさかの関の戸うず夜半よは白雪しらゆき」などは関路雪という題詠の歌では有ろうか知らぬが、何様どうして中々素人では無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
東豊山新長谷寺しんちょうこくじ目白不動尊めじろふどうそんのたゝせ玉へる山は宝永の頃再昌院法印さいしょういんほういんのすめる関口せきぐち疏儀荘そぎしょうよりちかければ西南せいなんにかたぶく日影に杖をたてゝ時しらぬ富士の白雪しらゆき
白雪しらゆきの中から来た私たちの眼は、屋内のかすかな光になれるまで、何をも識別し得なかった。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
高山たかやまのいはほにおふるすがののねもころごろにふりおく白雪しらゆき
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
深潭しんたんにちららちららと白雪しらゆきのけはひつめたく沈む人かも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「——雪。……いちめんの白雪しらゆきとは読めましょう」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いたゞききんの照しと白雪しらゆきと蹈み轟かし
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あゝあゝ清き白雪しらゆき
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
屋根やねよりたか大行燈おほあんどうて、白雪しらゆきやまみ、だいうへつて、やあ、がばり/\がばり/\とわめく。行燈あんどうにも、白山氷はくさんこほりがばり/\とる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やみにしばらく———白雪しらゆき
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……ようけむりけなんだ、白雪しらゆきでてふつくりした、それは、それは、綺麗きれいはだめて、うす淺葱あさぎひもゆはへた、したする/\すべるやうな長襦袢ながじゆばん
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
富士ふじ白雪しらゆきかんむり
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はんかなあまい/\甘酒あまざけ赤行燈あかあんどうつじゆれば、そ、青簾あをすだれ氣勢けはひあり。ねや紅麻こうまえんにして、繪團扇ゑうちは仲立なかだちに、蚊帳かやいと黒髮くろかみと、峻嶺しゆんれい白雪しらゆきと、ひとおもひいづれぞや。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またで、硝子杯コツプ白雪しらゆきに、鷄卵たまご蛋黄きみかしたのを、甘露かんろそゝぐやうにまされました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この時ちらちらと降りかかり、冬牡丹ふゆぼたん寒菊かんぎく白玉しらたま乙女椿おとめつばき咲満さきみてる上に、白雪しらゆきの橋、奥殿にかかりて玉虹ぎょっこうの如きを、はらはらと渡りづる、気高けだかく、世にも美しき媛神ひめがみの姿見ゆ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みづへば、せい/″\こめ磨汁とぎしるでもくれさうなところを、白雪しらゆき蛋黄きみなさけ
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)