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痣
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あざ
ふりがな文庫
“
痣
(
あざ
)” の例文
痣
(
あざ
)
のようにあった、うすい
錆
(
さび
)
の
斑紋
(
はんもん
)
も消えているし、血あぶらにかくれていた
錵
(
にえ
)
も、
朧夜
(
おぼろよ
)
の空のように、ぼうっと美しく現れていた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
或る時の如きは、友田に夫の冷酷を訴え、自分の二の腕に生々しい
痣
(
あざ
)
が出来ているのを見せて、同情を求めた事などもあるそうです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
「おじさんの家の焼けた年、お産間近に、お
母
(
っか
)
さんが、あの、火事場へ飛出したもんですから、そのせいですって……私には
痣
(
あざ
)
が。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
右の二の腕に
痣
(
あざ
)
があり、それにべったり黒い毛が生えて居たるを問いし時、我は本郷菊坂へ捨児にされたものである、と私への話し
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もし誰かが編笠の中の、浪人の顔を覗いたなら、左半面に黒い
痣
(
あざ
)
が、ベッタリと出来ているのを見、おそらくゾッとしたことであろう。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
倒れた傷跡が大きな紫色の
痣
(
あざ
)
になってる
脹
(
は
)
れた顔を見た時、そこにいる人は死にかかってるのだとわかった時、彼はふるえだした。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この
痣
(
あざ
)
のような
癌
(
がん
)
に似た不死身の一処をさすりながら、彼は生き彼は書き、ありもしない才華へのあこがれに悶えている残酷さである。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
きみのは躯にいつも
痣
(
あざ
)
の絶えまがないため、銭湯にゆくことができず、冬でも狭い勝手で行水を使っていた、ということであった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女の顔からは血が流れた。何かの消えないしるしのように、小さな
痣
(
あざ
)
のような黒い
斑点
(
はんてん
)
が彼女の顔に残ったのも、またその際である。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『猿沢佐介の背中には、きっと一つの
痣
(
あざ
)
がある。しかもそいつのまんなかに、
縮
(
ちぢ
)
れて黒い毛が三つ、生えているのに相違ない』
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「ほんとに
嫌
(
いや
)
な人だっちゃない。あら、お前の
頸
(
くび
)
のところに細長い
痣
(
あざ
)
がついているよ。いつ
打
(
ぶ
)
たれたのだい、痛そうだねえ。」
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
もう
拭
(
ぬぐ
)
っても拭い切れない。あたしの肉体には、夫殺しの文字が大きな
痣
(
あざ
)
になっているのに違いない。誰がそれを見付けないでいるものか。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
カトリーヌはその人であることを、左の耳の上にある小さい
痣
(
あざ
)
と、長い
睫毛
(
まつげ
)
が両方の
頬
(
ほほ
)
にまで長い影をうつしているのとでたしかめたのです。
世界怪談名作集:11 聖餐祭
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
界隈
(
かいわい
)
でよく知られた、名人の髪結、額から右の眼へかけて赤い
痣
(
あざ
)
のあるお鶴が、その醜い顔を
歪
(
ゆが
)
めておろおろしております。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とき子の左眉から瞼にかけて薄すりある蒼い
痣
(
あざ
)
は、ふだんより目立って、そこにも何かの影が映っているかのようだった。
今朝の雪
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その女は顔に青い
痣
(
あざ
)
があるというじゃあねえか。それはもう病気の発しているのを何かの
絵具
(
えのぐ
)
で塗りかくして、痣のように誤魔化しているんだ。
半七捕物帳:43 柳原堤の女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
聴いて、私がなんでそのままに出来るでしょう。水棲人の胸にあった
拳形
(
こぶしがた
)
の
痣
(
あざ
)
と、ちょうど同じものが三上にもあるのです
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
目の下に黒い
痣
(
あざ
)
のごときものが現われ、一瞬間前までの闘志満々たる大統領は、たちまちにして
気息奄々
(
きそくえんえん
)
たる瀕死の
老翁
(
ろうおう
)
と化し去ったのである。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
再び
小刀
(
さすが
)
がきらりと光って、組みしかれた男の顔は、
痣
(
あざ
)
だけ元のように赤く残しながら、見ているうちに、色が変わった。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その時、彼女の鼻の横に大きい
痣
(
あざ
)
があるのに私は気付いた。少しつまった顔立ちにその痣が一種の親しみを添えていた。
微笑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
あなたの読者だからです。背中の
痣
(
あざ
)
の数まで知って居ります。春田など、太宰さんの小説ひとつ読んでいないのです。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どんな家の生れか知りませんが、年も若く、美しくて利発な人で、請宿では隠れた処にも
痣
(
あざ
)
や
黒子
(
ほくろ
)
のないように、裸体にして調べたとかいいました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
しかも見物人にちょうどその目標となるべき左の
顋
(
あご
)
下の大きな
痣
(
あざ
)
を向けるように坐らせておく必要があるのである。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
阿母
(
おふくろ
)
が仏壇を拝んでいて、お灯明を消そうとして手で煽いだ拍子に
火傷
(
やけど
)
をして、そこに
痣
(
あざ
)
ができましたがそのまた痣がいつまで経っても直りもせずに
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ヒルデプランチア属の数種は本邦諸方の磯に産し鹹水下の岩面に薄く堅い皮となって固著しまるで紅い
痣
(
あざ
)
のようだ
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
背中や腰に紫色の
痣
(
あざ
)
が大分出来てる、X線の結果、とにかく骨に傷は見えたが、別に折れてるのでは無いそうで、塗り薬でじっと経過を待つ外はない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
忘れもせぬ、自分の其学校に行つて、頬に
痣
(
あざ
)
のある数学の教師に代数の初歩を学び始めて、まだ
幾日
(
いくか
)
も
経
(
へ
)
ぬ頃に、新に入学して来た二人の学生があつた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
若者は二人とも不自然にてかてかと光る顔いろをし、首筋や
頬
(
ほお
)
のどちらかには赤い大きな
痣
(
あざ
)
のような型があった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
彼女の微笑、呼吸、かおり、青い
眸
(
ひとみ
)
の深い輝き、皮膚のやさしい感触、首にあるかわいい
痣
(
あざ
)
、あらゆる考え、それらをすべて彼は自分のものにしていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
痣
(
あざ
)
や火傷のひっつりは見事に修覆されるでしょうし、その他の顔に瘢痕のある人、ひどく顔色の悪い人なども、このラバー・スキンをつけることによって
脳波操縦士
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
四つか五つの時分に、
焼火箸
(
やけひばし
)
を
捺
(
おし
)
つけられた
痕
(
あと
)
は、今でも丸々した手の甲の肉のうえに
痣
(
あざ
)
のように残っている。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鶴見は今それを思い出して、こそばゆいような気持になる。どこかに暗愚の
痣
(
あざ
)
でもくっつけてはいなかったかと、無意識に、首筋のあたりを
撫
(
な
)
で
廻
(
まわ
)
している。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
左の肩の骨が少し
摧
(
くだ
)
けたとかで、手が
緩縦
(
ぶらぶら
)
になつて
了
(
しま
)
つたの、その外紫色の
痣
(
あざ
)
だの、
蚯蚓腫
(
めめずばれ
)
だの、
打切
(
ぶつき
)
れたり、
擦毀
(
すりこは
)
したやうな
負傷
(
きず
)
は、お前、体一面なのさ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そこで顔の恰好や
痣
(
あざ
)
や
贅
(
いぼ
)
のあるなしを訊いてみると一いち合っている。しかし母親の疑いは晴れなかった。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
雲が天上を縦横に入り乱れて、その影が山に落ちて、
痣
(
あざ
)
が方々に出来る、常念岳の禿げ頭が光って見える。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
着
(
つ
)
け
髭
(
ひげ
)
、ほくろ、
痣
(
あざ
)
と、いろいろに
面体
(
めんてい
)
を換えるのを面白がったが、或る晩、三味線堀の古着屋で、
藍地
(
あいじ
)
に大小あられの小紋を散らした女物の
袷
(
あわせ
)
が眼に附いてから
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と止せばいいのに
痣
(
あざ
)
旦那は
頻
(
しき
)
りに見たがるから、余り
焦
(
じ
)
らして虫でも出ると悪いと思って、乃公は写真を渡してやった。是も姉さん達の悪戯で、痣が沢山拵えてある。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
身體
(
からだ
)
の何處に
黒子
(
ほくろ
)
があるか
痣
(
あざ
)
があるかといふことまで知り合つてゐたのだが、
此方
(
こちら
)
では父兄の保護で微弱な生涯を續けてゐた間に、先方では學資の不足に惱みながらも
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
しかし人形を裸にしたときに区別がつかないので、一つの人形の左の乳の上に梅の模様をかきいれました。それは姉妹のそこに梅の花のような形をした
痣
(
あざ
)
があったからです。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
絶えず酔っぱらって居たが誰も為朝が飯を食うのを見たというものがない、額に大きな「
痣
(
あざ
)
」があった処から為朝一名を「あざ為」と云ったが、誰も本名を知った者がない。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「御出発前の杉山さんには、毎日色々の贈物が届けられますんで、別に気にも留めず、ボーイが受取ったそうですが、眼の下に青い
痣
(
あざ
)
のある大きな顔の男だと申して居ります」
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
その先生のたしか左の上顎の辺に、小さな
膏薬
(
こうやく
)
を貼ったほどの
痣
(
あざ
)
があった。私は痣というものを知らず、先生が膏薬を貼っているのだとばかり思い、「おこうや」の先生と呼んだ。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
その
中
(
うち
)
にどこからかヒョックリ出て来た貴美子さんが、妾をモウ一度お湯に入れて、身じまいを直させている
中
(
うち
)
に、頬ペタに赤
痣
(
あざ
)
のある五十位の立派な紳士の人が、セットの中で
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
茶色がかつた紫色の
痣
(
あざ
)
のやうにぽつりとひろがつてゐる乳部の斑点だの、——さういふものは、房一の扱ひ慣れてゐる「患者の肉体」ではなく、一つ一つが見覚えのある特長を帯び
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
此処に
小
(
ちさ
)
い
痣
(
あざ
)
が出来ているでしょう。痣なんか、私にゃありゃしなかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
というのは、子供の頬っぺたの、恰度
唇
(
くち
)
の切れ目のところに、鳶色の
痣
(
あざ
)
が一つあるのが目に止まった。それはごく小さいけれど、
背高
(
のっぽう
)
のジャッケの頬っぺたにある痣とそっくりそのままだった。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
私のこの左の頬にある
痣
(
あざ
)
の由来を話せというのですか。御話し致しましょう。いかにもあなたの推定されたとおり、生れつきに出来た痣ではなくて、後天的に、いわば人工的に作られたものです。
三つの痣
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
何から何まで皆手掛りでは無いか第一顔の面長いのも一ツの手掛り左の頬に
痣
(
あざ
)
の有るのも
亦
(
また
)
手掛り
背中
(
せなか
)
の傷も矢張り手掛り先ず傷が有るからには鋭い
刃物
(
はもの
)
で
切
(
きっ
)
たには違い無い
左
(
さ
)
すれば差当り刃物を
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
工部局の機関銃隊が工場の門前に到着した時は、
早
(
は
)
や彼らの姿は一人として見えなかった。ただ探海燈の
光鋩
(
こうぼう
)
が空で廻るたびごとに、血潮が土の上から、薄黒く
痣
(
あざ
)
のように浮き上って来るだけだった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
きっとよく見たら、お玉の
頬
(
ほお
)
に
痣
(
あざ
)
でもありはしないかと思った。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
“痣”の解説
痣(あざ、en: bruise)は、皮膚に現れる赤や青などの変色のこと。
皮膚の色素細胞の異常増殖や、皮膚の内出血によって、皮膚が赤紫色などに変色する。
外傷によりできた後天性(紫斑)の痣の場合は放置していけば自然と元の色に戻っていくが、先天性(母斑)の場合は元々の色素異常が原因であるのでずっとそのままである。
(出典:Wikipedia)
痣
漢検1級
部首:⽧
12画
“痣”を含む語句
黒痣
青痣
痣蟹仙斎
赤痣
大痣
底痣
痣丸
痣胡瓜
痣虎
痣蟹
蒼痣
薄痣
黯痣