“疼:うず” の例文
“疼:うず”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治25
原民喜9
小栗虫太郎6
夢野久作6
中島敦3
“疼:うず”を含む作品のジャンル比率
文学 > ロシア・ソヴィエト文学 > 小説 物語4.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語2.5%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
間もなくその身体が、平行から直立の方に移って行くので、従って、そのうずきと共に、血がきもちよく足の方に下って行って
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
頭が重く、顳顬こめかみの辺がけるようにうずいて、左枝には、花瓶の柔皮花の匂いもいっこうに感ぜられなかった。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
根太がうずいたり、匂いは花になくて鼻にあったりするのにくらべたら、いささか感情の上に一進歩を認めるべきであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
でもこの前の時と違うのは、おりおり胸が気味悪くうずくことと、午後になると毎日のように疲労感が襲って来ることである。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「それがなあ」と、金五郎の声がおどけ笑いを含んで、「こないだ、お前からたれた頬べんたがうずいて、寝られん」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
もはや何の心労もなく、望みもなくうずきもしない彼女には、額に触っている、冷たい手一つだけを覚えるのみであった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
紀久子はそう心の中に呟いた。そして、彼女の胸はしだいに激しくうずいてきた。彼女の両の目は、いつの間にか熱く潤んできていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
赤い電球が電柱の蔭に見え隠れして、ゆがんだ十字架のような岐路の一方に、ひとり夜の心臓のようにうずいている。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
一ばん恐ろしいのは、この私の弛緩しかんにつけ込んで、私に私の中に秘んでいた骨身の女がうずき出したことでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
田川は唸く声の間から、とぎれとぎれに繰りかえした。弾丸のあたった腰は、火がついたようにうずきほてついていた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
武蔵の頭脳あたまにはまだ今の鉈の音が消えさらないで、どこかが痛いようにうずいているのに、吉野の頬は紅くもなっていなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、しきりにうずく弱気があった。妻の白い顔や、乳のみ子が、眼にあって、いつになく、鎧の重さが、身にこたえた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金五郎は、腕組みして、絶望的な表情を浮かべた。大抵のことにはへこたれぬのであるが、この問題には、頭がうずく。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
嫌々ながら、信長もついに、敵の強さを認めたかたちである。——が、なおどこかにうずく彼の勝気を、やがてこんな言葉で吐き出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、その時、カサリという音が、十四郎の寝間の方角でしたかと思うと、滝人の心臓の中で、ドキリとうずき上げたような脈が一つ打った。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
精神を低く屈しさせられれば屈しるほど、その息づきのせわしさが自覚される三分の魂をもって、自身のうちにうずく内部反抗を自覚した。
現代の主題 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いくらよごれていても緊密に結ばれた男女の形には、若い身空の肉情にうずき入る何物かゞあるのでございましょう。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
若い肉塊は、なにか、うずきにたまらなくなるらしい。思うざまな大欠伸おおあくびを一つして、大の字なりッくり返ると、
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうだ、きっと英官辺からの圧迫があったのだろう——と、折竹翻意の理由をこう睨みたい気持が、誰の胸にもうずいていたのであるが……。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
お互いにあまり強く接吻し合ったものだから、二人ともその日一日じゅう前歯がズキズキうずいたくらいであった。
軽いうずきを頭のしんに覚えて、いつか脳貧血セリブラル・アニーミアを起した時のように、てのひらがネットリと汗ばんでいる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
煙村の少女おとめ温泉いでゆ湯女ゆな、物売りの女など、かえって、都人みやこびとのすきごころをうずかせたことでもあろう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにつけても、のろわれた運命の子こそ哀れだ……悩ましさと自責の念から、忘れかけていた脊部肋間の神経痛が、またうずきだした。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
そして——見せてと甘えいるような千浪の力をうずくほど熱く感じながら、新九郎はこばむふりして痛いほどその手を握り返した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、白い壁や天井がかすかに眩暈げんうんを放ちだす、あの熱っぽいものが、彼のうちにもうずきだした。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「——感じます。それを感じると、脈々、自分の五体は、ものにうずいて、居ても立ってもいられなくなります」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とお延は新九郎の青額に、気も魂も吸い込まれて、ゾクゾクとうずくふるえを緋縮緬ひぢりめんにつつんでいつかぴったりと寄り添って来た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だめだのう、まだおれは。あれを思い、これを思い。……ちょうどそちがわずらっていた歯痛みとおなじようなうずきに終夜悩まされての」
(この心のうずき、この幻想のくるめき)僕は眼もくらむばかりの美しい世界に視入みいろうとした。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
順一の顔には時々、けわしい陰翳いんえいえぐられていたし、嫂の高子の顔は思いあまってぼううずくようなものが感じられた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
しかも、それと同時に私の頭の痛みが、何となく神秘的な脈動をこめて、あらたきとうずき出したように思えてならなかった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その涙のうずきが、唐突に、伊織の手や足を動かし始めた。伊織の耳には、ゆうべの岩戸神楽かぐらが、雲の彼方むこうで聞えているのである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(その時俺は高城を射つか黙って射たれるか、どちらを取るだろう?)彼はその事を考えたとき何故かうずくような快感を苦痛と一緒に感じていた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
それから、ある日、何故なぜか分らないが、女の顔がこの世のなかで苦しむものの最後のもののように、ひどくうずいているように彼にはおもえた。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
それから解放された旅空では、日ごろのかわきが、あさましくうずき出てくるのは、彼も同様だった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そこがあたいの腕のあるところなのよ、ちゃんと療治していただいて、うずきもとうに治っちゃった。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
姫は夜の闇にもほのかに映るおもかげをたどって、うずくような体をひたむきにす。
一足ごとにうずく痛さ、それは全く弾傷よりも切り傷よりも烈しくて、果ては眼さえくらみ出した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
眼と鼻のあいだの寸が少しつまっていることだけが難といえば難であるが、しかし、内にうずく肉体の若さは化粧をしていないだけにみずみずしかった。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
お縫のすがたを見ると、市十郎は、さすがに、慚愧ざんきと苦悶を、眉にみせた。同苦から幾たびもいわれた——死んだ自分を——またうずきかけた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちがう、僕らは恋人どうしじゃない」屈辱をこらえながら、信二は低くいった。ずきずきとうずきが頭にひびいていた。「そうじゃない、ただの……」
その一年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
「ふむ、お前さんは見掛けによらねえっ張者だ。———だが見なさい、今にそろ/\うずき出して、どうにもこうにもたまらないようになろうから」
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼は世間から拒絶されて心身の髄に重苦しくてしかも薄痒うすがゆうずきが残るだけの性抜きに草臥くたびれ果てたとき、彼は死を想い見るのだった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
体がうずくような感じで飲んで遊んだりすることが真実ほんとうは別に面白いわけではなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その後、妻が家に戻って来て、療養生活をつづけるようになってからも、烈しく突き離されたものと美しくきつけられたものが、いつもうずいていた。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
乏しい母乳ちちを無理に吸われるので、乳くびがうずき痛むたびに、牛若の顔をのぞいても、わが生命いのちを、わが生命とのみは、考えられなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は夫に弄ばれたことを、今になって考えると腹立たしくも恥かしく感じるけれども、その時はそんなことよりも頭がガンガンうずくのに堪えられなかった。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ヘロのきれたその肉体は、地獄よりもツラかった。監視巡査の恥じッかゝしと、軽蔑ばかりの中で、恥をかまっていられず、うずくような呻吟をつゞけていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
それから彼が、脚をがれた昆虫が草の中をまごまごするように、お手前同様下らん連中の中をうずくような悩みを背負って迷い歩くところを見てやろう。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
水へ入るのは、まだいくらか肌寒く、歩くには暑いさんさんたる太陽の直射を浴びながらただもう夢中で、私は肉のうずきだけをモテアマシ切っていたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
それを見ながら宇治は耳の底がうずき、そしてきそうな衝動が胸から咽喉のどを走った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
いや世間よりか、彼女自身のうちに、二十歳の折に、頭にふかくえぐりこまれた深刻な観念が、ともすれば、生々と、うずいてくる。ひがんで来るのである。
そいつを書いてみたいという思いが心のどこかの隅に、かすかにうずいていたようです。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
悟浄は、魂が甘くうずくような気持で茫然ぼうぜんと永い間そこにうずくまっていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
離してみると、紙ににじんだ桃色のつば——人にきらわれる癆咳病ろうがいやみの血——。だが、彼女の目には若い血のうずきがそこへ出たかと見える。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、シュンシュンとその水は、自分の身体中で冷たくさざなみ立ててうずくのだ。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
電灯の明りに照らされてその緑色の裾模様すそもようえてうずくようだった。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
この二三年の月日でようやくなおりかけた創口きずぐちが、急にうずき始めた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下着まで水に濡れた翌朝、彼が眼を覚ますと、鼻の奥や耳の底が不快にうずいていた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ふと僕は鏡の奥の奥のその奥にある空間に迷い込んでゆくようなうずきをおぼえた。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「ああ。また何かなければよいが」と、先頃の不愉快な思い出が胸にうずいてきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう思い付くと同時に、虎蔵の全血管の中に新しい勇気が蘇って来た。深刻な空腹と、極度に緊張した冷血さが、彼の全身数百の筋肉にうずきみちみちて来た。それにつれて、
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう言って泣く咲子の声が耳にみとおると、庸三の魂はひりひりうずいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は又も、肋骨あばらぼねうずき出す程の、烈しい動悸に囚われてしまった。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やがてまた音と、運動と、触覚——体じゅうにしみわたるぴりぴりうずく感覚。
落穴と振子 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
そのあじわひは塩辛く彼の胸には苦艾にがよもぎに似た悔恨がうずいた。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
そして広い大きな世上へと、自然、その若さはうずきをもたげだしていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
努めて無表情に読過そうとしたが、彼は底の方でうずくようなものを感じた。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そして、三年前彼がはじめて「グーセフ」を読んだ時から残されている骨を刺すような冷やかなものとうずくような熱さがまた身裡みうちよみがえって来るのでもあった。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
けれども、そんな言葉を頭にひらめかしているうちに又、何とも知れない異常な衝動がズキズキと私の全身にうずき拡がって行くのを、私はどうする事も出来なくなって来た。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
割竹のいたみがうずくたびに、彼女はよけい世の中に強くなろうとした。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市十郎は、重い、鈍い、そしてどこかずきずき痛む頭を起した。お島が寝ざめにふかす煙草のけむりが顔に来て、何か、吐きたいようなうずきを、胃へ手をやって、抑えていると、
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……しかし、僕のここんとこが、今急に……うずき出したのは……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし思いながら、彼には、それが出来ないかもしれなかったが、今ばかりでなく、多聞丸にまといつかれる時の父なる彼は、いつもただ、そんなうずきにはかれるのだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心ばかりな酒宴となって、みかわす杯のあいだに、人々はどよめき合った。年久しく用いなかった髀肉ひにくうずき、淵にひそんでただ鍛えるのみだった腕は鳴った。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その氷の山にむこうて居るような、骨のうず戦慄せんりつの快感、其が失せて行くのをおそれるように、姫は夜毎、鶏のうたい出すまでは、殆、祈る心で待ち続けて居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
迷い込んで夢中になりたいという気持ちでいたみうずいている——。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
体内から薬のが切れると、うずくような唸きにのた打った。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
と、傷のように痛くうずく冷感が、心臓のところまで上って来た。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
親房の死を聞いたとき、尊氏の心はありのままにこううずいた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刻々に化膿かのうして行くような心のうずきはひどかったが、——差し当たって彼が自身の本心のようなものに、かすかにも触れることのできたのは、彼女の最近のヒステリックな心を
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
既に恢癒かいゆしたはずの傷までがまたうずき出しそうだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
彼はぼうとした心のなかに、熱い熱いうずきがあった。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
四肢がけだるく、腰は激しいうずくような痛みを覚えた。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
常磐——という一言ひとことを聞くだけでも、彼の血、皮膚、髪は恋しさにおののきうずいた。その胸の中のものを公朝に指されたとたんに、彼は何の見得みえもない一個の痴児ちじとなって、
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしうずくようにおかゆいのでござんしょうね。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ころして飲んだ酒がツーンと宋江のこめかみにうずく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
割合夢想的な法水でさえも、その——ディグスビイの生死いかんにかけた疑問と算哲の遺骸発掘——という二つの提題からは、瞬間ではあったが、うずき上げてくるようなものを感じたことは事実だった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
うずくようなはずかしめの感じを伴っていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
骨の節々のくじけるような、うずきを覚えた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「別にどこも……相変らずズキズキうずくだけよ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
家の裏の森も寒さにうずいているように見えた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
作家の生理にも、季感の影響はあるかもしれない。一年中、雑書と紙クズだらけな書斎だが、五月の窓光には、五月の発想がうずく。窓外の新緑をみると、机の上にも、新芽を吹きたい欲望がしきりにおこる。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窮極きゅうきょくして、彼の思念しねんは、そこへ行きついた。この境地には些々ささたる愛憎もなく現在の不平もなかった。早く健康にかえって、天意にこたえんとするものしかうずいて来ない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
靴下をぬいで、ずきずきうずく踵をおさえた。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含んで脹れ上る肉のうずきに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、其の呻きごえが激しければ激しい程、彼は不思議に云い難き愉快を感じるのであった。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして修道院内で相次いで起こったいろいろの事件や、今また院長のもとで演ぜられた醜態などにもかかわらず、この感じは午前中を通して、しだいしだいに悩ましさを増して彼の心をうずかせていったのである。
忠平は、内心の負け目に、そううずかれて、
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いけない、いけないうずき出して来た」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もちろん、日本労働運動史の初ページは明治初めだが、そんな旗のない時代から、ばくぜんと、千二百年前の人間たちでも、原始ストともいえるうずきを見せていたことが、それらの正倉院文書の中に知るのだった。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)