疲労ひろう)” の例文
旧字:疲勞
軍隊ぐんたいが長い行軍こうぐん疲労ひろうしきると、楽隊がくたいがそれはゆかいな曲を演奏えんそうする、それで兵隊へいたいの疲労をわすれさせるようにするというのであった。
一同がなわをひくと! 見よ! たくたくたる丈余じょうよの灰色の巨鳥きょちょう! 足はかたくしばられ、恐怖きょうふ疲労ひろうのために気息きそくえんえんとしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
煽動あふり横顔よこがほはらはれたやうにおもつて、蹌踉よろ/\としたが、おもふに幻覚げんかくからめた疲労ひろうであらう、坊主ばうず故意こいうしたものではいらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゆえにこの間に結ばるる夢はいたずらに疲労ひろうせる身体のまぼろしすなわちことわざにいう五ぞうわずらいでなく、精神的営養物となるものと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あなたのぬすみ見た横顔は、苦悩くのう疲労ひろうのあとが、ありありとしていて、いかにもみにくく、ぼくは眼をふさぎたい想いでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その挙止きょし活溌かっぱつにして少しも病後びょうご疲労ひろうてい見えざれば、、心の内に先生の健康けんこう全くきゅうふくしたりとひそかに喜びたり。
寒さも、えも、疲労ひろうにはうちかてなかった。それから間もなく三人は、うとうとしはじめたかと思うと、やがて、前後もしらず、ぐっすりと眠りこんだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、つまらなそうに、馬糧まぐさのなかにゴロリと身をよこたえたが、やがて連日の疲労ひろうがいちじにでて、むじゃきないびきが、スヤスヤそこからもれはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなことには一向平気な性分しょうぶんで——どんなに騒がれようがビクともしないたちだったが——それでもやはり疲労ひろうを覚えて、ちょっと一休み横になると言い出した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
が、だん/\走りつゞけて、早川の岸に出たときには、彼の身体が、疲れるのと一緒に、疲労ひろうから来る落着が、彼の狂いかけていた頭を、だん/\冷静にしていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
汝等なんじらつまびらかに諸の悪業あくごうを作る。あるい夜陰やいんを以て小禽しょうきんの家に至る。時に小禽すでに終日日光に浴し、歌唄かばい跳躍ちょうやくして疲労ひろうをなし、唯唯ただただ甘美かんび睡眠すいみん中にあり。汝等飛躍してこれをつかむ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わし疲労ひろう砂漠さばくから、ふくろにその疲労ひろうすなってきた。わし背中せなかにそのふくろをしょっている。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こちらの世界せかいでは、どんな山坂やまさかのぼくだりしても格別かくべつ疲労ひろうかんじませぬが、しかしなにやらシーンと底冷そこびえのする空気くうきに、わたくしおぼえず総毛立そうげだって、からだがすくむようにかんじました。
鹽原君大得意の能弁のうべんを以て落語二席をはなす、そのたくみなる人のおとがへき、く当日の疲労ひろう寒気かんきとをわすれしむ、其中にもつねに山間に生活せいくわつする人夫輩に至りては、都会に出でたるのかんおこ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
子路は二人を相手にはげしく斬り結ぶ。往年の勇者子路も、しかし、年には勝てぬ。次第に疲労ひろうが加わり、呼吸が乱れる。子路の旗色の悪いのを見た群集は、この時ようやく旗幟きしを明らかにした。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
一つ会社に十何年間かこつこつと勤め、しかも地位があがらず、依然いぜんとして平社員のままでいる人にあり勝ちな疲労ひろうがしばしばだった。橋の上を通る男女や荷馬車を、かぬ顔して見ているのだ。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
疲労ひろうと不眠と空腹とがかさなった上に、又もやの難所を二時間余も彷徨さまよったのであるから、身体からだの疲れと気疲れとて、彼は少しく眼がくらんで来た。脳に貧血をきたしたらしい。ここで倒れては大変だ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
軍首脳部や長老の動きは頻繁ひんぱんで、その代表者は叛軍の説得におもむいたが、その結果はきわめてあいまいであり、しかもその夕方には、叛軍の疲労ひろうをねぎらう意味で首相官邸をはじめ、鉄道、文部、大蔵おおくら
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
煙りと火気と臭気と殺戮さつりくとで、疲労ひろうしきっているのであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを肉体の疲労ひろうと取りえたいためだったからな。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「うん。わしは連日れんじつ、脳細胞を使い過ぎるので、どうしてもこれをやらないと、早く疲労ひろうがとれないのじゃ」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
望みのつなも切れはてて一家三人はたがいにため息をついた。もとより女と子どものことである、心は勇気にみちてもからだの疲労ひろうは三日目の朝にはげしくおそうてきた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
汝等なんじらつまびらかに諸の悪業あくごうを作る。あるい夜陰やいんを以て、小禽しょうきんの家に至る。時に小禽、すでに終日日光に浴し、歌唄かばい跳躍ちょうやくして疲労ひろうをなし、唯唯ただただ甘美かんび睡眠すいみん中にあり。汝等飛躍してこれをつかむ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
両人ともすっかり疲労ひろうして、そのままぶったおれ、意識を失ってしまった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふたりは極度きょくど疲労ひろうした人のように、鼾声かんせいをあげて早くも熟睡じゅくすいした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
空腹と疲労ひろうでもう一歩も歩けなくなった。彼女は昏倒こんとうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)