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はつらつ
ふりがな文庫
“
溌剌
(
はつらつ
)” の例文
近ごろ、ラジオでもよくやる、
溌剌
(
はつらつ
)
とした行進曲が、降る雪の伴奏のように思われて、こうした雪の道を歩くのに、ふさわしかった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
たゞ人々よ、此の若気の過失、と元気の
溌剌
(
はつらつ
)
とを混同してはならない。同時に又、心境の自得と作者の沈滞とを誤認してはならない。
「私」小説と「心境」小説
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
二人とも、見るからに一鞭あてて今や疾走しそうな
溌剌
(
はつらつ
)
たる騎手のごとき軽快な青年だ。この嫁になるものは仕合せだと私は思った。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
矢張いくらかは新郎らしい若々しさ、と云うのが無理なら、何処か
溌剌
(
はつらつ
)
とした、色つやのよい、張り切った感じの人であってほしい。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一見、黒白混血児とわかる浅黒い肌、きりっとひき締った
精悍
(
せいかん
)
そうな
面
(
つら
)
がまえ、ことに、
肢体
(
したい
)
の
溌剌
(
はつらつ
)
さは
羚羊
(
かもしか
)
のような感じがする。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
片手に
溌剌
(
はつらつ
)
たる科学の剣を握っていたならば、列国も之には一指もふれる事が出来ず、世界に冠絶した理想国家となるに違いない。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
またかの
筍掘
(
たけのこほ
)
りが力一杯に筍を引抜くと共に両足を
空様
(
そらざま
)
にして
仰向
(
あおむき
)
に転倒せる図の如きは
寔
(
まこと
)
に
溌剌
(
はつらつ
)
たる活力発展の状を
窺
(
うかが
)
ふに足る。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
元気
溌剌
(
はつらつ
)
たる時であって、既に詩集二冊と戯曲『クロムウェル』とを発表して、ロマンチック運動の先頭に立ち、翌三〇年には
死刑囚最後の日解説
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ちょうど水墨画の
溌剌
(
はつらつ
)
とした筆触が描かれる形象の要求する線ではなくして、むしろ形象の自然性を否定するところに生じて来るごとく
能面の様式
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
友の身体のうちに若々しく
溌剌
(
はつらつ
)
と生まれ返り、新しい世界を友の眼でながめ、この世の一時の美しいものを友の官能で抱きしめ
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
老人は自暴したやうな勢で——僕にはさう見えたのだが——ほとんど紙を引き裂くほどにして
溌剌
(
はつらつ
)
たる墨竹の図を描きとばした。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
江南江東八十一州は、今や、時代の人、
孫策
(
そんさく
)
の治めるところとなった。兵は強く、地味は
肥沃
(
ひよく
)
、文化は
溌剌
(
はつらつ
)
と清新を呈してきて
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
探偵のヴァンスも
溌剌
(
はつらつ
)
としたフラッパー〔おてんば娘〕に好かれそうなタイプでもなければ、ホームズやルパン型のジャイアントでもない。
ヂユパンの癖とヴァンスの癖
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
それ所か、
明
(
あかる
)
い空気
洋燈
(
ランプ
)
の光を囲んで、しばらく膳に向っている
間
(
あいだ
)
に、彼の細君の
溌剌
(
はつらつ
)
たる才気は、すっかり私を敬服させてしまいました。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
次の晩、ぼくが、二等船室から
喫煙室
(
きつえんしつ
)
のほうに、階段を
昇
(
のぼ
)
って行くと、上り口の右側の部屋から、
溌剌
(
はつらつ
)
としたピアノの音が、流れてきます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
彼等の元気
溌剌
(
はつらつ
)
たる過渡期の詩人は、これによって欧風の詩を移植し、新日本の若き
抒情詩
(
リリック
)
を創った積りで得意になっていた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
われわれをいつも生気
溌剌
(
はつらつ
)
とさせていないとすると、魂の認識だけでは、われわれは必ず間違いなく陰鬱になるであろう……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
しかし、それでも、お前の文明よりはまだしも
溌剌
(
はつらつ
)
としていはしないか。いや、大体、健康不健康は文明未開ということと係わり無きものだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
若い健康なものは、もっと
溌剌
(
はつらつ
)
とした生活が欲しいのだ。手も足も欲望も自由に伸ばし自由に充足し得る生活が欲しいのだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
だから、非常にひよわなさかなのように思われているが、その実、鮎は
俎上
(
そじょう
)
にのせて頭をはねても、ぽんぽん
躍
(
おど
)
り上がるほど元気
溌剌
(
はつらつ
)
たる魚だ。
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
といつて日本の家庭に縁のないA氏は、銀座や劇場などで見かける
溌剌
(
はつらつ
)
とした令嬢に、わづかに日本女性の生ける美を
見出
(
みいだ
)
して来たに過ぎない。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
虻や蜂があんなにも
溌剌
(
はつらつ
)
と飛び廻っている外気のなかへも決して飛び立とうとはせず、なぜか病人である私を
模
(
ま
)
ねている。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
日本人の生活の照準を合せ得る
溌剌
(
はつらつ
)
たる見識が十分に備っているという信用を、持ち得る者が果して幾人あるでしょうか。
三面一体の生活へ
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
なら、聞いただけでも青春
溌剌
(
はつらつ
)
。〽江戸はよいとこ 広いとこ……と昔の小唄のこころいきが実感されてくるではないか。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
疲れはまったく癒え、全身は恍惚とした香気に包まれて艶々と輝き、
溌剌
(
はつらつ
)
と若返って生気は
溢
(
あふ
)
れて、我が身体ながら見違えるほど美しくなった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あなたが「
仏蘭西
(
フランス
)
での第一印象」と云ふ題でアンナル誌にお書きに成つたのを、
私
(
わたくし
)
は最も
溌剌
(
はつらつ
)
たる感興を
以
(
もつ
)
て読みました。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ああいう娘の存在は単調な避暑地の空気を
溌剌
(
はつらつ
)
とさせて
呉
(
く
)
れる。「荘ちゃん。」と娘に呼ばれて麻川氏も大はしゃぎだ。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
やや瘠肉の清楚な書体で、しかも
溌剌
(
はつらつ
)
たる勢いがあり、書翰などは行間に構わずちらし書きのように達筆に書かれます。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
矢張古いものを相当に研究しているし、それにその当時の
溌剌
(
はつらつ
)
とした現世を見る眼が肥えて来ているのが表れている。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「色と意気地を立てぬいて、
気立
(
きだて
)
が
粋
(
すい
)
で」とはこの事である。かくして
高尾
(
たかお
)
も
小紫
(
こむらさき
)
も出た。「いき」のうちには
溌剌
(
はつらつ
)
として武士道の理想が生きている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
ひとり三年は単純であるかわりに元気が
溌剌
(
はつらつ
)
として
常軌
(
じょうき
)
を
逸
(
いっ
)
する、しかも有名な木俣ライオンが牛耳をとっている
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
童
(
わらべ
)
のような首筋、長い金色の
睫毛
(
まつげ
)
、青い目、風にそよぐ髪、薔薇色の
頬
(
ほお
)
、
溌剌
(
はつらつ
)
とした
脣
(
くちびる
)
、美しい歯並み、などを見て、その
曙
(
あけぼの
)
のごとき姿に欲望をそそられ
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あの
溌剌
(
はつらつ
)
として人に迫るような「枕の草紙」に多くの学ぶべきもののあるのを発見したのも、その時であった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
表面
(
おもて
)
に、
溌剌
(
はつらつ
)
と見えるからといって、
青春者
(
わかいひとたち
)
が、やはり世の中へたつのは、多少とも死もの狂いであるのと同様、
先覚者
(
さきのひとたち
)
も決して休止状態でいるのではない。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
妖艶
(
ようえん
)
溌剌
(
はつらつ
)
を極めた龍代の女王ぶりに、魂を奪われてばかりおりましたのは、何といっても一生の不覚でした。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
弥之助を魅惑しているか解らない、そこには張り切った労働を基調とする生々たる平和がある、健康の躍動から来たるところの、
溌剌
(
はつらつ
)
たる肉体の自由がある
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それを確めるために、もう一度夫人に会って見ても、あの夫人の美しい
容貌
(
ようぼう
)
と、
溌剌
(
はつらつ
)
な会話とで、もう一度体よく追い返されることは余りに
判
(
わか
)
り切っている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「しかし幹部と決闘をしようってんですから、この頃の私達と違って、元気
溌剌
(
はつらつ
)
たるものがございましたな」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ゆきつく先も知らず、流れる水のように柔順なその姿のどこに生後一年の
溌剌
(
はつらつ
)
さが宿っているのだろうか。
一つ身の着物
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そしてことに彼の想像力の奔放なはげしさと
溌剌
(
はつらつ
)
たる清新さとは、私の魂を燃え立たせるように感じた。そのころ、私は求めるものがあってパリで捜していた。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
この、
灯
(
ともしび
)
のつき初めた巴里の雑沓へ、
北停車場
(
ガル・ドュ・クウ
)
なり
聖
(
サン
)
ラザアルなりから吐き出される瞬間の処女のような君のときめき、それほど
溌剌
(
はつらつ
)
たる愉悦はほかにあり得まい。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
終に、
溌剌
(
はつらつ
)
たるエミリーによろしく伝言を頼む”——こういうんだがね、ロシア人らしい長い手紙だ
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
溌剌
(
はつらつ
)
たる俳句を作れ。堂々たる俳句を作れ。病人の句は病人に任して置け。(『玉藻』、二八、七)
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この
溌剌
(
はつらつ
)
たる青春の美も、三十という年配になれば、その調和は失われ、そろそろ下り坂になって、顔の皮膚はたるみ、眼のまわりや額にはいちはやく
小皺
(
こじわ
)
が寄って
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その時お粂は二十五、出戻りになつてから、
鐵漿
(
かね
)
も落し、眉も生やして、元の娘姿にかへりましたが、少しもをかしくないほど、若くて陽氣で、
溌剌
(
はつらつ
)
としてをりました。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
孫たちはだんだん大きくなるし、店には大勢の少年諸君が、希望に燃えて
溌剌
(
はつらつ
)
として働いている。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
その主な理由は、仏像は人間を行為に誘う
溌剌
(
はつらつ
)
たる魅力にとぼしいということであった。仏像に対していると、彼は自らは語らず、私にのみ多くを語らせようと欲する。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
溌剌
(
はつらつ
)
として美しい彼女という人間のなかには、
狡
(
ずる
)
さと
暢気
(
のんき
)
さ、
技巧
(
ぎこう
)
と
素朴
(
そぼく
)
、おとなしさとやんちゃさ、といったようなものが、一種特別な
魅力
(
みりょく
)
ある混り合いをしていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
ああ、また
飛沫
(
ひまつ
)
をあげ、飛沫をあげて、
溌剌
(
はつらつ
)
と泳ぎ、潜り、また跳りはぬる三、四歳の小供ども。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それでいてどこか
溌剌
(
はつらつ
)
としたところのあるような妓だったが、今ではそのいろ/\な気質がなくなって、あとに真面目なところと感傷的なところだけが目に立って残った。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
溌
漢検準1級
部首:⽔
12画
剌
漢検1級
部首:⼑
9画
“溌”で始まる語句
溌溂
溌
溌墨
溌々
溌地
溌刺
溌猴
溌墨淋漓
溌〻
溌皮