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楫
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かじ
ふりがな文庫
“
楫
(
かじ
)” の例文
「
凡
(
およ
)
そ人事を
区処
(
くしょ
)
する、
当
(
まさ
)
に
先
(
ま
)
ずその結局を
慮
(
おもんぱか
)
り、
而
(
しか
)
して後に手を下すべし、
楫
(
かじ
)
無
(
な
)
きの舟を
行
(
や
)
る
勿
(
なか
)
れ、
的
(
まと
)
無
(
な
)
きの
箭
(
や
)
を発する
勿
(
なか
)
れ」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
被
(
かずき
)
の外へ
躍出
(
おどりい
)
でて、
虚空
(
こくう
)
へさっと
撞木
(
しゅもく
)
を
楫
(
かじ
)
、
渦
(
うずま
)
いた風に乗って、
緋
(
ひ
)
の
袴
(
はかま
)
の
狂
(
くる
)
いが
火焔
(
ほのお
)
のように
飜
(
ひるがえ
)
ったのを、よくも見ないで
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まあまあだまっているに
若
(
し
)
くはなしと覚悟をきめて、
反
(
かえ
)
って反対の方角へと
楫
(
かじ
)
をとった。余は正直に生れた男である。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
校長の語るところによると、この三田ヶ谷という地は村長や子弟の父兄の権力の強いところで、その
楫
(
かじ
)
を取って行くのがなかなかむずかしいそうである。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
つとめて人心を
和
(
やわ
)
らげるように、和らげるようにと
楫
(
かじ
)
を取って行かなければならないんでげして、強いばかりが取柄ではがあせん、つまり毛唐に対しても
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
楫
(
かじ
)
をなくした舟のように、わたくしは途方にくれました。どちらへ向いて見ても活路を見出すことが出来ません。わたくしはとうとう夢に向って走りました。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
帆も
楫
(
かじ
)
も無い丸木舟が一
艘
(
そう
)
するすると岸に近寄り、魚容は吸われるようにそれに乗ると、その舟は、
飄然
(
ひょうぜん
)
と
自行
(
じこう
)
して漢水を下り、長江を
溯
(
さかのぼ
)
り、洞庭を横切り
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
水夫や
楫
(
かじ
)
取りが船尾の方で、武士たちに多少遠慮しいしい、
賽
(
さい
)
コロの目を争っているかと思うと、武士たちは船首に集まって、酒を汲み交わして放談していた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
筏乗は悪く致すと岩角に
衝当
(
つきあた
)
り、水中へ
陥
(
おち
)
るような事が毎度ありますが、山田川から前橋まで
漕出
(
こぎだ
)
す賃金は
稍
(
ようや
)
く金二円五十銭ぐらいのもので、長い
楫
(
かじ
)
を持ち筏の上に乗って
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「日本は小なれども
楫
(
かじ
)
のごとし。東洋の大船を
揺
(
うご
)
かすはすなわちこの楫ならざるべからず」
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この場所柄と時節柄とを弁別して規則あらしむるはすなわち心事の明らかなるものなり。人の働きのみ活発にして明智なきは、蒸気に機関なきがごとく、船に
楫
(
かじ
)
なきがごとし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それは船頭栄右衛門、水夫八五郎、総右衛門、善助、重次郎の五人で、
日向
(
ひゅうが
)
の
志布志
(
しぶし
)
浦を出帆して日向灘で
楫
(
かじ
)
を折り、潮の流れに乗ってそのままこちらへ流されたものであった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
担
(
にな
)
わなくては持てないほど獲れたりなんぞする上に、これを釣る時には舟の
艫
(
とも
)
の方へ出まして、そうして大きな長い
板子
(
いたご
)
や
楫
(
かじ
)
なんぞを舟の
小縁
(
こべり
)
から小縁へ渡して、それに腰を掛けて
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
子供の気に入るように
楫
(
かじ
)
さえ取っていけば子供は造作なく馴染んでくるものである。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
幾つかの船が
唄声
(
うたごえ
)
を立てながら沖のほうを
漕
(
こ
)
ぎまわっていた。形はほのかで鳥が浮いているほどにしか見えぬ船で心細い気がするのであった。上を通る一列の
雁
(
かり
)
の声が
楫
(
かじ
)
の音によく似ていた。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
波も静かでねぶりすりすり、
簑鞘
(
みのさや
)
はずす。空のすんばり、荒崎沖よ。
明星
(
あけぼし
)
出
(
いず
)
れば
船足
(
ふなあし
)
遅い。遅い船足たのしり沖よ。これでなるまい、
楫
(
かじ
)
をかきかきおとじをはずす。おとじはずせば法木の前よ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
八橋の口ぶりによると、治六もさすがにそんなことは口外しなかったらしく思われたので、次郎左衛門もまず安心したが、それにしても乗りかかった舟の
楫
(
かじ
)
を右へも左へも向けることは出来なかった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まるで吸った
蛭
(
ひる
)
のように、ずどうんと腰で
摺
(
ず
)
り、欄干に、よれよれの
兵児帯
(
へこおび
)
をしめつけたのを力綱に
縋
(
すが
)
って、ぶら下がるように
楫
(
かじ
)
を取って下りて来る。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
して
楫
(
かじ
)
を
執
(
と
)
るとき、
箭
(
や
)
を放つときは心静かに落ちつけて、よくよくおのれの力先きの方向に留意するを要する。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
上流の赤岩に
煉瓦
(
れんが
)
を積んで行く船が二
艘
(
そう
)
も三艘も竿を弓のように張って流れにさかのぼって行くと、そのかたわらを帆を張った舟がギーと
楫
(
かじ
)
の音をさせて、いくつも通った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「そうかじゃ困りますわ。私がここまで
拵
(
こしら
)
えたのだから、あとは、あなたが、どうとも
為
(
な
)
さらなくっちゃあ。あなたの
楫
(
かじ
)
のとりようでせっかくの私の苦心も何の役にも立たなくなりますわ」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其夜私は東六という若い
楫
(
かじ
)
取を供に連れて港へ上陸いたしました。
赤格子九郎右衛門
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あ、あ、いけねえ、何とか
楫
(
かじ
)
を取れねえのか——」
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
楫
(
かじ
)
も
櫓
(
ろ
)
もない、舟に、
筵
(
むしろ
)
に乗せられて、波に流されました時、父親の約束で、海の中へ捕られて
行
(
ゆ
)
く、私へ供養のためだと云って、船の左右へ、
前後
(
あとさき
)
に
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上が身を堅く花嫁の重いほど、乗せた車夫は始末のならぬ
容体
(
ようだい
)
なり。妙な処へ
楫
(
かじ
)
を
極
(
き
)
めて、
曳据
(
ひきす
)
えるのが、がくりとなって、ぐるぐると
磨骨
(
みがきぼね
)
の波を打つ。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
トンと船底へ
突込
(
つきこ
)
むと、殊勝な事には、手拭の畳んで持ったをスイと解き、足の埃をはたはたと払って、
臀
(
いしき
)
で
楫
(
かじ
)
を取って、ぐるりと船の胴の間にのめり込む。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
合歓
(
ねむ
)
の花ぞ、と心着いて、
流
(
ながれ
)
の音を耳にする時、車はがらりと石橋に
乗懸
(
のりかか
)
って、黒の
大構
(
おおがまえ
)
の門に
楫
(
かじ
)
が下りた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
車夫の
提灯
(
ちょうちん
)
が露地口を、薄黄色に
覗
(
のぞ
)
くに引かれて、葛木はつかつかと出て、
飜然
(
ひらり
)
と乗ると、
楫
(
かじ
)
を上げる、背に
重量
(
おもし
)
が掛って、前へ
突伏
(
つッぷ
)
すがごとく、胸に抱いた人形の顔を
熟
(
じっ
)
と
視
(
み
)
た。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朝凪
(
あさなぎ
)
の海、
穏
(
おだや
)
かに、
真砂
(
まさご
)
を拾うばかりなれば、
纜
(
もやい
)
も結ばず
漾
(
ただよ
)
わせたのに、
呑気
(
のんき
)
にごろりと大の字
形
(
なり
)
、
楫
(
かじ
)
を枕の
邯鄲子
(
かんたんし
)
、太い眉の秀でたのと、鼻筋の通ったのが、
真向
(
まの
)
けざまの寝顔である。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
煙草
(
きせる
)
を下へ、手で
掬
(
すく
)
って、土間から
戸外
(
そと
)
へ、……や……ちょっと投げた。トタンに相の山から
戻腕車
(
もどりぐるま
)
、店さきを通りかかって、軒にはたはたと鳴る旗に、フト
楫
(
かじ
)
を持ったまま仰いで
留
(
とま
)
る。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「大丈夫でございますよ、姉さん。」と
楫
(
かじ
)
を取った片手に祝儀を頂きながら。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
楫
漢検1級
部首:⽊
13画
“楫”を含む語句
楫取
楫棒
舟楫
楫子
楫取魚彦
楫枕
楫柄
櫓楫
楫音
艪楫
船楫
矢島楫子刀自
矢島楫子
真楫
眞楫
汪楫
水夫楫主
李之楫
楫棹
楫屋
...