トップ
>
木魚
>
もくぎょ
ふりがな文庫
“
木魚
(
もくぎょ
)” の例文
線香の煙と、すず虫と、近松と、お経と
木魚
(
もくぎょ
)
の音が新秋の私を教育してくれた。と同時に私は略画の情趣を知らぬ間に感得してしまった。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
将棋は負けても、亀の子を掴まえるのは上手だと豹一は力んだが、空しくあたりはすっかり夜が落ち、
木魚
(
もくぎょ
)
の音を悲しく聞いた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そのそばに
児守
(
こもり
)
や子供や人が大勢
立止
(
たちどま
)
っているので、何かと
近
(
ちかづ
)
いて見ると、坊主頭の老人が
木魚
(
もくぎょ
)
を
叩
(
たた
)
いて
阿呆陀羅経
(
あほだらきょう
)
をやっているのであった。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あるいは
木魚
(
もくぎょ
)
や鐘を使ったり、またバタバタ音を立てるような種々の形容楽器に苦心して、劇になくてはならない気分を相応に添えたものである。
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
谷中は寺の多い処だからでもあろうか、
朱漆
(
しゅうるし
)
の所々に残っている
木魚
(
もくぎょ
)
や、
胡粉
(
ごふん
)
の
剥
(
は
)
げた木像が、
古金
(
ふるかね
)
と
数
(
かず
)
の
揃
(
そろ
)
わない茶碗小皿との間に並べてある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
朱と金で
彩
(
いろど
)
った
一抱
(
ひとかか
)
えほどもある大
木魚
(
もくぎょ
)
が転がッているかと思うと、支那美人を描いた六角の彩燈が投げ出してある。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
門をはいると、
庫裡
(
くり
)
の
藁葺
(
わらぶき
)
屋根と
風雨
(
ふうう
)
にさらされた黒い窓障子が見えた。本堂の
如来
(
にょらい
)
様は黒く光って、
木魚
(
もくぎょ
)
が赤いメリンスの敷き物の上にのせてある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その他、なお、舎利塔、位牌、如意、
持蓮
(
じれん
)
、
柄香炉
(
えこうろ
)
、
常花
(
とこはな
)
、
鈴
(
れい
)
、
五鈷
(
ごこ
)
、三鈷、
独鈷
(
とっこ
)
、
金剛盤
(
こんごうばん
)
、輪棒、
羯麿
(
かつま
)
、
馨架
(
けいか
)
、
雲板
(
うんばん
)
、
魚板
(
ぎょばん
)
、
木魚
(
もくぎょ
)
など、余は略します。
幕末維新懐古談:07 彫刻修業のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ひどくひっかかりそうなのは好まないので、
木魚
(
もくぎょ
)
などは多くもない採集の中にも三つ四つあったでしょう。その他
達磨
(
だるま
)
は、
堆朱
(
ついしゅ
)
のも
根来塗
(
ねごろぬり
)
のもありました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
この隣人は
袂
(
たもと
)
に
珠数
(
じゅず
)
を入れ、かつては半蔵の教え子でもあった
亡
(
な
)
き
鶴松
(
つるまつ
)
のことを忘れかねるというふうで、
位牌所
(
いはいじょ
)
を
建立
(
こんりゅう
)
するとか、
木魚
(
もくぎょ
)
を寄付するとかに
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
生ていたころの
木魚
(
もくぎょ
)
のおじいさんと三人、のどかな海に対して碁を打ち暮した。島には木橋の
相生橋
(
あいおいばし
)
が懸っていたばかりで、橋の上を通る人は
寥々
(
りょうりょう
)
としていた。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
いそいで来るらしい
木魚
(
もくぎょ
)
のような遠い音が、明るい電燈の
点
(
つ
)
いている広いところから、鉤形にまがって急にほの暗い通りに歩き近づいてくるような気がしてきた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
うす暗い本堂の
内陣脇
(
ないじんわき
)
で、一人の中年僧が、お勤めをしていたのだが、ふつうの
勤行
(
ごんぎょう
)
と違い、その僧は
木魚
(
もくぎょ
)
、
鉦
(
かね
)
、
磬
(
けい
)
、太鼓、
鐘
(
しょう
)
の五ツぐらいな楽器を身のまわりにおき
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何か
木魚
(
もくぎょ
)
みたいなものを叩いてアホダラ経みたいなものを唸ったりしていたのを思いだすが、堂々たる男の貫禄が舞台にみち、男の姿が頭抜けて大きく見えたばかりでなく
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
主人は毛皮で作った、小さい
木魚
(
もくぎょ
)
ほどの
蟇口
(
がまぐち
)
を前にぶら下げている。夜
煖炉
(
だんろ
)
の
傍
(
そば
)
へ椅子を寄せて、音のする赤い石炭を眺めながら、この木魚の中から、パイプを出す、
煙草
(
たばこ
)
を出す。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
中で興味深いものの一つは
木魚
(
もくぎょ
)
でありましょう。よく「
玉鱗
(
ぎょくりん
)
」という文字が彫ってあるのを見ると、元来は支那から来たものでしょうが、今は和風になって色々な形のを作ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
平次の指は真っ直ぐに、仏壇の前に据えた
禿
(
はげ
)
ちょろの
木魚
(
もくぎょ
)
を指さしているのでした。
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
うしろ
山
(
やま
)
で、ほオほオと
梟
(
ふくろう
)
が
鳴
(
な
)
いていて、
崖
(
がけ
)
の
上
(
うえ
)
の
仁左
(
にざ
)
エ
門
(
もん
)
さんの
家
(
いえ
)
では、
念仏講
(
ねんぶつこう
)
があるのか、
障子
(
しょうじ
)
にあかりがさし、
木魚
(
もくぎょ
)
の
音
(
おと
)
が、
崖
(
がけ
)
の
下
(
した
)
のみちまでこぼれていました。もう
夜
(
よる
)
でありました。
牛をつないだ椿の木
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「尺八と、
木魚
(
もくぎょ
)
だ、あれを聞かされると、ほとんど生きた空は無い」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
半七はそこにある
木魚
(
もくぎょ
)
を叩いてみた。
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今はやる俗の
木魚
(
もくぎょ
)
や朧月 太祇
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かくの如き
溝泥臭
(
どぶどろくさ
)
い堀割と
腐
(
くさ
)
った木の橋と肥料船や
芥船
(
ごみぶね
)
や
棟割長屋
(
むねわりながや
)
なぞから成立つ陰惨な光景中に寺院の屋根を望み
木魚
(
もくぎょ
)
と鐘とを聞く
情趣
(
おもむき
)
は
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
友達がなぜそんなに馬を気に掛けるかというと、馬は
生死
(
しょうし
)
を共にするものだからと、貞固は答えた。厩から帰ると、
盥嗽
(
かんそう
)
して仏壇の前に坐した。そして
木魚
(
もくぎょ
)
を
敲
(
たた
)
いて
誦経
(
じゅきょう
)
した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
逢曳
(
あいび
)
きの寝疲れなどで、
鴉
(
からす
)
の声にも目覚めずにすごしたら大変だから、朝まわりの
頭陀
(
ずだ
)
(
朝勤行
(
あさごんぎょう
)
に町の軒々を歩く暁の
行者
(
ぎょうじゃ
)
)をたのみ、朝々裏口で
木魚
(
もくぎょ
)
を叩いて貰うことにしておけば
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木魚
(
もくぎょ
)
の顔の
老爺
(
おじい
)
さんが、あの額の上に
丁字髷
(
ちょんまげ
)
をのせて、短い体に黒ちりめんの羽織を着て、大小をさしていた姿も
滑稽
(
こっけい
)
であったろうが、そういうまた
老妻
(
おばあ
)
さんも美事な
出来栄
(
できばえ
)
の
人物
(
ひと
)
だった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
はては本堂の
木魚
(
もくぎょ
)
や鐘をたたいたその人が、第二軍の司令部に従属して、その混乱した戦争の
巴渦
(
うずまき
)
の中にはいっているかと思うと、いっそうその記事がはっきりと眼にうつるような気がする。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
吉兵衛
(
きちべえ
)
というお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンと
木魚
(
もくぎょ
)
の音がしています。窓の
障子
(
しょうじ
)
にあかりがさしていて、大きな
坊主頭
(
ぼうずあたま
)
がうつって動いていました。
ごん狐
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そうしてぷかりぷかりと
夜長
(
よなが
)
を吹かす。
木魚
(
もくぎょ
)
の名をスポーランと云う。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
厨子から飛出すと、
戒壇
(
かいだん
)
と
木魚
(
もくぎょ
)
を踏んで、パッと外へ——。
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
せはしげに
叩
(
たた
)
く
木魚
(
もくぎょ
)
や雪の寺
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
その辺の寺々より
鉦
(
かね
)
や
木魚
(
もくぎょ
)
の音
頻
(
しきり
)
に聞え、街道筋とも覚しき処を、百姓
供
(
ども
)
高声に話しながら、野菜を積み候荷車を
曳
(
ひ
)
き行くさま、これにて
漸
(
ようや
)
く
二本榎
(
にほんえのき
)
より
伊皿子辺
(
いさらごへん
)
へ来かゝり候事と
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
幕
一帳
(
ひとはり
)
男女名取中、
葡萄鼠縮緬幕
(
ぶどうねずみちりめんまく
)
女名取中、大額
並
(
ならびに
)
黒絽夢想袷羽織
(
くろろむそうあわせばおり
)
勝久門弟中、十三年忌が三世の七年忌を繰り上げて
併
(
あわ
)
せ修せられたときには、
木魚
(
もくぎょ
)
一対
(
いっつい
)
墓前
花立
(
はなたて
)
並綫香立男女名取中
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
木魚
(
もくぎょ
)
をたたきぬいていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
読書
木魚
(
もくぎょ
)
琴瑟
(
きんしつ
)
等ノ声
最
(
もっとも
)
然リトナス。鳩ノ雨ヲ林中ニ
喚
(
よ
)
ビ、雁ノ霜ヲ月辺ニ警シメ、
棊声
(
きせい
)
ノ竹ヲ隔テ、雪声ノ窓ヲ隔ツ。皆愛スベキナリ。山行伐木ノ声、渓行水車ノ声
並
(
とも
)
ニ遠ク聴クベシ。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
本堂の
方
(
かた
)
に
木魚
(
もくぎょ
)
叩く音いとも
懶
(
ものう
)
し。
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
“木魚”の意味
《名詞》
木製で中空の仏具で、表面に魚鱗が彫られ、先を布などで覆った撥で叩き、音を出すもの。
禅宗寺院の庫裏の軒先に掛け、時刻を知らせる魚の形をした木製の板。
(出典:Wiktionary)
“木魚”の解説
木魚(もくぎょ、杢魚とも)は、仏具・楽器の一種である。
(出典:Wikipedia)
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
魚
常用漢字
小2
部首:⿂
11画
“木魚”で始まる語句
木魚庵
木魚然
木魚講