日限にちげん)” の例文
また事業と感情とを混同する事についていうべきことは、外国ではたとえば注文ちゅうもん日限にちげんに品物ができなければ、むろん契約破棄けいやくはきとなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
七円、十円と価格が分れているのを、十円のに決めて日限にちげんを切って約束をする。そこで仏師屋では、小仏こぼとけを作る方の人が観音を作り始める。
「よし、判った。たった三日、日限にちげんを切って待ってやろう。手前の改心を見届けた平次があの可愛らしい娘への土産みやげ代りだ」
けれど、それはゆうべの問題ではなく、もう日限にちげん切迫せっぱくしてきた、御岳みたけの山における兵学大講会へいがくだいこうえ奉行ぶぎょうめいぜられた長安ながやす下準備したじゅんび手配てくばりの評議ひょうぎ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御心配ごしんぱいにはおよびません。今日きょうから七日なのか日限にちげんのつきないうちに、きっとむすめさんをたすけることができるだろうとおもいますから、安心あんしんしてっていてください。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いや、ここでそんな日限にちげん争いをしていてもはじまりません。それでは、こういうことにしようじゃありませんか。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「京都において大嘗会だいじょうえ御執行相成りそろてより日限にちげんも相立たざる儀につき、太郎兵衛事、死罪御赦免仰せいだされ、大阪北、南組、天満てんまの三口御構くちおかまいの上追放」
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うちのものはもとより出張とばかり信じていたが、その日限にちげんが過ぎていくら待っても帰らないのみか、どこからも何の音信たよりも来ないので、しまいにとうとう不審を起した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十二月三十日じふにぐわつさんじふにちきち坂上さかうへ得意場とくいばあつらへの日限にちげんおくれしをびにきて、かへりは懷手ふところでいそあし草履ざうり下駄げたさきにかゝるものは面白おもしろづくにかへして、ころ/\ところげる
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
貫「それでは遊佐さん、これに御印ごいんを願ひませう。日限にちげんは十六日、よろしうございますか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そののちの事は話さずとも、あなたには推察出来るでしょう。わたしは北条屋ほうじょうや危急ききゅうを救うために、三日と云う日限にちげんを一日も違えず、六千貫のかねを調達する、恩返しの約束を結んだのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
千秋ちあきと思へども言はるゝ度にはづかしさの先立なれば果敢々々はか/″\しき回答いらへもなくておもはゆげかゝる所ろへ門の戸開け這入はひり來るは小西屋の一番管伴ばんたう忠兵衞なれば夫と見るより父親てゝおやいとゑまに迎へ上げ忠兵衞どのか能く來ませし今日等は定めし婚姻の日限にちげんきめにお出が有らうと今も今とて娘と二個ふたりうはさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「されば、ただいま民部どのが、しいとおっしゃっただけの兵を、かならずその日限にちげんのうちに、若君のおんまえまでしあつめてごらんにいれまする」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう寂寞せきばくたる団欒だんらんの中に、お貞さんは日ごとに近づいて来る我結婚の日限にちげんを考えるよりほかに、何の天地もないごとくに、盆をひざの上へせて御給仕をしていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「三千両の金を本店へ送る日限にちげんが来たので、あんな苦しい事をしたのじゃないだろうか」
かつまたこれまでのこよみにはつまらぬ吉凶きつきやうしる黒日くろび白日しろびのとてわけもわからぬ日柄ひがらさだめたれば、世間せけんこよみひろひろまるほど、まよひたねおほし、あるひ婚禮こんれい日限にちげんのばし、あるひ轉宅てんたくときちゞ
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
三日と云う日限にちげんを一日もたがえず、六千貫の金を工面くめんするものは、この広い日本の国にも、甚内のほかに誰が居りましょう? して見ると、——その時わたしの心の中には、二年以前雪の降った
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さなきだに、激怒していた綱吉は、老中を通じ、町奉行丹羽遠江守へ、犯人の逮捕を、日限にちげんきッて、きびしく催促した。しかし、容易にその検挙は実現しなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旦那様からお許しが出たんだから、まあこれから日限にちげんまでは、ゆっくりと、好きな所をお歩きなせえ。だが、ひとり歩きはいけませんぜ。そいつアくれぐれも、啓之助様から、念を押されてきた宅助。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)