“手(た)” の例文
すぐ效(き)いちやつて、わけなく手(た)ぐり出されちやつたんだが、條虫が出ちまつたら、その人は、一升も飮めなくなつちやつたんだが——
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
手(た)ぐりつけられるように。……金石街道でお優さんと死のうとした、並木の松に、形がそっくりに見えて忍耐(がまん)がならないのです。——
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、両刀を手(た)ばさむ気でそろばんを取る。大義名分を金勘定のあきないに移している。みずから商道といっているのが、それだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
爺さんが綱の玉を段々にほごすと、綱はするするするするとだんだん空の方へ、手(た)ぐられでもするように、上がって行くのです。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
雜談(ざつだん)の間に周三は、何かひツかゝりを作へては、お房の素性(すじやう)と經歴(けいれき)とを探つた。そして約(ほぼ)想像(そう/\)して見ることが出來るまでに手(た)ぐり出した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたしたちがみんな船の上に乗ってしまうと、まもなく船をつないだ大づなは解(と)かれて、船頭はかじを、御者(ぎょしゃ)は手(た)づなを取った。
胆(きも)も太いが手ぎわもいい、たちまち三丈(じょう)あまりの絶壁(ぜっぺき)の上へみごとに手(た)ぐりついて、竹生島(ちくぶしま)の樹木の中へヒラリと姿をひそませてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お艶の部屋の隣の大納戸まで忍び返しを越して綱を手(た)ぐって行くことを思いつき、二、三度はそれで逢引を重ねたことだろう
女は昂つた男の言出しを手(た)ぐつて自分の本心を打明けようとも思つたが、それが果していいか悪いか一寸分らなくなつた。で、先づかう云つた。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
白良(しらら)の ましららの浜、まことしろきかも。驚くと、我が見ると、まことしろきかも。踏みさくみ、手(た)ぐさとり、あなあはれ、まことしろきかも。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
僕の家族たちは僕の死後には僕の遺産に手(た)よらなければならぬ。僕の遺産は百坪の土地と僕の家と僕の著作権と僕の貯金二千円のあるだけである。
或旧友へ送る手記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今度は高くて容易に手の届きそうもない枝をしきりに手(た)ぐろうとしては失敗しているのを、私は根気よく、むしろ面白(おもしろ)いものでも見ているように見入っていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
前者については一つ一つの温泉の詳しい事は分らないが各温泉の特徴については明瞭な知識を与え選択の手(た)よりになる。後者ではその温泉と他との比較は明らかにならない。
(いけない)と貝十郎は帯を解く手を止め、その手で大小を手(た)ばさんだ。与力としての良心が、にわかに閃めいたからである。襖をあけて廊下へ出た。しかしすぐによろめいた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たぶん彼女を突(つっ)ついたら、何かしら手(た)ぐり出す方法があるかも知れないという位の考えなのだろうが、今頃こんな人を、ほじくり出した処で、どうせ何も出やしないと思ったので
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
然し思いかけない折に、新聞が相識る人の訃(ふ)を伝えたのも二三に止まりません。すべてが戦時気分でした。然(そう)です。世界戦に日本は手(た)ずさわるとは云う条(じょう)、本舞台には出ませんでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
沼(ぬま)には、ぬなは、ひつじ草、たぬき藻、杉藻など、一面に生(は)えて、うつかり蓴菜の中へ漕ぎ入るとあとへも先へも動(うご)かなくなる。そんな時は手を延ばして蓴菜の蔓(つる)を手(た)ぐつて進んで行く。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
巌門(いはと)破(わ)る手(た)力もがも。嫋(たわや)き女(をみな)にしあれば、すべの知らなく
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
手(た)ぢからのよわや十歩(とあし)に鐘やみて桜ちるなり山の夜の寺
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子、増田雅子、与謝野晶子(著)
剣(つるぎ)太刀(たち)腰に取佩(とりは)き、古(いにしえ)の本(ふみ)を手(た)にぎり、国へかへらす
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
斧の柄(え)を手(た)握(にぎ)りもちて、肩かゞむ杣(そま)の工(たくみ)を
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
われからならぬ手(た)にぎりや、——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
女は昂(たかぶ)つた男の言出しを手(た)ぐつて自分の本心を打明けようとも思つたが、それが果していいか惡いか一寸分らなくなつた。で、先づかう云つた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
現に短歌は発句のやうに季題などに手(た)よつてゐない。これは何も発句よりも十四音だけ多いのにはよらぬ筈である。
発句私見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
高蔵人は身拵(みごしらえ)凛々(りり)しく、両刀を手(た)挟んだ上に、六尺柄皆朱(かいしゅ)の手槍を提(ひっさ)げて、相生総左衛門の屋敷に忍び込みました。
その上にたって、棹(さお)を手(た)ぐってくるふしぎな男はたれ? 敵か味方か、ふたりは目をみはって、闇(やみ)をすかした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは空想好きの私のよろこんで引きうけた、娘時代の仕事のひとつであった習慣からでもあろう。ときものの糸と共に、つきない空想を、とりとめもなく手(た)ぐりだし楽しんでいたのである。
処(ところ)で、今度、隅田川両岸(りょうがん)の人払(ひとばらい)、いや人よせをして、件(くだん)の陣羽織、菊綴、葵紋服(あおいもんぷく)の扮装(いでたち)で、拝見ものの博士を伴ひ、弓矢を日置流(へぎりゅう)に手(た)ばさんで静々(しずしず)と練出(ねりだ)した。飛びも、立ちもすれば射取(いと)られう。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
がその時はその捕り縄、ちゃアんとふところへ手(た)ぐられていた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
汗沁むる木彫の鷽(うそ)は手(た)にぎりて朝行きし前を夕かへりをり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
古(ふ)りし代(よ)埴安姫(はにやすひめ)が手(た)すさびより
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いでたちの旅路の糧(かて)を手(た)握(にぎ)りて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
僕はこの商標に人工の翼を手(た)よりにした古代の希臘人を思い出した。彼は空中に舞い上った揚句、太陽の光に翼を焼かれ、とうとう海中に溺死(できし)していた。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
血みどろな合掌と、銀五郎が最期の声を新たに思いうかべる時——またかかる夜かれの菩提心(ぼだいしん)は、知らず知らずにも一節切(ひとよぎり)の一曲をその霊に手(た)むけさせる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次が声を掛けるまでもなく、八五郎はもうそれを手(た)ぐり出して居ります。
それからそれへと手(た)ぐりだした記事がそれに続いていた。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
みどり児が力こめたる掌(たなひら)に一つ手(た)にぎる小さきかやの実
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
僕はこの商標に人工の翼を手(た)よりにした古代の希臘(ギリシヤ)人を思ひ出した。彼は空中に舞ひ上つた揚句、太陽の光に翼を焼かれ、とうとう海中に溺死してゐた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鹿角(しかづの)の前立(まえだ)ち打った兜(かぶと)に、黒革のよろいを着、大槍を手(た)ばさんで、馬上に風を切らせて来た武者振りは、さすがに勝豊の麾下(きか)中第一の剛の者と見えたが、いかなる大勇も
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「有難う、先づ差當りそれを手(た)ぐつて見るとしませう。おい、八」
蕃童は弓矢手(た)ばさみ
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
(それは母胎を離れた後、「唯我独尊」の獅子吼(ししく)をした仏陀よりもはるかに手(た)よりのないものである。)
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
両刀は手(た)ばさんでいるが、どこか華奢(きゃしゃ)な風俗、銀砂子(ぎんすなご)の扇子(せんす)を半開きにして口へ当て
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は八五郎の手(た)ぐり出した綱を、丁寧に調べ始めました。