悉皆みんな)” の例文
そしてお客の持つて来た鱒の子は、悉皆みんな湖水のなかへ放してつたら、幾年かの間に湖水は鱒で一杯になるだらうと言ひ/\してゐた。
だが、あんまり威張ゐばれないて、此樣こんくるま製造こしらへては如何どうでせうと、此處こゝまで工夫くふうしたのはこのわたくしだが、肝心かんじん機械きかい發明はつめい悉皆みんな大佐閣下たいさかつかだよ。
それを晩秋ばんしうそら悉皆みんなるので滅切めつきりえる反對はんたい草木くさきすべてが乾燥かんさうしたりくすんだりしてしまふのに相違さうゐないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あア悉皆みんな内へいれちゃったよ。外へ置くとどうも物騒だからね。今の高価たかい炭を一片ひときれだって盗られちゃ馬鹿々々しいやね」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こんな多勢の人達が悉皆みんな出征なさる方に縁故のある人、別離わかれを惜しみに此処に集ってお居でなさるのかと思ったら、私は胸が一杯になりましたの。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
ともう一人、図体のでかいのが進み寄った。悉皆みんなで六人いた。相撲を取りながら待っていたのだった。早川君と草刈小僧の大将の間に論判が始まった。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
どうやらこれは隠語を隠した独楽は、あれ以外にも幾個いくつかあるらしく、それらの独楽を悉皆みんな集めて全部すっかりの隠語を知った時、はじめて秘密が解けるものらしい。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
京都きやうやら奈良の堂塔を写しとりたるものもあり、此等は悉皆みんな汝に預くる、見たらば何かの足しにもなろ、と自己おの精神こゝろを籠めたるものを惜気もなしに譲りあたふる
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
俺の旦那は此位えらい方だから家内うちゞうの方が揃つて悉皆みんな豪いや。別して感心なのは嬢様だ子。齢は十九の厄年で名は妙子たえこと仰しやる。君達に見せたいほどな好い御容貌ごきりやうだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「どうせ貴方あなたの請求通り上げる訳には行かないんです。それでもありったけ悉皆みんな上げたんですよ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わしア気も違いません、もとより貴方あんたさまに斬られて死ぬ覚悟で、承知して大事でえじのお皿を悉皆みんな打毀ぶちこわしました、もし旦那さま、私ア生国もとおし行田ぎょうだの在で生れた者でありやすが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
みんな文句云うところアねえ、在りったけの石炭すみ悉皆みんな汽鑵かまにブチ込むんだ。それで足りなけあ船底ダンブロの木綿の巻荷ロールをブチ込むんだ。それでも足りなけあ俺から先に汽鑵かまの中へい込むんだ。ハハハ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ええ悉皆みんなつてしまへ!」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はるかにぽつり/\とえる稻刈いねかり百姓ひやくしやう㷀然ぽつさりとしたかれからかくれようとするやう悉皆みんなずつとひくかゞめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それが酒断さけだちの水であらうと、塩であらうと、莫児比涅モルヒネであらうと、悉皆みんな持合せのおせつかいからする事なので、男は目をつむつて謹んでそれを戴かなければならぬ。
詐偽も糞もあるもんか。商人は儲けさへすりやア些と位人に迷惑を掛けてもかまはんのだ。今の大頭株あほあたまかぶを見給へ、紳商面をして澄ましてやがるが、成立なりたち悉皆みんな僕等と仝じ事だ。
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
帯もくしこうがいのようなものまで悉皆みんならねえからわれ一風呂敷ひとふろしき引纒ひんまとめて、表へ打棄うっちゃっちまえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「俺が死んだらオイ高萩の、俺の縄張俺の乾兒、お前悉皆みんな世話を見てくれ」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かれ悉皆みんなさわいで自分じぶんはらりるだけのすし惚菜そうざいやらをはしはさんでさかづきへはれようとしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わしが一日怠けでもしようもんなら、京の奴ら、悉皆みんなぐしよ濡れになるやらう。可哀かあいさうなもんや。」
からすみ又は雲丹うにのようなものもあるから、悉皆みんな出してずん/\と飲んで、菊が止めてもくな、然うして無理に菊にあいをしてくれろと云えば、仮令たとえいやでも一盃ぐらいは合をするだろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の金は貴方あんた悉皆みんな預けて置き、わし独りで稼ぎ出しやす、どうか此の金を月々幾許いくらという細くも利を産み出すよう一つ御工夫なすって下さいやし、其の内二十両だけお借り申していえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
アノ此んな大切だいじなお金をつかうようなものは愚をきわめたんだって、それだからとても此の身代は譲れないから、てまえの親父は寄せ附けないって、アノ坊が大きくなると此の身代は悉皆みんな坊にやるから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ヤー這出はひだして竹の皮をひろげやアがつた、アレだけ悉皆みんなつちまうのか知ら。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
番頭さんに向ってそんな事をいっては済まないじゃないか、鳶頭、お前もさぞ腹が立つだろうが、何卒どうぞ我慢をしておくれ、悉皆みんな私が呑込んでいるから、私は決して粂之助の仕業しわざとは思わないけれども
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
水夫「荷が悉皆みんな這入らねえじゃア出しません」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)