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徹
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こた
ふりがな文庫
“
徹
(
こた
)” の例文
今までは気もつかなかったが、部屋へ戻って来ると一時に寒さが身に
徹
(
こた
)
えてきてブルブルと胴震いがして、急には口もきけなかった。
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と岸本は泉太を言いなだめたが、しかしこの子供の訊く「第二の母さん?」は、誰にそんなことを訊かれたよりも強く岸本の胸に
徹
(
こた
)
えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は自分の罪が、ヒシ/\と胸に
徹
(
こた
)
へて来るのを感じた。自分の野卑な、狡猾な行為が、子の上に
覿面
(
てきめん
)
に報いて来たことが、恐ろしかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
妙なことだが、その言葉は痛く私の心に
徹
(
こた
)
へる。何故だらう? あなたがそれ程迄に熱心な、一筋な心で云つたからだと思ふ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「永代からここまで来るうちに、寒さが骨身に
徹
(
こた
)
えるよ。もう一度ドンブリやらかす気にはなるめえ、北風がいい意見だよ」
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
『今の決議は我々朝寢坊には大分
徹
(
こた
)
へるんだ。九時といふと、僕なんかまだ床の中で新聞を讀んでゐる時間だからねえ。』
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と思うと、すらりと
揺
(
ゆら
)
ぐ
茎
(
くき
)
の
頂
(
いただき
)
に、心持首を
傾
(
かたぶ
)
けていた細長い一輪の
蕾
(
つぼみ
)
が、ふっくらと
弁
(
はなびら
)
を開いた。真白な
百合
(
ゆり
)
が鼻の先で骨に
徹
(
こた
)
えるほど匂った。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生れながら気随気ままに育って、長じてもなお、人を人とも思わなかった曹操も、こんどという今度はいたく骨身に
徹
(
こた
)
えたものがあるらしかった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「躰も無論惡いが」と暫らくして友は
思出
(
おもひだ
)
したやうに、「それよりか、
精神上
(
せいしんじよう
)
の
打撃
(
だげき
)
はもツと/\胸に
徹
(
こた
)
へるね。」
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
思えば思うだけ、察すれば察するだけ、余は益々秀子の傷わしさが身に
徹
(
こた
)
え何が何でも此の儘に捨て置く訳には行かぬ、余自らも塔の底へ降って見よう
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
貴方のこわい顔でそこ、そことさされ、その地点の性質もよく見きわめたし、足がかりの刻みつけかたも、分っていたところと一層ウム、成程と身に
徹
(
こた
)
えた。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
よもや忘れは成るまじとかき
口説
(
くどか
)
れて千太郎は何と答へも
面目
(
めんぼく
)
なく
消
(
きえ
)
も入たき
風情
(
ありさま
)
なり
稍
(
やゝ
)
有
(
あつ
)
て久八に向ひ段々の
異見
(
いけん
)
我が
骨身
(
ほねみ
)
に
徹
(
こた
)
へ今更
詫
(
わび
)
んも樣なし以後は心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
物の響といううちに、やっぱりそれは
活
(
い
)
ける物のなせる声でありましたけれど、前のとは違って人の
腸
(
はらわた
)
にピリピリと
徹
(
こた
)
えるような勇敢にして
凄烈
(
せいれつ
)
なる叫びでありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ドユパンにこの問を出された時、己は骨に
徹
(
こた
)
へるやうな気味悪さを感じた。そして云つた。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
骨身に
徹
(
こた
)
える寒さに磯は大急ぎで新開の通へ出て、七八丁もゆくと金次という仲間が居る、
其家
(
そこ
)
を
訪
(
たず
)
ねて、十時過まで金次と将棋を指して遊んだが
帰掛
(
かえりがけ
)
に一寸一円貸せと頼んだ。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と一時の談話もお登和嬢の心には激しく
徹
(
こた
)
えけん、嬢は
涕
(
はな
)
をすすらせて答だになし得ず。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
いら/\してゐる彼には、子供がいら/\してゐる訳が胸に
徹
(
こた
)
へるやうだつた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
さは
謂
(
い
)
へ、人の親の切なる
情
(
なさけ
)
を思へば、
実
(
げ
)
にさぞと肝に
徹
(
こた
)
ふる
節無
(
ふしな
)
きにもあらざるめり。大方かかる筋より人は恨まれて、
奇
(
あやし
)
き
殃
(
わざはひ
)
にも
遭
(
あ
)
ふなればと
唯思過
(
ただおもひすご
)
されては
窮無
(
きはまりな
)
き
恐怖
(
おそれ
)
の募るのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
秋風の身にしみ/″\と感じて
有漏
(
うろ
)
の身の換へ難き恨み、今更
骨身
(
ほねみ
)
に
徹
(
こた
)
へ候。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
その時さながら身を
熬
(
い
)
るような悩ましさを覚えたことがあった。それを思うても、何が苦しいといって恋の苦しみほど身に
徹
(
こた
)
えるものはない。どうか家におってくれて、すぐ逢えればよいが。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
寐
(
いね
)
ても
寐
(
ね
)
つかれずや、コホンコホンと
咳
(
しはぶ
)
く声の、骨身に
徹
(
こた
)
へてセツナそうなるにぞ、そのつど少女は、慌てて父が枕
上
(
もと
)
なる洗ひ洒しの
布片
(
きれ
)
を取りて父に与へ、赤きものの交りたる啖を拭はせて
小むすめ
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
そう云う時が一番寒いのですが、それでもロシアのように、町を歩いていて鼻が腐るような事はありません。煖炉のない家もないし、毛皮を著ない人もない位ですから、寒さが体には
徹
(
こた
)
えません。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それへ
徹
(
こた
)
えてリ——ンと余韻が幽かながらもしたのだろう。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人の胸に
徹
(
こた
)
えさせるには、自然の胸から9685
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
彼は自分の罪が、ヒシ/\と胸に
徹
(
こた
)
えて来るのを感じた。自分の野卑な、
狡猾
(
こうかつ
)
な行為が、子の上に
覿面
(
てきめん
)
に
報
(
むく
)
いて来たことが、恐ろしかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
其秘密を
蔵
(
かく
)
して居る以上は、
仮令
(
たとひ
)
口の酸くなるほど他の事を話したところで、自分の真情が先輩の胸に
徹
(
こた
)
へる時は無いのである。無理もない。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
平次とやら、その方の言葉はいちいち胸に
徹
(
こた
)
えたぞ——何を隠そう、腹黒い勇三郎様に、御家督を継がせる心外さに、これはみんなこの石沢左仲のした事だ。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
或る程度まで一般となった現代の消耗が身に
徹
(
こた
)
えて徹えてやり切れず、何か確乎とした、何か新しいものを見出さなくてはやり切れながっている人たちもきっとある。
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
高橋伊勢守と清川八郎とが
馳
(
は
)
せつけた時は、新坂下は戦場のような光景で、気合の声は肉を争う猛獣の
吼
(
ほ
)
ゆるが如く、谷から山に
徹
(
こた
)
える、雪と泥とは
縦横
(
じゅうおう
)
に踏みにじられた中に
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呼吸が静まるのと正比例して、子供の泣き声はひし/\と彼の胸に
徹
(
こた
)
へだした。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
「雪か、わが
鬢髪
(
びんぱつ
)
か。思えば
朕
(
ちん
)
も老いたが、また
帷幕
(
いばく
)
の諸大将も、多くは年老い、冬の陣も耐うるに
徹
(
こた
)
えてきた。しかし関興、
張苞
(
ちょうほう
)
の若いふたりが役立ってきたので、朕も大いに気づよく思うぞ」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
群集
(
くんじゆ
)
は
自
(
おのづか
)
ら声を
歛
(
をさ
)
めて肝に
徹
(
こた
)
ふるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
己は真と美とが骨身に
徹
(
こた
)
えて
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
船頭や、
橇曳
(
そりひき
)
や、まあ下等な労働者の口から出る言葉と溜息とは、始めて其意味が
染々
(
しみ/″\
)
胸に
徹
(
こた
)
へるやうな気がした。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
落選した失望よりも、自分の浅ましさが、ヒシヒシ骨身に
徹
(
こた
)
えた。札が、二三人に
蒐
(
あつ
)
まっているところを見ると、みんな親分の為を計って、浅や喜蔵に入れたのだ。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平次とやら、其方の言葉は一々胸に
徹
(
こた
)
へたぞ——何を隱さう、腹黒い勇三郎樣に、御家督を繼がせる心外さに、これは皆なこの石澤左仲のした事だ。伊之助の
歸途
(
かえへり
)
を
銭形平次捕物控:051 迷子札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一つ撲られたその痛さがよほど
徹
(
こた
)
えると見えて、飛びついて来たり、組みついて来たりする奴等が、一つ撲られると、二三間も向うへケシ飛ばされて起き上れない有様であります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
胸までは
徹
(
こた
)
えない。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
言葉尻
(
ことばじり
)
に力を入れて
強請
(
ねだ
)
るようにするその母親のない子供の声は、求めても求めても得られないものを求めようとしているかのように岸本の耳に
徹
(
こた
)
えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
我鬼!
我鬼
(
エゴイスチツクデモン
)
! さうした言葉が彼のその時の心に、ヒシ/\と
徹
(
こた
)
へて来るのを覚えた。
我鬼
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
涙ながらに言う老母の言葉の、妙に
辻褄
(
つじつま
)
の合った真実性が、八五郎の胸に
徹
(
こた
)
えます。
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
思い余って途方に暮れてしまって言わずにいられなくなって出て来たようなその声は極く小さかったけれども、実に恐ろしい力で岸本の耳の底に
徹
(
こた
)
えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夫人の非難の少くとも半分は胸にヒシヒシと
徹
(
こた
)
えるので、心はしめ木にかけられたように苦しく、なぜこんな生活に、足を踏み入れたのだろうかと、我が身があさましく思われて
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
涙乍らに言ふ老母の言葉の、妙に辻褄の合つた眞實性が、八五郎の胸に
徹
(
こた
)
へます。
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
強いにおいを放つ土中をめがけて佐吉らが
鍬
(
くわ
)
を打ち込むたびに、その鍬の響きが重く勝重のはらわたに
徹
(
こた
)
えた。一つの音のあとには、また他の音が続いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
五百何十両と絞られたのが、権三郎にとっちゃ、骨身に
徹
(
こた
)
えるほど
口惜
(
くや
)
しかったのさ、——もっとも、武芸自慢が
嵩
(
こう
)
じて遊び人のくせに、武家風に化けて辻斬などを道楽にしたのが破滅の
因
(
もと
)
さ
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
歩けば歩くほど彼は支庁の役人から戸長免職を言い渡された時のぐっと
徹
(
こた
)
えたこころもちを引き出された。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
殊に丑松の
同情
(
おもひやり
)
は言葉の節々にも表れて、それがまた蓮太郎の身に取つては、
奈何
(
どんな
)
にか胸に
徹
(
こた
)
へるといふ様子であつた。其時細君は籠の中に入れてある柿を取出した。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その朝から三吉はおげんの側で楽しい暑中休暇を送ろうとして朝飯でも済むと
復
(
ま
)
た直ぐ
屋外
(
そと
)
へ飛び出して行ったが、この小さな甥の子供心に言ったことはおげんの身に
徹
(
こた
)
えた。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
思わず出るため息と共に、彼は身に
徹
(
こた
)
えるような冷たい山の空気を胸いっぱいに呼吸した。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
徹
常用漢字
中学
部首:⼻
15画
“徹”を含む語句
透徹
貫徹
徹宵
徹夜
夜徹
澄徹
徹頭徹尾
徹底
一徹
徹底的
見徹
虎徹
大悟徹底
冷徹
押徹
石徹白
一徹者
途徹
徹書記
明徹
...