希臘ギリシャ)” の例文
二年後には、希臘ギリシャ古代の彫刻家を訳して仕舞えるだろうから、そして三年目には、又何か一寸した創作でもまとめて見たい気で居る。
偶感 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わたしはつい四五日まえ西国さいこく海辺うみべに上陸した、希臘ギリシャの船乗りにいました。その男は神ではありません。ただの人間に過ぎないのです。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
属名の Miscanthus は mischos すなわち梗と anthos すなわち花との二つの希臘ギリシャ語から成ったもので
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
美の女神エヌスの海上出現を希臘ギリシャの海から、伊豆の浜辺に移し説くものがあっても、あながちそれを荒唐無稽だとは言わぬであろう。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蓮切鼻の人は死ぬまで蓮切鼻でいる。希臘ギリシャ型のを授かった人はねむっている間も希臘型というのが原則として認められております。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は写真の上で、遠い希臘ギリシャ羅馬ローマの神殿のあとにそそり立つ円柱をみたことがあるが、ああいう石造の感じはどんなものであろうか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
例えば、彫刻は何といっても希臘ギリシャ時代が最も発達していた。併しながら、彫刻という型の芸術は現在にも滅びずに残っている。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
鴎外は殺されても、予は決して死んでは居ない。予はあえて言う。希臘ギリシャ語に「エピゴノイ」ということがある。猶此に末流と云うがごとしだ。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
原子爆弾は近代人類の希臘ギリシャ以来の物質の概念を変更した大発明であって、鳥の先生や除虫菊じょちゅうぎくの親玉と比較すべきものではない。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
希臘ギリシャ人・東邦人レヴァンテン・あらぶ・埃及エジプト人・とるこ人・シリヤ人・回教を信じようとしない「西方から来た白い悪魔」たち・遊牧の貴族べずいん人。
けだし西洋の文学史は、古代の叙事詩や劇詩に始まり、小説等の散文学は、すべてこの希臘ギリシャ詩の精神から、後に発展したものであるからだ。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
音楽を伝統とする降矢木の標章としての三角琴プサルテリウム筋彫すじぼりにされ、その上に、鍛鉄製の希臘ギリシャ十字架と磔刑耶蘇はりつけやそが載せられてあった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「牛飼じゃありませんよ。牛飼やいろはの亭主じゃありません。その節は希臘ギリシャにまだ牛肉屋が一軒もない時分の事ですからね」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
当時の慷慨家をして「彼巍然ぎぜんたるニコライ会堂」あるいは「東京市中を睥睨へいげいする希臘ギリシャ教会堂」と慷慨せしめたる、四百年前の最大」建築なり。
四百年後の東京 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かの女は希臘ギリシャ神話がこんなにも直助の興を呼んで話させたのが不思議でかの女の河に対する神秘感が一そう深まるのだつた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
そのままって石となるという希臘ギリシャの怪物メズサの眼さえこれには及ぶまいと思われるほどに鬼気を含んでいるのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは、ガードナーという人の書いた「希臘ギリシャ彫刻手記」という本であった。金色こんじきの唐草模様か何かの表紙の付いた六、七百ページの本であった。
出世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
故に、かつてマセドニヤの使節は希臘ギリシャの「エートリヤン」会議で他人種、即ち野蛮人バーバリヤンと我が希臘ギリシャ人とは永久に戦争すべしと叫んだ。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
民本主義といえばその昔にさかのぼれば、西洋ならば少くとも希臘ギリシャの歴史にまで達してそのもとを探り、東洋では堯舜の時代にまでも上り得るのである。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さながら希臘ギリシャか古羅馬ローマ貴族の邸にでも佇んで在りし昔の豪華なるおもかげでもしのんでいるかのような気持がしてくるのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
伝へにれば、彼女は羅典、希臘ギリシャをはじめ、ヘブライ、カルデヤ、アラビヤ、仏蘭西フランス伊太利イタリヤと、都合七つの外国語に通暁つうぎょうしてゐたことになつてゐる。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
夜になると弟を連れて温泉へやって来る。すこやかな裸体。まるで希臘ギリシャの水瓶である。エマニュエル・ド・ファッリャをしてシャコンヌ舞曲を作らしめよ!
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
後に希臘ギリシャ人がスキュテイア人と呼んだ未開の人種の中でも、この種族は特に一風いっぷう変っている。彼等かれらは湖上に家を建てて住む。野獣やじゅう襲撃しゅうげきけるためである。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
どうもマセマチカルの考えの薄い人は中々奥妙の理を急に会得する事がかたいよ。ダカラ希臘ギリシャの哲学者はまず哲学を学ぶ前に数学をやれと弟子達に教たのだよ。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かけた。それも解けなければ食ってしまうという条件つきだからかなわない。君も希臘ギリシャにいたら食われたろうね
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
コリスと云うのは希臘ギリシャ語で、その昆虫の名前だと、或る大学生が何時かエミ子に教えてくれたのです。
四月馬鹿 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
頼家は悲劇の俳優やくしゃです。悲劇と仮面めん……私は希臘ギリシャの悲劇の神などを聯想しながら、ただ茫然ぼんやりと歩いて行くと、やがて塔の峰のふもとに出る。畑の間にはまばらに人家がある。
希臘ギリシャ印度の古い哲学より欧洲近世の科学に到るまで、総て要するに男子が自らまったかろうとする努力の表現である。女子はほとんどこれらの文明にあずかっていなかったといってよい。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
母上は自分でも分らない不思議な望みと恐れとで始終心をなやましていた。その頃の母上は殊に美しかった。希臘ギリシャの母の真似まねだといって、部屋の中にいい肖像を飾っていた。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
希臘ギリシャの哲学者ヘラクレイトスが「万物は流転し何物も止まることなし」Alles fliesst und nichts hat Bestand. といったように
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
あるとき希臘ギリシャ羅馬ローマの古典の英訳物を五、六十冊ほど取揃えてこの本屋へ売ったことがあった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
英語はもとより、仏蘭西フランスをどうの、独乙ドイツをこうの、伊太利イタリー語、……希臘ギリシャ拉甸ラテン……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平田禿木とくぼく君も言うように、上田敏君は「文学界」が生んだ唯一の学者である。その上田君の学者的態度をもってしてもこの国独自な希臘ギリシャ研究を残されるところまで行かなかったのは惜しい。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は正三が手紙を書きかけている机のかたわらに坐り込むと、そばにあったヴィンケルマンの『希臘ギリシャ芸術模倣論もほうろん』の挿絵さしえをパラパラとめくった。正三はペンをくと、黙って兄の仕事を眺めていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
俺れは希臘ギリシャ人が怖い、たとえやつらが、どれだけ贈物を持ってきたって、俺れゃ希臘人が怖い。ローマ人でない支那人にとっては、その希臘人は亜米利加人じゃないか! と山崎は考えた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
歓喜の最中夢中独待の下品な言葉をもらすアングロサクソン種の和蘭オランダ人、オットマン帝国の土耳古トルコ人からは古代のシステムの掟を、アイオニア民族の希臘ギリシャ人からは商売の極意を教わりました。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
古代希臘ギリシャなど、あらゆる基督教国の歴史に類のない幸福な国であった。
論語とバイブル (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
さながら希臘ギリシャの彫刻か奈良の仏像か何かを扱うようにしてあるのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鼻はそんなにひどくはありませんわ。段なんかつかないで、割とスラッとしていますの。ちょっと希臘ギリシャ型といったふうなの。でも、そんなに高いほうではありませんわ。あまり美しく想像なさると損を
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
希臘ギリシャの美術はアポロンを神となしたる国土に発生し、浮世絵は虫けら同然なる町人ちょうにんの手によりて、日当りしき横町よこちょう借家しゃくやに制作せられぬ。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに較べて見ると、青み掛かって白い、希臘ギリシャ風に正しいとでも云いたいような奥さんの顔は、殆ど masqueマスク である。仮面である。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
希臘ギリシャの哲学者などは存外迂濶うかつな事を云うものだね。僕に云わせると天下に恐るべきものなし。火にって焼けず、水に入って溺れず……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雪解けがあったりして、スポウツに出られない日がつづくと、彼はもっと忙しかった。ナニイのブリッジの相手はこの希臘ギリシャ人に一定していた。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
第一既に、文学の起原に於ける歴史からちがっているのだ。西洋の文学史は、前言う通り希臘ギリシャの叙事詩等から起原して来た。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
無口で快活でとき/″\瓢軽ひょうきんなことを言います。薄桃色にやゝ青味のさしているいゝ身体をして胸の筋肉なぞは希臘ギリシャ彫刻のようにくびれています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
むしろ西欧の古典美術にあこがれ、伊太利イタリーへだけは是非とも行きたいと思っていた。希臘ギリシャやルネッサンスの彫刻の方がはるかに私の心をひいたのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
自分に分らないこんざつした気持を希臘ギリシャ時代の絵のような不思議なこころもちでソーッとのぞいて居る。しずけさ、——私の頬にはまだ涙が流れて居る。
つぼみ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ところでバーベージ(エドマンド・キーン以前の沙翁劇名優)は、沙翁シェークスピアの作中に律語的な部分、すなわち希臘ギリシャ式量的韻律法が多いのを指摘していますね。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
基督キリスト教国たる欧米諸国は東洋の異教国と異なり、女子の地位をすこぶる高めて認めているようだけれども、これを希伯来ヘブライ希臘ギリシャ羅馬ローマの古代にさかのぼってみれば
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
希臘ギリシャ羅馬ローマか古代埃及エジプトか? それはわからなかったが、いずれは由緒ある貴族の公達きんだちか姫君なのであったろう。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)