)” の例文
呉は、大江の水利を擁し、地は六郡に、は三こうにふるい、文化たかく産業は充実し、精兵数十万はいつでも動かせるものとみられます。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王朝はすでに地方官が武力を用いてひろめはじめた時代になっていた。陸奥守むつのかみから常陸介ひたちのすけになった男の富などがそれである。
三人は順々じゅんじゅんにならんで、ばってねりあるき、めいめい自分の行進曲マーチをもっていた。もちろん、いちばん立派りっぱなのがクリストフのものだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そう云えばかつい肩のあたりや、指節ゆびふしの太い手の恰好かっこうには、いまだ珊瑚礁さんごしょうしおけむりや、白檀山びゃくだんやまの匂いがしみているようです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
内乱の起る場合 は法王がかくれたとか、あるいはなお幼くしてまつりごとみずからすることが出来んという時に当り、ある大臣がをほしいままにするとか
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ある瞳にきっと射られて、今物語った人とも覚えず、はっと思うと学生は、既に身を忘れ、名を忘れて、ただここのツばかりの稚児おさなごになった思いであった。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると少年の面上には明らかに反抗の色があがった。言葉は何も出さなかったが、眼のうちにはをあらわした。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼が家の子女は何処の子女よりも岩畳である。彼の家の黒猫は、小さな犬より大きく、村内の如何なる猫も其に恐れぬものは無い。彼が家の麦からのたばは、他家よその二倍もある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ふるって驀地ばくちに進めとえたのみである。このむさくろしき兵士らは仏光国師の熱喝ねっかつきっした訳でもなかろうが驀地に進むと云う禅機ぜんきにおいて時宗と古今ここんそのいつにしている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さすがに衛青にはこの老将をいたわる気持はあったのだが、その幕下ばっかの一軍吏ぐんりとらを借りて李広をはずかしめた。憤激した老名将はすぐその場で——陣営の中でみずから首ねたのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そのオキレの金角とならび
「虎のを借る羊じゃ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たのもしくある瞳に
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
なにをいっても、伊那丸は黙然もくねんと、をみださずにすわっていた。ただこころの奥底まで見とおすような、つぶらなひとみだけがはたらいていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも私にはその周囲さえ、決して頼もしい気は起させなかった。私のうしろにあるとこには、花もけてない青銅のかめが一つ、かつくどっしりと据えてあった。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この静寂さ、いきなり声をかけて行違ゆきちがったら、耳元で雷……はがありすぎる、それこそ梟が法螺ほらを吹くほどに淑女を驚かそう、黙ってぬっと出たら、狸が泳ぐと思われよう。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半滴はんてきのひろがりに、一瞬の短かきをぬすんで、疾風のすは、春にいて春を制する深きまなこである。このひとみさかのぼって、魔力のきょうきわむるとき、桃源とうげんに骨を白うして、再び塵寰じんかんに帰るを得ず。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信長の亡きあと、かれのひとみは、清洲きよす会議でも、満座を圧し、山崎、しずたけの合戦でも、柴田、滝川のはいをまったく射すくめて来たものだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸沢はセルのはかまの上にかついひじを張りながら、ちょいと首を傾けた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
卓上を見遣みやった謙譲な目に、何となくが見える。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、それを知らなかった自分が、里の者から揶揄やゆされている気がしたので、毒づきながら、そばの壁にってある一つの絵をじろと見つめた。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霜より白いひげがあらわれる。心なしか去年あたりより幾ぶん肉のげたかに見える眼もとではあるが、けいとしたはむしろそれゆえに多くを加えている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくろいつばさを、左右にひろげるときは、一じょうあまりの巨身きょしんとなり、銀のつめをさか立てて、まっ赤な口をあくときは、空とぶ小鳥もすくみ落ちるほどながある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とそのすきに、小太刀こだちをかまえて、いいはなった伊那丸には、おさないながらも、天性のがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ありげにっても、ひじを張っても、肩相からると、だめらしい。……そこで和尚の肩相はいかにと、常々、見ておると、円光のごとく、まろい、やわらかいものじゃ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時政の眼には、親のと、愛情とが、矛盾したまま、ぎらぎらしていた。むりやりにでも、自分の意志になびかせてしまおうとする男親の姿が、時経つほど、たくましく見えて来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われながら頑迷がんめいには思われたが、時政は、厳父のを、振りかざさずにいられなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)