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嗄
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しゃが
ふりがな文庫
“
嗄
(
しゃが
)” の例文
と船長が
嗄
(
しゃが
)
れた声でプッスリと云った。同時に
眉
(
まゆ
)
の間と
頬
(
ほっ
)
ペタの
頸筋
(
くびすじ
)
近くに、新しい皴が二三本ギューと寄った。冷笑しているのだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「苦しい!
麻痺
(
しびれ
)
る! ……助けて助けて!」と
嗄
(
しゃが
)
れた声で叫んだが、見る見る顔から血の気が消え、やがて延びて動かなくなった。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この最後の言葉に野田はすこぶる面食らって、しばし言葉が胸につかえて出てこなかったらしいが、やがて決心して
嗄
(
しゃが
)
れた声で言った。
五階の窓:06 合作の六(終局)
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
その中の一人——どの男だったかわからない——が
嗄
(
しゃが
)
れた叫び声をあげながら跳び立って、銃を肩にあてたかと思うと、一発ぶっ放した。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
さもなかったなら、
木魂姫
(
こだまひめ
)
が
臥
(
ね
)
てゐる
其
(
その
)
洞穴
(
ほらあな
)
が
裂
(
さ
)
くる
程
(
ほど
)
に、また、あの
姫
(
ひめ
)
の
空
(
うつろ
)
な
聲
(
こゑ
)
が
予
(
わし
)
の
聲
(
こゑ
)
よりも
嗄
(
しゃが
)
るゝ
程
(
ほど
)
に、ロミオ/\と
呼
(
よ
)
ばうものを。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
▼ もっと見る
娘は隣室の合唱にもめげず手風琴の伴奏に合わせて、だいぶ
嗄
(
しゃが
)
れたコントラルトで、何やら下男くさい歌をうたっていた……
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
あの、どこから響き出して来るとも知れない呟くような唄の声、それは老婆のように
嗄
(
しゃが
)
れてもいれば、
嬰児
(
えいじ
)
のように未だ実が入らなくも聞える。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
云われるままに、レンズを受け取って、ガラスの表面を覗いた係長は、覗くが
否
(
いな
)
や、はじき返されたように、その側を離れて、
嗄
(
しゃが
)
れた声で叫んだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女はだんだん
嗄
(
しゃが
)
れたような声になりながらそれを
言
(
い
)
い
畢
(
お
)
えると、一種の微笑ともつかないようなもので口元を歪めながら、私をじっと見つめた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
が、不幸にしてそれが一度彼の口を出ると、何の意味も持っていない、
嗄
(
しゃが
)
れた
唸
(
うな
)
り声に変ってしまう。それほどもう彼は弱ってでもいたのであろう。
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
フローラは、心痛と恐怖のあまり、歯はがちがちと打ち合い、乾いた唇から、
嗄
(
しゃが
)
れたうめき声を立て続けるのだった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一気に言ったが、思いなしか、最後の言葉を言った時のその
嗄
(
しゃが
)
れた声は、恐怖に似た
畏敬
(
いけい
)
と憎悪に似た反撥との奇怪な混合を示しつつ、震えていた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
かと思うと二階の婦人病棟からは、
嗄
(
しゃが
)
れた
女性中音
(
コントラルト
)
が何やら野卑な歌を唄っているのが聞こえてくる。病人は耳を澄ましてこれらの声に聴き入っていた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
弥次馬の立騒ぐ声までも聞えるような気がして、ぶるぶるっと身ぶるいがした。『死刑にしろ、死刑にしろ』という
嗄
(
しゃが
)
れた叫び声が耳底でがんがん鳴った。
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
猪首
(
いくび
)
で赭ら顔で、それに大きな鼻、もじゃもじゃした黒い眉毛、胡麻塩の頬髯、ぶくぶく緊りのない肥りよう、軍人独特の太い
嗄
(
しゃが
)
れ声——こう並べて見ると
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
纏
(
まとま
)
りない雑談が、見も知らぬ乗客同士の間に交され始めたが、中で一きわ高い
嗄
(
しゃが
)
れ声が伸子の注意をひいた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
草をむしったような誠に
効能
(
きゝめ
)
の薄いようなものを呑ませる
中
(
うち
)
に、
終
(
つい
)
に息も絶え/″\になり、八月
上旬
(
はじめ
)
には声も
嗄
(
しゃが
)
れて思うように口も利けんようになりました。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ファンティーヌは逃げ出した、そして男の
嗄
(
しゃが
)
れた声を聞くまいとして耳を押さえた。男は叫んでいた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あらゆる監房からは、元気のいい声や、既に
嗄
(
しゃが
)
れた声や、中にはまったく泣声でもって、常人が監獄以外では聞くことのできない感じを、声の爆弾として打ち放った。
牢獄の半日
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「あんなにテムプル
関門
(
バー
)
★
から駈け通しで来たんだからなあ、お婆さん、お
前
(
めえ
)
を
平地
(
ひらち
)
へつれてくまではおれはお
前
(
めえ
)
の前脚を信用出来ねえよ。」とこの
嗄
(
しゃが
)
れ声の使者は
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
顔が黒く日に焦げて
皺
(
しわ
)
がよっている百姓の
嗄
(
しゃが
)
れた量のある声が何か答えているのがこっちまで聞えてきた。その声は、ほかの声を消してしまうように強く太くひびいた。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
彼の
嗄
(
しゃが
)
れた
叫声
(
さけびごえ
)
をききつけて一つの青い顔が書斎の戸口に現われた、シモン博士の光った眼鏡と心配気な眉毛が、博士はガロエイ卿の叫声をききつけた最初の人であった。
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
嗄
(
しゃが
)
れ声のきたない粗野な
賤
(
いや
)
しい
疥癬病
(
かいせんや
)
みの生徒らの中に交って、
衒学
(
げんがく
)
的な天才はだの
風貌
(
ふうぼう
)
をしているが、それらの悪童どもと口論し、時としては土方みたいになぐり合い
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
老人は
嗄
(
しゃが
)
れた低い声で云った。「……お鼓の音があまりにおみごとなので、ついお庭先まで誘われてまいりました。お邪魔になろうとは少しも知らなかったのでございます」
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
痩
(
や
)
せた、骨立った体を、わざとのように直立させ、
嗄
(
しゃが
)
れた声で、切口上で云うのであった。
蒼白
(
あおじろ
)
い顔にまばらに
髯
(
ひげ
)
の延びた陰影の多い表情の中に、人に親しまない
皺
(
しわ
)
があった。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「あ、あけちゃいけねえ。」という先生のひどく狼狽したような
嗄
(
しゃが
)
れた御返辞が聞えた。
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「甲板に出ろ!」と、誰か、
嗄
(
しゃが
)
れた声がどなった、「出ろ、ぐずぐずするな、出ろ——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
すると、彼女の裳の中で、時には
嗄
(
しゃが
)
れた叫び声、時にはまた激しい羽ばたきが聞こえる。マリイ・マドレエヌは一方の脚にからだの重みをかけるように、からだを屈めるのである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ほんとかや、ちっとも知らなかったでなあと、やがて母は少し
嗄
(
しゃが
)
れたこえで呟いた。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
饅頭虎が、
咄々
(
とうとつ
)
と
嗄
(
しゃが
)
れ声で物を言うのに対して、指無しの権は、ねっちりした、しかし、突き刺すような皮肉な言葉をつかった。父は、はじめのうちは、默って二人の口論を聴いていた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
飛ばしてきた古色
蒼然
(
そうぜん
)
たるロオドスタアがキキキキ……と止って、なかから、
噛
(
か
)
み
煙草
(
たばこ
)
を
吐
(
は
)
きだし、
禿頭
(
はげあたま
)
をつきだし、
容貌魁偉
(
ようぼうかいい
)
な
爺
(
じい
)
さんが、「ヘロオ、ボオイ」と
嗄
(
しゃが
)
れた声で、呼びかけ
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
博士は、安全灯の光を差し向けながら、不思議なものにでも出っくわしたように、ぼんやりとそれを眺めていたが、やがてクルリと後ろを振りむくと、聞きとりにくい、
嗄
(
しゃが
)
れたような低い声で
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
嗄
(
しゃが
)
れた声に力を入れて、絞り出すように云った「どうぞ」という言葉が、彼の胸から直ちに自分の胸へ伝わるような気がすると同時に、私の心の片隅のどこかが急に柔らかくなるような気がした。
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
楽隊と木笛と風船の音が世界を占め、それらに君臨して
螺旋
(
らせん
)
すべりの塔が高く中空を抜いて、
賭取人
(
ブック・メイカア
)
の色傘と黒板と
嗄
(
しゃが
)
れ声とにきょうの日はさんさんと降り——ジプシイの女がショウルをかけて
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
わたしは
間近
(
まぢか
)
にきこえる
嗄
(
しゃが
)
れ声のために突然われにかえった。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
お婆さんは、低い
嗄
(
しゃが
)
れた声で、障子にうつる影に呼びかけた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
嗄
(
しゃが
)
れた、空虚な
叫喚
(
きょうかん
)
が、暗闇の中に、ぶつかり合った。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と訴える千吉君の声は大分
嗄
(
しゃが
)
れていた。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
英二の声は、少し
嗄
(
しゃが
)
れていた。
火星の魔術師
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
振返って
嗄
(
しゃが
)
れ声で云った。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
声がすこし
嗄
(
しゃが
)
れたせいか、口調が一層、深刻に冴え返って来た。傍に立っている私までも、気絶することを忘れて傾聴させられた。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
連続して起こる意外の出来事に、今にも発狂しようとして、やっと正気を保っている松女が、
嗄
(
しゃが
)
れた声で叫んだのである。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは妙に切迫した、詰問に近い
嗄
(
しゃが
)
れ
声
(
ごえ
)
だった。お鈴は
襖側
(
ふすまがわ
)
に
佇
(
たたず
)
んだなり、反射的に「ええ」と返事をした。それから、——誰も口を利かなかった。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その声は
嗄
(
しゃが
)
れていてぎごちなくて、銹びた錠前のようだった。「
俺
(
わし
)
は
可哀
(
かええ
)
そうなベン・ガンだよ。この三年間も人間と口を利いたことがねえんだ。」
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
私の背後で、病人のすこし
嗄
(
しゃが
)
れた声がした。それが不意に私をそんな一種の
麻痺
(
まひ
)
したような状態から
覚醒
(
かくせい
)
させた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ひどく
嗄
(
しゃが
)
れた、そのため無理に発音するみたいな、早口に一句一句投げつけるその声で、朝野光男とわかった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
ヂュリ
hist
(
ヒスト
)
! ローミオー!
hist
(
ヒスト
)
!……おゝ、こちの
雄鷹
(
をたか
)
をば
呼返
(
よびかへ
)
す
鷹匠
(
たかじゃう
)
の
聲
(
こゑ
)
が
欲
(
ほ
)
しいなア、
囚人
(
とらはれ
)
の
身
(
み
)
ゆゑ
聲
(
こゑ
)
が
嗄
(
しゃが
)
れて、
高々
(
たか/″\
)
とは
能
(
よ
)
う
呼
(
よ
)
ばぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
その
嗄
(
しゃが
)
れ声の
走使
(
はしりづか
)
いは、それだけの食事をとった後に一つの長腰掛に窮屈そうに腰掛けながら、ついうとうとと居睡りしかけたが、その時、声高なざわめきの声が起り
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
その時背後で、異様な
嗄
(
しゃが
)
れ声が起った。三人が
吃驚
(
びっくり
)
して後を振り向くと、そこには、執事の田郷真斎がいつの間にか
入
(
はい
)
り込んでいて、
大風
(
おおふう
)
な微笑をたたえて
見下
(
みおろ
)
している。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
教区の会堂で十一時が鳴ると、その響きに合わして、他の会堂で澄んだ響きや
錆
(
さ
)
びた響きがくり返され、また家の中で、掛時計の重い音や鳴時計の
嗄
(
しゃが
)
れた声がくり返された。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
嗄
漢検1級
部首:⼝
13画
“嗄”を含む語句
皺嗄声
皺嗄
嗄声
咳嗄
嗄枯
嗄々
嗄聲
洒嗄
老嗄
薄嗄