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可哀
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あわれ
ふりがな文庫
“
可哀
(
あわれ
)” の例文
ちょっとなまって、甘えるような口ぶりが、なお、きっぱりと
断念
(
あきらめ
)
がよく聞えた。いやが上に、それも
可哀
(
あわれ
)
で、その、いじらしさ。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつはその
可哀
(
あわれ
)
な境遇を
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
と思うのとのために、これもまたいろいろに親切にしてやる。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これが私を殺すのです——と云って、
置処
(
おきどころ
)
のなさそうな顔を
背
(
そむ
)
ける。
猿轡
(
さるぐつわ
)
とか云うものより見ても
可哀
(
あわれ
)
なその
面縛
(
めんばく
)
した罪のありさまに
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中脊で、もの柔かな女の、
房
(
ふっさ
)
り結った島田が
縺
(
もつ
)
れて、おっとりした下ぶくれの頬にかかったのも、もの
可哀
(
あわれ
)
で気の毒であった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と涙も忘れて、胸も、
空洞
(
うつろ
)
に、ぽかんとして、首を
真直
(
まっすぐ
)
に
据
(
す
)
えながら潟の
鮒
(
ふな
)
の
碗
(
わん
)
を
冷
(
さま
)
して、
箸
(
はし
)
をきちんと、膝に手を置いた
状
(
さま
)
は
可哀
(
あわれ
)
である。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
浦人
(
うらびと
)
は
可哀
(
あわれ
)
がりました。ですが私は——約束に応じて宝を与え、その約束を責めて女を取る、——それが夢なれば、船に乗っても沈みはしまい。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いやです、きまりの悪いこと。……親類に連れられて、浅草から
燈籠
(
とうろう
)
を見に行っただけなんです、玉菊の、あの燈籠のいわれは
可哀
(
あわれ
)
ですわね。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お千は、それよりも美しく、雪はなけれど、ちらちらと散る花の、小庭の
湿地
(
しけち
)
の、石炭殻につもる
可哀
(
あわれ
)
さ、痛々しさ。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大歎息
(
おおためいき
)
とともに
空
(
す
)
き
腹
(
ばら
)
をぐうと鳴らして
可哀
(
あわれ
)
な声で、姐さん、そうすると、酒もなし、麦酒もなし、
肴
(
さかな
)
もなし……お
飯
(
まんま
)
は。いえさ、今晩の
旅籠
(
はたご
)
の飯は。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
花の白いのにさえ
怯
(
おび
)
えるのであるから、雪の降った朝の臆病思うべしで、
枇杷塚
(
びわづか
)
と言いたい、むこうの真白の木の丘に
埋
(
うずも
)
れて、声さえ立てないで
可哀
(
あわれ
)
である。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この時
婦人
(
おんな
)
は一息つきたり。
可哀
(
あわれ
)
なるこの物語は、土地の人
口碑
(
こうひ
)
に伝えて、
孫子
(
まごこ
)
に語り聞かす、一種のお
伽譚
(
とぎばなし
)
なりけるが、ここをば語るには、誰もかくすなりとぞ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おおん神の、お
膝許
(
ひざもと
)
で沙汰の限りな! 宗山坊主の背中を揉んでた島田髷の影らしい。惜しや、五十鈴川の星と澄んだその目許も、
鯰
(
なまず
)
の
鰭
(
ひれ
)
で濁ろう、と
可哀
(
あわれ
)
に思う。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小さな銀貨を
一個
(
ひとつ
)
握
(
にぎ
)
らせると、両手で、頭の上へ押頂いて、(沢山に
難有
(
ありがと
)
、難有、難有、)と
懐中
(
ふところ
)
へ
頤
(
あご
)
を
突込
(
つッこ
)
んで礼をするのが、何となく、ものの
可哀
(
あわれ
)
が身に染みた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
月の
夜
(
よ
)
はこの納屋の屋根から霜になるであろう。その石臼に
縋
(
すが
)
って、嫁菜の咲いたも
可哀
(
あわれ
)
である。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お染は白地
明石
(
あかし
)
に
藍
(
あい
)
で
子持縞
(
こもちじま
)
の
羅
(
うすもの
)
を着ていたから、場所と云い、境遇も、年増の身で、小さな
芸妓屋
(
げいしゃや
)
に丸抱えという、
可哀
(
あわれ
)
な
流
(
ながれ
)
にしがらみを掛けた袖も、花に、もみじに
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
土地の故参で年上でも、
花菖蒲
(
はなあやめ
)
、
燕子花
(
かきつばた
)
、同じ流れの色である。……生意気盛りが、我慢も意地も無いまでに、身を投げ掛けたは、よくせき、と清葉はしみじみ
可哀
(
あわれ
)
に思った。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
梁山泊
(
りょうざんぱく
)
の
割符
(
わりふ
)
でも襟に縫込んでいそうだったが、晩の旅籠にさしかかった
飢
(
うえ
)
と
疲労
(
つかれ
)
は、……六よ、怒るなよ……実際
余所目
(
よそめ
)
には、ひょろついて、途方に暮れたらしく
可哀
(
あわれ
)
に見えた。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さて、呼声に名が
入
(
い
)
りますと、どうやら遠い処で、
幽
(
かすか
)
に、はあい……」と
可哀
(
あわれ
)
な声。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どこに当人が歎き
悲
(
かなし
)
みなぞしたのですか。人に
惜
(
おし
)
まれ
可哀
(
あわれ
)
がられて、女それ自身は大満足で、
自若
(
じじゃく
)
として火に焼かれた。得意想うべしではないのですか。なぜそれが刑罰なんだね。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
荒布
(
あらめ
)
とも見える
襤褸頭巾
(
ぼろずきん
)
に
包
(
くる
)
まって、死んだとも言わず、生きたとも言わず、黙って溝のふちに凍り着く
見窄
(
みすぼ
)
らしげな
可哀
(
あわれ
)
なのもあれば、
常店
(
じょうみせ
)
らしく張出した三方へ、
絹二子
(
きぬふたこ
)
の赤大名
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
且
(
かつ
)
は臨終の
苦患
(
くげん
)
の
可哀
(
あわれ
)
さに、安心をさせようと、——心配をするな
親仁
(
おやじ
)
、鐘は俺が撞いてやる、——とはっきり云うと、世にも嬉しそうに、ニヤニヤと笑って、拝みながら死んだ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
窓を
透
(
すか
)
して、
独居
(
ひとり
)
の時、かの
可哀
(
あわれ
)
に
苔
(
こけ
)
生
(
お
)
いたる青楓の材を見れば、また姉上の憂目を訴えたまいしがごとく思われつつ、心
太
(
いた
)
く惑いて
脳
(
つむり
)
の苦しきが、いずれか是なる、いずれか非なる。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……けたたましく、
可哀
(
あわれ
)
に、
心悲
(
うらがな
)
しい、
鳶
(
とび
)
にとらるると聞く
果敢
(
はか
)
ない蝉の声に、俊吉は肝を冷しつつ、
※々
(
ぱっぱっ
)
と
面
(
おもて
)
を照らす
狐火
(
きつねび
)
の御神燈に、幾たびか驚いて目を
塞
(
ふさ
)
いだが、路も坂に沈むばかり。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
静
(
じっ
)
としていると思うと、襦袢の緋が
颯
(
さっ
)
と冴えて、揺れて、
靡
(
なび
)
いて、蝋に
紅
(
あか
)
い影が
透
(
とお
)
って、
口惜
(
くやし
)
いか、
悲
(
かなし
)
いか、
可哀
(
あわれ
)
なんだか、ちらちらと白露を散らして泣く、そら、とろとろと煮えるんだね。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……すがすがしいが、心細い、
可哀
(
あわれ
)
な、しかし
可懐
(
なつか
)
しい、胸を絞るような
駅路
(
うまやじ
)
の
鐸
(
すず
)
の音が、りんりんと響いたので、胸がげっそりと窪んで目が覚めるとね、身体が溶けるような涙が出たんだ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何だか
可哀
(
あわれ
)
っぽいのね。
鬱
(
ふさ
)
いで来るようだけれど、飛んだおもしろいよ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お孝が一声応ずるとともに、崩れた褄は小間を落ちた、片膝立てた段
鹿
(
か
)
の子の、浅黄、
紅
(
くれない
)
、
露
(
あら
)
わなのは、取乱したより、
蓮葉
(
はすは
)
とより、
薬玉
(
くすだま
)
の
総
(
ふさ
)
切れ切れに、美しい玉の緒の
縺
(
もつ
)
れた
可哀
(
あわれ
)
を
白々地
(
あからさま
)
。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
張って(坊主でない、坊主でない。)と
喚
(
わめ
)
いた様子が
可哀
(
あわれ
)
に見えます。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声々に、
可哀
(
あわれ
)
に、寂しく、
遠方
(
おちかた
)
を
幽
(
かすか
)
に、——そして
幽冥
(
ゆうめい
)
の
界
(
さかい
)
を
暗
(
やみ
)
から闇へ
捜廻
(
さがしまわ
)
ると言った、厄年十九の娘の名は、お稲と云ったのを鋭く聞いた——
仔細
(
しさい
)
あって忘れられぬ人の名なのであるから。——
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「出口はどこでございます。」とは
可哀
(
あわれ
)
やもう眼が見えぬそうな。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まだ
可哀
(
あわれ
)
なのはね、
一所
(
いっしょ
)
に
連廻
(
つれま
)
はられた
黒女
(
くろめ
)
なのよ。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
可哀
(
あわれ
)
を
留
(
とど
)
めたのは取巻連さ。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
可
常用漢字
小5
部首:⼝
5画
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“可哀”で始まる語句
可哀想
可哀相
可哀気
可哀氣