占領せんりょう)” の例文
さいわいに、くまのつめにはかからなかったが、たった一つののがれ道であるまどぐちを、くまのために占領せんりょうされてしまったのである。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
書記が一人であとのせき占領せんりょうしていた。マチアはかれが御者ぎょしゃに向かって、ベスナル・グリーンへ馬車をやれと言いつけているのを聞いた。
たちま占領せんりょうするつもりであったが、案に相違したので、辛くも山路将監の身だけを救い取り、行市山の自陣へ引揚げてしまった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのころの人たちは、この湖が、えたゆたかな平野を大きく占領せんりょうしているので、その水をしてしまって、そこにはたけをつくろうとしました。
そこで、おつ軍勢ぐんぜいが、こうのあるちいさなまち占領せんりょうしたときに、こう大将たいしょうは、すっかりそのまち食物しょくもつはらって、ただ、さけみずばかりをのこしておきました。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
血を見て凶暴きょうぼうになったかれらは、かねての計画を実行にうつした、まもなくベン夫妻と、一等運転手がたおされた。悪漢あっかんどもは完全にセルベン号を占領せんりょうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
おどろいたのは、おれがいか銀の座敷を引き払うと、翌日あくるひから入れちがいに野だが平気な顔をして、おれの居た部屋を占領せんりょうした事だ。さすがのおれもこれにはあきれた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
太郎はホテルに戻って、キシさんにわけを話し、馬車を占領せんりょうしてしまう手はずを決めました。前から買っておいた二頭の栗毛の馬を引いてきて、馬車につけました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
御存知ごぞんじでしょう? あそこを一人で占領せんりょうしています。縁側えんがわから見上げると、丁度、母屋おもやの藤棚が真向うに見えます。さっきもいったように、その花がいま咲き切っているんです。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
彼等の言を聞けば、政府にて決答を躊躇ちゅうちょするときは軍艦より高輪たかなわ薩州邸さっしゅうてい砲撃ほうげきし、らに浜御殿はまごてん占領せんりょうして此処ここより大城に向て砲火ほうかを開き、江戸市街を焼打やきうちにすべし云々うんぬんとて
そうかと思うと水色のほのおが玉の全体ぜんたいをパッと占領せんりょうして、今度こんどはひなげしの花や、黄色のチュウリップ、薔薇ばらやほたるかずらなどが、一面いちめん風にゆらいだりしているように見えるのです。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
沢村さんに占領せんりょうされているときは、喫煙室きつえんしつで、母へ手紙を書いたりしていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
川の中でも土手の上でも、みさきの子どもらは知らずしらずかたまっていた。だが、そこに松江の姿は見ることができない。その目に見えぬ姿が、ときどき先生の心を占領せんりょうしてしまうのだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
占領せんりょうした町からは、黄金や、たくさんの宝物を、持ってかえってきました。王さまの都には、世界じゅうの宝が、山と積みあげられました。これほどの宝は、どんな都にも見られません。
私は占領せんりょうされた風琴の音を聞くと、たまらなくなって、群集の足をかきわけた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
えて昭和しょうわねんはるいたり、彼女かのじょひとつの動機どうきから霊視れいしほかさら霊言れいげん現象げんしょうおこすことになり、本人ほんにんとはちがった人格じんかくがその口頭機関こうとうきかん占領せんりょうして自由自在じゆうじざい言語げんごはっするようになりました。
だけどわたしは、長いあいだ黒ネズミたちとなかよくらしていたものですから、黒ネズミのてき占領せんりょうしているようなところには住みたくありません。
あるのこと、こう軍勢ぐんぜいおつくにのあるむら占領せんりょういたしました。そのむら人々ひとびとは、すでにどこへかげてしまって、むらにはまったく人影ひとかげえなかったのです。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
安全な場所であることをたしかめて満足まんぞくしたらしく、急いで地べたにとび下りて、たき火の前のいちばん上等な場所を占領せんりょうして、二本の小さなふるえる手を火にかざした。
それはこの船を占領せんりょうして、南アメリカおよびアフリカ諸国に往来して、いまだに秘密に行なわれている奴隷どれい売買をいとなんで、一かく千金をえようとしたのだ。いまその喧嘩けんか口実こうじつができた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
二人が着いたころには、人数にんずももう大概たいがいそろって、五十じょうの広間に二つ三つ人間のかたまりが出来ている。五十畳だけにとこは素敵に大きい。おれが山城屋で占領せんりょうした十五畳敷の床とは比較にならない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こうして、一階を全部占領せんりょうしてしまいますと、こんどは二階のばんです。灰色ネズミ軍はまたもやかべの中に、骨をおって危険きけん進軍しんぐんをつづけました。
この海を雪が占領せんりょうするか、私が占領するか、ここしばらくは、命がけの競争きょうそうをしておるのですよ。
月と海豹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ろうせずしてこの洞を占領せんりょうするつもりであると思う
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
このうみゆき占領せんりょうするか、わたし占領せんりょうするか、ここしばらくは、いのちがけの競争きょうそうをしているのですよ。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたして、おつ軍勢ぐんぜいはえらいいきおいでこのまち占領せんりょうしましたけれど、食物しょくもつがありません。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたまなか占領せんりょうしていた、ふかいたにやまも、また、きりや、くももどこへか、あとなく、けむりのようにきえてしまって、そのかわり、きたないしみのように、現実げんじつのなやみが、全心ぜんしんをとらえたのでした。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこを占領せんりょうしたのであります。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)