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似而非
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えせ
ふりがな文庫
“
似而非
(
えせ
)” の例文
そうして病身であるために世を厭うている人に過ぎないと言っておる。遁世家ぶって得意でいる
似而非
(
えせ
)
風流は少しもないのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
マルシャンジーと呼ぶ
似而非
(
えせ
)
シャトーブリアンがいた、と一方にはアルランクールという
似而非
(
えせ
)
マルシャンジーも出かかっていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして精神的
似而非
(
えせ
)
自由が、たえずせり上がってゆく。それにはほとんどだれも抵抗しようとしない。群集は本音を吐くことができない。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
第一、ほんとうに生きようとしていないノンキな
似而非
(
えせ
)
芸術家が創作をやっている。それを「ほんとうに生き」たくない読者が喜んで読む。
創作の心理について
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
横光の
似而非
(
えせ
)
芸術。川端康成だって心情をそこへ導いたものは頭脳的だから、心情的なものの低さではもちこたえられず。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
うっかりすると「演説使い」だとか「雄弁売り」——又は時と場合では「偽国士」とか「
似而非
(
えせ
)
愛国者」とかいう尊号を
受
(
うけ
)
ないとも限りませぬ。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かくして純粋は不純を、善は偽善を、真理は
似而非
(
えせ
)
真理を、キリストは偽キリストを、最も強く排撃せざるを得ないのだ。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
花田 俺たちは力を
協
(
あわ
)
せて、九頭竜という悪ブローカーおよび堂脇という
似而非
(
えせ
)
美術保護者の
金嚢
(
かなぶくろ
)
から
能
(
あた
)
うかぎりの罰金を支払わせることを誓う。
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
似而非
(
えせ
)
賢者
何程
(
なにほど
)
のことやあらんと、
蓬頭突鬢
(
ほうとうとつびん
)
・
垂冠
(
すいかん
)
・
短後
(
たんこう
)
の衣という
服装
(
いでたち
)
で、左手に
雄雞
(
おんどり
)
、右手に
牡豚
(
おすぶた
)
を引提げ、
勢
(
いきおい
)
猛
(
もう
)
に、孔丘が家を指して
出掛
(
でか
)
ける。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
似而非
(
えせ
)
神職の説教などに待つことにあらず。神道は宗教に違いなきも、言論理窟で人を説き伏せる教えにあらず。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
終
(
つい
)
に一回の書画会をだも開かなかったというは市井町人の
似而非
(
えせ
)
風流の売名を
屑
(
いさぎよ
)
しとしない椿岳の見識であろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
主翁は今一応先刻の御話をと云うた。
似而非
(
えせ
)
使者
(
ししゃ
)
は、試験さるゝ学生の如く、真赤な嘘を真顔で繰り返えした。母者人は顔の筋一つ動かさず聴いて居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
こんな簡単な、周知の事実の場合には直ぐに気がつくが、多くの
似而非
(
えせ
)
歴史小説は、大なり小なり、此のたぐいであることは、容易にわかるものではない。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
初めすべての人々は、ただ、老先生のこのお悲しみが見たくないために、
似而非
(
えせ
)
同情の心で、お訪ねもせず、お耳にも入れずに、過ぎて来たのでござります
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真の科学者には——
似而非
(
えせ
)
科学者はいざ知らず……恐らく、誰よりも温かい血が流れて居るべき筈である。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
もしあるとすればナンセンスであり、
似而非
(
えせ
)
の
駄文学
(
だぶんがく
)
にすぎないのだ。いわんや俳句のような抒情詩——俳句は抒情詩の一種であり、しかもその純粋の形式である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
にこにこして「しかし、惜しい事には……」と言ってその
似而非
(
えせ
)
説明
(
せつめい
)
の大きなごまかしの穴を指摘しておいて、さて、丁寧に先生の本物の説明を展開するのであった。
田丸先生の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
掏摸の野郎と顔をならべて、
似而非
(
えせ
)
道学者の坂田なんぞを見返そうと云った
江戸児
(
えどッこ
)
のお嬢さんに、一式の恩返し、二ツあっても上げたい命を、一ツ棄てるのは
安価
(
やす
)
いものよ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大事そうに金時計をぶら下げた
似而非
(
えせ
)
詩人どもに、僕の旅行のすばらしい味はわかるまい。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
見識も
高尚
(
こうしょう
)
で気韻も高く、
洒々落々
(
しゃしゃらくらく
)
として愛すべく
尊
(
たっと
)
ぶべき少女であって見れば、
仮令
(
よし
)
道徳を飾物にする
偽君子
(
ぎくんし
)
、
磊落
(
らいらく
)
を
粧
(
よそお
)
う
似而非
(
えせ
)
豪傑には、或は
欺
(
あざむ
)
かれもしよう迷いもしようが
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
又それから種〻の古物をも云ふことになつたのである。骨董は古銅の音転などといふ解は、本を知らずして末に就いて巧解したもので、少し手取り早過ぎた
似而非
(
えせ
)
解釈といふ訳になる。
骨董
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
似而非
(
えせ
)
文人は曰く、黄金
百万緡
(
ひゃくまんびん
)
は門前のくろ(犬)の糞のごとしと。曙覧は曰く
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「——医が仁術だなどというのは、
金儲
(
かねもう
)
けめあての
藪
(
やぶ
)
医者、門戸を飾って薬礼稼ぎを専門にする、
似而非
(
えせ
)
医者どものたわ言だ、かれらが不当に儲けることを
隠蔽
(
いんぺい
)
するために使うたわ言だ」
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
失恋した男の人はよくその恋人に似た
似而非
(
えせ
)
女をあさるものだわ。そしてその恋人の幻をその似而非女の
形骸
(
けいがい
)
でまやかしていることに自分で気がつかないんだわ。女こそいい
面
(
つら
)
の皮だわね。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
もし其処に
似而非
(
えせ
)
現実主義というものがあると仮定すれば、それは自己のない生活である。個性のない生活である。而してそうした生活から生れる所の芸術は、形式の芸術、模倣の芸術である。
囚われたる現文壇
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
玉蟲染
(
たまむしぞめ
)
の
天鵞絨
(
びろうど
)
のやうな
薔薇
(
ばら
)
の花、
紅
(
あか
)
と
黄
(
き
)
の品格があつて、人の
長
(
をさ
)
たる
雅致
(
がち
)
がある
玉蟲染
(
たまむしぞめ
)
の
天鵞絨
(
びろうど
)
のやうな
薔薇
(
ばら
)
の花、
成上
(
なりあがり
)
の姫たちが着る
胴着
(
どうぎ
)
、
似而非
(
えせ
)
道徳家もはおりさうな
衣服
(
きもの
)
、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
この「日本製」
似而非
(
えせ
)
ニヒリズムとの距離は、はるかにはるかに遠い。
恐怖の季節
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
尤
(
もっと
)
も女の
似而非
(
えせ
)
理屈とか云う者でしょう、
素
(
もと
)
より現場も見ませんで
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
彼の魂は、涙っぽい浮華な情緒の
溜
(
た
)
まりであった。確かに彼は、
似而非
(
えせ
)
大家にたいする感激崇拝において、虚偽を
装
(
よそお
)
ってるのではなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ある
似而非
(
えせ
)
コルネイユがティリダートを書き、ある
宦官
(
かんがん
)
が後宮を所有し、陸軍のあるプルュドンムが偶然に一時期を画すべき決定的勝利を得
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
豊国の
似而非
(
えせ
)
高慢が世間の評判を自分の手柄に独占しようとするは無知な画家の増長慢としてありそうな咄だ。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
あれは
似而非
(
えせ
)
君子だ。もののふの情も何も知らぬ
糞軍師
(
くそぐんし
)
だ。……残念さ、おいたわしさ、何ともいいようがない
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一方に自家の芸術良心を
相殺
(
そうさい
)
して、結局西洋流の生活文学にもならず、日本流の名人芸術にもならないところの、
似而非
(
えせ
)
の
曖昧
(
あいまい
)
文学で終ってしまっているところにある。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
似而非
(
えせ
)
立憲的形態で軽く粉飾されているに過ぎない其の絶対的性質とを、保持している。
労働者農民の国家とブルジョア地主の国家:ソヴェト同盟の国家体制と日本の国家体制
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし、同時に大衆は、常になべての「主義」の
似而非
(
えせ
)
信者であり異端者である。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
またそれから種〻の古物をもいうことになったのである。骨董は古銅の音転などという解は、本を知らずして末に就いて
巧解
(
こうかい
)
したもので、少し
手取
(
てっと
)
り早過ぎた
似而非
(
えせ
)
解釈という訳になる。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
されば例の
似而非
(
えせ
)
神職ら枯槁せぬ木を枯損木として伐採を請願すること絶えず。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
なる
似而非
(
えせ
)
予言者らは巧みにこの定型を応用する事を知っている。しかしルクレチウスは彼の知れる限りを記述するに当たって、意識的にことさらに言語を
晦渋
(
かいじゅう
)
にしているものとは思われない。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
陽に清貧を
楽
(
たのし
)
んで陰に不平を蓄うるかの
似而非
(
えせ
)
文人が「独楽唫」という題目の下にはたして饅頭、焼豆腐の味を思い出だすべきか。彼らは酒の池、肉の林と歌わずんば必ずや麦の飯、
藜
(
あかざ
)
の
羹
(
あつもの
)
と歌わん。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
その
似而非
(
えせ
)
気取りを葉子は幸いにも持ち合わしていないのだと決めていた。葉子はこの家に持ち込まれている
幅物
(
ふくもの
)
を見て回っても、ほんとうの値打ちがどれほどのものだかさらに見当がつかなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「いうまでもない。この高俅が禁門軍の上に臨むからは、
昨
(
さく
)
のごとき、軍の
弛緩
(
しかん
)
は断じてゆるさん。まずもって、汝のような軍を
紊
(
みだ
)
す
似而非
(
えせ
)
武士から
糺
(
ただ
)
すのだ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これに対してニイチェのツァラトストラは、哲学が主観の中に取り込まれ、認識が感情によって融かされている。故に後者は本質の詩であって、前者は形式だけの
似而非
(
えせ
)
詩である。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼らはたがいに
似而非
(
えせ
)
文学者だとし、似而非学者だとしていた。理想主義だの唯物主義、象徴主義だの実物主義、主観主義だの客観主義、などという言葉をたがいに与え合っていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その
似而非
(
えせ
)
戦勝の名前を受くるに、フランスが困惑を感じたことは、史眼に照らして正当である。防御の任を帯びたスペインのある将軍らは、明らかにあまりにたやすく屈伏したらしい。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
或る種の
似而非
(
えせ
)
政治家は、食糧その他の人民管理委員会というものを、さも革命的なもののように誇張して、日本の民主化の今日の段階を無視した二重権力というような理論をつくり上げている。
私たちの建設
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
トヾの
結局
(
つまり
)
が
博物館
(
はくぶつくわん
)
に
乾物
(
ひもの
)
の
標本
(
へうほん
)
を
残
(
のこ
)
すか
左
(
さ
)
なくば
路頭
(
ろとう
)
の
犬
(
いぬ
)
の
腹
(
はら
)
を
肥
(
こや
)
すが
世
(
よ
)
に
学者
(
がくしや
)
としての
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
なりと
愚痴
(
ぐち
)
を
覆
(
こぼ
)
す
似而非
(
えせ
)
ナツシユは
勿論
(
もちろん
)
白痴
(
こけ
)
のドン
詰
(
づま
)
りなれど、さるにても
笑止
(
せうし
)
なるは
世
(
よ
)
の
是
(
これ
)
沙汰
(
さた
)
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
平常の
臙脂
(
えんじ
)
や黒髪のうるわしさも、もしこの日にしてその芳香を心から発するのでなければ、ただ
醜
(
みぐる
)
しさをかくす
似而非
(
えせ
)
のものと、女と女のあいだですら
蔑
(
さげす
)
み、
卑
(
いや
)
しむ気風があった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
要するに今日の所謂自由詩は、真に詩と言わるべきものでなくして、没音律の散文が行別けの外観でごまかしてるところの、一のニセモノの文学であり、食わせものの
似而非
(
えせ
)
韻文である。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その正法は、時として
似而非
(
えせ
)
革命家らによって汚名を負わせらるることもあるが、しかしたとい汚されようとも存続するものであり、たとい血にまみれようとも生きながらえるものである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして現在のような時代にあっては、善でさえも悪に変化してゆく。
似而非
(
えせ
)
優秀者らが、一度パリーを奪って言論のらっぱの口をふさいだだけで、フランスの残りの声もみな抑圧されてしまう。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
似
常用漢字
小5
部首:⼈
7画
而
漢検準1級
部首:⽽
6画
非
常用漢字
小5
部首:⾮
8画
“似而非”で始まる語句
似而非者
似而非貞女
似而非侍
似而非女
似而非物
似而非笑
似而非出離
似而非武士
似而非風流