わき)” の例文
何うも身装みなりが悪いと衆人ひとの用いが悪いから、羽織だけはわきで才覚したが、短かい脇差を一本お父さんに内証で持って来てくれねえか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「会社のものばかりなら何うでも構いませんが、わきからも大勢見えるのです。しかしさい御幣ごへいを担ぎますから、仰せに従いましょうかな」
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「六十人で、三十人ずつ二組になっているのよ。掃除はテーブルも何もも男の人がするから、それだけわきよりも楽だわ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「一つ珍物を喰はさうかなあ。」と、父はいつ年齡としを訊かれた時にするやうな手段てだてで、話をわきへ持つて行かうとした。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
岡も、小竹も相前後して既に英吉利イギリスの方から巴里へ戻って来ている頃であった。牧野は岡の意中の人が国の方でわきかたづいたという消息を持って来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしそれは、その内容即ち肉に深く入つて行かうとして、たま/\それがわきにそれて行つたのであつて筋論や抽象論よりは、まだしも増しだと言はなければならない。
スケツチ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
跟けて行くと、——あの番頭は又恐ろしく几帳面な野郎で、わき見もしなきア、後ろも振り向かねえ、往來の眞ん中を一文字に歩くんだ。——子供にだつて後を跟けられる
私はちょっと用を足しにわきへ行っていたのでしたが、帰って見ると、店は粉微塵こなみじんになっている。池へ落ちた群衆が溝渠鼠どぶねずみのようになってい上がって、寒さに震えている。
それにこの大学生は肺結核をわずらっていて、日に増し悲観な厭世えんせいに陥るようになった。あれやこれやで何処どこわき宿替やどがえをするようなことになった。その時主人は、幸い物置がいている。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
(宵からるような内へ、邪魔をするは気の毒だ。わきへ行こう、一緒に来な。)
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ついてねえ、あの関取がわきへ金え二百両貸した処が、むこうの奴がずりい奴で、返さなえで誠に困るから、どうか富さんを頼んで掛合ってもれえてえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「……次の食が直ぐ進む。咳なら二日目で止まる。婦人病には猿の頭が利くが、これも利く。わきでは二円五十銭ですが、此処では一円五十銭……」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だから吾儕われ/\も頭を痛めて居るのさ。まあ、聞き給へ。ある人は又た斯ういふことを言出した。瀬川君に穢多の話を持掛けると、必ず話頭はなしわきそらして了ふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この人は平生ふだんでも手に数珠じゅずを掛けている人であったが、師匠の病床に通って、じっと容態を見ておられたが、やや暫くの後、その場を去り、わきへ私を招き、ただならぬ顔色にて申すには
此処ここへ来ないと、どこか、わきうちへ行くと思ってるのか。仕様がない。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
正「実に御様子の好いお庭で、三日ばかりお客のお供でわきへ往ってましたが、斯ういう広々とした景色の好い所は見られません……お一人でげすか」
といふ蓮太郎の言葉に気がついて、丑松は下駄の歯のあとを掻消してしまつた。すこし離れて光景ありさまを眺めて居た中学生もあつたが、やがてわきを向いて意味も無く笑ふのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いやわしは言わん。さいの悪口をわきへ行って言う奴があるもんか?』
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それまたわきつてはれるとね、わたしところ商売しやうばいさはるから、わきへやらねえやうに棒縛ぼうしばりにしたんでございます。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「叔母さん、実はもうやめる決心でわきへ運動しているんです」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
梅「もういけん、此書これは松蔭から何者へ送るところの手紙か、又わきから送った手紙か、手前は心得てるか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其れじゃア私が済まない、矢張やっぱにいさんを此のうちの旦那にして私はわきへ縁付きたいと云うので、処がね嬢さんが粥河様を見ると一寸ちょっとい男だもんだから岡惚をして
わきに屁ッチョロの様な人が有りますから、貴方が後に入っしゃる事とも知らず、つい申しましたが、お侍さまで入っしゃるから貴方の事を申したと思召おぼしめしましょうが
どんな事がございましょうとも此の場は退きません、仮令たとえ親父おやじをお殺しなさりょうが、それは親父が悪いから、かくまでなさけある御主人を見捨てゝわき立退たちのけましょうか
離縁状を取らなければわきへ妹を縁付かたづけることが出来ませんから貰う離縁状、反故には出来ません、冗談云っちゃアいけませんよ、お前さんの方では病気のなおるまでとか
もう兄妹の是が別れだ、ほかに兄弟があるじゃアなし、お前と私ばかり、お前亭主を持たないうちなんと云った、私がわきへ縁付きましても、子というはあにさんと私ぎりだから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長「おゝ此の人だ、おめえだ、何うもまアかった、お前に金を遣ったにちげえねえね……賭博ばくち資本もとでわきへ預けたんじゃアねえ、チャンと証拠があるんだが、まア宜かったノ」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが己がわきの女に掛り合った所から、かゝアが悋気りんきを起し、以前の悪事をがア/\と呶鳴どなり立てられ仕方なく、旨くだまして土手下へ連出して、己が手に掛け殺して置いて
じゃア茲で許して上げてもわきへ行って腹が空ると、また盗まなければならん、わしの村で許してもほかでは許さぬ、今度は簀巻にして川へ投り込むか、生埋にするか知れぬから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前の処の娘をわきで欲しがる番頭とか旦那とか有るから世話を致そうと申しますが、てまえ取合いませんでした、すると昨年の暮廿九日に又てまえ方へ参りまして、三十金並べまして
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴方の事は今申す通り少しも仰しゃらず、漸くわきで聞いて参りましたが本当にあんまりだと存じて居りました、もしの時相州浦賀の石井山三郎様と仰しゃるお方がお寄りになりましたろう
男同士でも交情なかくって手を曳合ひきあって歩いても、わきの人とこそ/\耳こすりでもされますと男同士でも嫉妬ちん/\を起して、あれ茂山しげやま氏のそばへばかり往って居る、一体彼奴あいつは心掛けが宜くない
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうも女房に成ろうという者の方でいやではとても添われるものじゃアございませんから、もとより無い御縁とお諦め遊ばして、わきから立派なお嫁をお迎えなすった方が宜しゅうございましょう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ナニ伊之吉がちゃんとわきへ隠してあるのが知れませんは、不思議なもので、お取締りは随分厳重になって、コラお前のうちには同居人はおらんか、と戸籍調べのお巡査まわりさんはおいで遊ばしても
そりゃア愚僧わしも願ったり叶ったりじゃ、これから衣の洗濯でもして貰ったり、ほころびでも縫うてくれゝば実に有難い、これまでは何をするにもみんわきへ出すものじゃから銭が入ってどうも叶わんが
やがて庭石をわきから持ってまいりまして、手を伸べて閂を右の方へ寄せて、ぐいと開けて中へ入り、まるで泥坊の始末でございます。縁側からそっのぞいて見ますると、障子に人の影が映って居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆「ちいさい時からわきへ往ってたから、貴方あんたア知んなえが」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
庄「なゝなに此の間わきで聞いたのだ、一寸志だから」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)