まじはり)” の例文
仲温は自己と錦橋とのまじはりを叙するに当つて、霧渓の行状に拠らなかつた。是が墓誌に見えてゐる唯一の新事実だと云つても好からう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おまへの妹は黄昏色たそがれいろの髮を垂れて、水のほとりに愁へてゐる、亂倫らんりんまじはりを敢てするおまへたち、なんぞ願があるのかい、なかうどをして上げようか。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
山田やまだ出嫌でぎらひであつたが、わたし飛行自由ひぎやうじざいはうであるから、四方しはうまじはりむすびました、ところ予備門よびもんないあまねたづねて見ると、なか/\斯道しだう好者すきしや潜伏せんぷくしてるので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
神主かんぬし宮氏の家に貞和ぢやうわ文明ぶんめいの頃の記録きろく今にそんせり。当主たうしゆ文雅ぶんがこのみ吟詠ぎんえいにもとめり、雅名がめい正樹まさきといふ。同好どうこうを以てまじはりおさむ。幣下へいしたとなふ社家しやけ諸方しよはうにあまたある大社也。
亡き母御にはぐゝまれ、かの栖家にありしときは、ドメニカが事をも、我上をも思はざりしならん。然るに今はドメニカと我と、そちに親きものになりぬ。このまじはりもいつかかはることあらん。
あはれ此程このほどまでは殿上てんじやうまじはりをだに嫌はれし人の子、家のやから、今は紫緋紋綾しひもんりよう禁色きんじきみだりにして、をさ/\傍若無人の振舞ふるまひあるを見ても、眉をひそむる人だに絶えてなく、夫れさへあるに衣袍いはう紋色もんしよく
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いはんや是は南閣浮提なんえんぶだいの中には、唯一無双の御仏、長く朽損きうそんあるべしとも覚えざりしに、今毒縁の塵にまじはりて、久く悲を残し給へり。梵釈ぼんじやく四王、竜神八部、冥官みやうくわん冥衆みやうしゆも、驚きさわぎ給ふらんとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
翌年四十七歳の時、長崎につてゐた門人が、海軍の事を研究しに来た勝義邦かつよしくに識合しりあひになつて、勝と横井とが交通し始めた。これも智者のまじはりである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さりとて彼はいまかつてその友を利用せし事などあらざれば、こたびもあながちに有福なる華族を利用せんとにはあらで、友として美き人なれば、かくつとめてまじはりは求むるならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われつら/\おもふやう。わが猶此地に留まれるは、そも/\何の故ぞや。此地にはげに兄弟に等しきポツジヨあり、姉妹に等しきロオザ、マリアあれど、是等のまじはりは永遠なるべきものにあらず。
就中なかんづく茶山は同じく阿部家の俸をむ身の上であるので、其まじはりが殊に深かつた。それゆゑ山陽は江戸に来たとき、本郷真砂町の伊沢の家で草鞋わらぢを脱いだ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さてはまことまじはりを絶たんとすならんを、しばらしひて追はじと、一月あまりも打絶えたりしに、彼方あなたよりくこそ来つれ、吾がこのくるしみを語るべきは唯彼在るのみなるを、ともきたれるも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この時を始として、余と少女とのまじはり漸く繁くなりもて行きて、同郷人にさへ知られぬれば、彼等は速了そくれうにも、余をて色を舞姫の群にぎよするものとしたり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
貫一はその何の意なりやをおもはず、又その突然の来叩おとづれをもあやしまずして、畢竟ひつきよう彼の疏音なりしはその飄然ひようぜん主義のかからざるゆゑまじはりを絶つとは言ひしかど、よしみの吾を棄つるに忍びざる故と
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時四郎左衛門がきつと居直つて、一座を見廻してかう云つた。我々のまじはりは正義の交である。君国にさゝぐべき身を以て、盗賊にまぎらはしい振舞は出来ない。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うちたづねてく、さきも来る、そこで学校外がくかうぐわいまじはりむすぶやうにつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
壽阿彌と苾堂とのまじはりは餘程久しいものであつたらしいが、其つまびらかなることを知らない。たゞ此手紙の書かれた時より二年前に、壽阿彌が苾堂の家に泊つてゐたことがある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
はずや、それがし無二むにまじはりむす
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたくしは蘭軒が初め奈何いかにして頼菅二氏にまじはりれたかをつまびらかにすること能はざるをうらみとする。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
平八郎の妾ゆう薙髪ちはつす。十二月五日邪宗門事件落着す。貢、きぬ、さの、外三人はりつけに処せらる。きぬ、さのはしかばねを磔す。是年宮脇いく生る。上田孝太郎入門す。木村司馬之助、横山文哉まじはりていす。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
世の常ならば生面せいめんの客にさへまじはりを結びて、旅の憂さを慰めあふが航海のならひなるに、微恙びやうにことよせてへやうちにのみこもりて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨にかしらのみ悩ましたればなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)