“ひかげ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒカゲ
語句割合
日蔭30.9%
日影15.8%
灯影10.5%
日光9.9%
日陰8.6%
3.3%
燈影2.6%
火影2.0%
陽陰2.0%
女蘿2.0%
日景2.0%
日晷2.0%
陽蔭2.0%
陽影1.3%
光影0.7%
光線0.7%
日射0.7%
日昃0.7%
晷景0.7%
火光0.7%
灯光0.7%
陽光0.7%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
その間、ピラムはピラムで、もうどうする力もなく、日蔭ひかげをさがし、ちょっと寝転ねころんでは、舌をいっぱいに垂れ、呼吸をはずませている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
紺絣こんがすりの兄と白絣しろがすりおととと二人並んで、じり/\と上から照り附ける暑い日影ひかげにも頓着とんぢやくせず、余念なく移り変つて行く川を眺めて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
お作は何やら糸織りの小袖に着換えて、派手な花簪はなかんざしし、長火鉢の前に、灯影ひかげそむいて、うつむいたままぽつねんと坐っていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
向ふの側にも柿の樹があツて、其には先ツぽの黄色になつた柿が枝もたわゝにツてゐた。柿の葉はかすかそよいで、チラ/\と日光ひかげが動く。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それを思うても眠られぬし、また、日陰ひかげてきのいましめをうけておわす、大殿おおとののご心中しんちゅうを思うても、なかなか安閑あんかんとねている場合ではございませぬ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或日柏軒、抽斎、枳園等が榛軒の所に集つて治療の経験談にひかげの移るを忘れたことがある。此時終始緘黙してゐたのは抽斎一人であつた。それがをさなかえの注意を惹いた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
広間の燈影ひかげは入口に立てる三人みたりの姿をあざやかに照せり。色白のちひさき内儀の口はかんの為に引歪ひきゆがみて、その夫の額際ひたひぎはより赭禿あかはげたる頭顱つむりなめらかに光れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
れると海辺うみべては、をたいて、もしやこの火影ひかげつけたら、すくいにきてはくれないかと、あてもないことをねがった。三にんは、ついにおかうえ獄屋ごくやれられてしまった。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「根津というところは、土地が低いから、陽陰ひかげは何時でも此通りだ、うっかり曲者も歩けやしない」
女蘿ひかげの蔭のやまいちご
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれ等は高い処から、この気を揉んで居る人間を見卸して、馬鹿にする様に見えます。はてうしませう。日景ひかげは段々移る。朝飯を食はないリツプは追々飢を覚えて来ました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
一方にこうした日晷ひかげを追う風の、早く埋没したおもかげを、ほのかながうかがわせているというものである。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
陽蔭ひかげの花で暮す事に満足であったし、きんは趣味として小説本を読む事が好きであった。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
居間は、陽影ひかげのみで、あるじの佐々木巌流は、庭に立っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが車五味坂ごみざかを下れば茂み合うかしの葉かげより光影ひかげきらめきぬ。これ倶楽部クラブの窓より漏るるなり。雲の絶え間には遠き星一つかすかにもれたり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
薄く曇った初秋の空から落る柔かな光線ひかげは快く延切のびきった稲の葉の青さをば照輝く夏の日よりもかえって一段濃くさせたように思われた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帰りにみんなは上野をぶらぶらした。池には蓮がすっかり枯れて、舟で泥深どろぶかい根を掘り返している男などがあった。森もやや黄ばみかけて、日射ひかげ目眩まぶしいくらいであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
日昃ひかげるやねむる山より街道へ
不器男句集:02 不器男句集 (新字旧仮名) / 芝不器男(著)
それは淡紅色な大輪の花であつたが、太陽の不自然な温かさに誘はれてつぼみになつて見たけれども、朝夕の晷景ひかげのない時には、南国とても寒中は薔薇に寒すぎたに違ひない。
張り替えたばかりではあるが、朦朧もうろうたる行燈あんどう火光ひかげで、二女ふたりはじッと顔を見合わせた。小万がにッこりすると吉里もさもうれしそうに笑ッたが、またさも術なそうな色も見えた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
百目蝋燭ろうそくを、ともしつらねた灯光ひかげが、金屏風に、度強どぎつく照り映えるのも、この土地なれば、浅間しからずふさわしく見える。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
雲の切れ目から陽光ひかげが洩れると、潮の林が鮮かに浮きあがる。どうやら仔鯨を連れて北へ帰る、抹香鯨まっこうくじらの一群らしい。船は、快いリズムに乗って、静かに滑り続ける。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)