陽陰ひかげ)” の例文
障子を開けると、縁先に南天の赤い実は見えるが、仰ぐと、陽陰ひかげ雨樋とよから下がっている氷柱つららは、つるぎのように、この頃では、溶けた日がない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「根津というところは、土地が低いから、陽陰ひかげは何時でも此通りだ、うっかり曲者も歩けやしない」
と、茶の催しや、書画しょが骨董こっとうの交わりの席に誘って見ても、いつも、頭が痛いとか、気分がすすまぬとか云って、陽陰ひかげの部屋を好む左兵衛佐であった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——筑前守様の御領下にいれば、何となく安心で、それに、同じ暮すにしても、陽気で、張合いが持てて、何となく励みがつく。——丹波、丹後、そのほか畿内きないも、住むにはもう安心だが、陽陰ひかげと陽なたほどな違いがある」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)