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燈影
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ひかげ
やがて、細目に
密とあけると、左は喜兵衛の伝った
方、右は
空室で
燈影もない。そこから
角に折れ曲って、向うへ渡る長廊下。
広間の
燈影は入口に立てる
三人の姿を
鮮かに照せり。色白の
小き内儀の口は
疳の為に
引歪みて、その夫の
額際より
赭禿げたる
頭顱は
滑かに光れり。
玄関の障子に
燈影の
映しながら、
格子は
鎖固めたるを、車夫は
打叩きて
くツきりとした
頸脚を
長く
此方へ
見せた
後姿で、
遣水のちよろ/\と
燈影に
搖れて
走る
縁を、すら/\
薄彩に
刺繍の、
數寄づくりの
淺茅生の
草を
分けつゝ
歩行ふ、
素足の
褄はづれにちらめくのが。