火影ひかげ)” の例文
火影ひかげを避けんとしたる彼の目の中ににはか耀かがやけるは、なほあらたなる痛恨の涙の浮べるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
れると海辺うみべては、をたいて、もしやこの火影ひかげつけたら、すくいにきてはくれないかと、あてもないことをねがった。三にんは、ついにおかうえ獄屋ごくやれられてしまった。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
脾腹ひばら突込つゝこみぐつと一ゑぐりゑぐりし時重四郎は荼比所だびしよ火影ひかげかほ見逢みあはせヤア三五郎か重四郎殿好機しつくり參つて重疊々々ちようでふ/\扨此樣子は先刻さつき用事ようじあつて貴殿の宅へ參りし所何か人聲がする故樣子有んとうかゞへば金兵衞が子分共こぶんども我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
片側町かたかはまちなる坂町さかまち軒並のきなみとざして、何処いづこ隙洩すきも火影ひかげも見えず、旧砲兵営の外柵がいさく生茂おひしげ群松むらまつ颯々さつさつの響をして、その下道したみち小暗をぐらき空に五位鷺ごいさぎ魂切たまきる声消えて、夜色愁ふるが如く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つぐ遠寺ゑんじかねガウ/\とひゞき渡りいと凄然ものすごく思はるればさしも強氣がうきの者共も小氣味こきみ惡々わる/\足にまかせて歩行あゆむうちあをき火の光り見えければあれこそ燒場やきば火影ひかげならんと掃部は先に立て行程にはや隱亡小屋をんばうごや近接ちかづく折柄をりから道の此方こなたなる小笹をざさかぶりし石塔せきたふかげより一刀ひらりと引拔稻妻いなづまの如く掃部が向うずね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)