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小氣味
『
愚老も
殿樣が
守口で、
與力衆の
膽玉をお
取り
拉ぎになつたことを、
今もつて
小氣味よく
存じて
居ります。』
報る
遠寺の
鐘ガウ/\と
響き渡り
最凄然く思はるればさしも
強氣の者共も
小氣味惡々足に
任せて
歩行中青き火の光り見えければ
彼こそ
燒場の
火影ならんと掃部は先に立て行程に
早隱亡小屋に
近接折柄道の
此方なる
小笹の
冠りし
石塔の
蔭より一刀
閃りと引拔
稻妻の如く掃部が向う
脛を
紀はなんとも
答へなかつたが、
厭で
厭でたまらないこの
土地の
生ぬるい、
齒切れのわるい
人間をこツぴどくやつ
付けてくれた
殿樣の
小氣味のよい
言葉が、
氣持ちよく
耳の
穴へ
流れ
込んで