霊魂れいこん)” の例文
旧字:靈魂
「なぜ、娑婆しゃばにいるうちから、こうして、おともだちにならなかったものか……。」と、貧乏人びんぼうにん霊魂れいこんは、いぶかしくかんじました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「死者は知ることありや? た知ることなきや?」死後の知覚の有無、あるいは霊魂れいこんの滅不滅についての疑問である。孔子がまた妙な返辞をした。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
案外深い感謝あり、理解あり、同情あり、而して個性あり、痛切な苦悶あり、要するに一個真面目の霊魂れいこんであったことを今更の様に発見したであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
黒人か、さにあらず、構成派の彫像ちょうぞうのような顔の持主は、人間ではなくて、霊魂れいこんのない怪物のような感じがした。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔がたまのような乳房ちぶさにくッついて、緋母衣ひほろがびっしょり、その雪のかいなにからんで、一人はにしてえんであった。玉脇の妻は霊魂れいこん行方ゆくえが分ったのであろう。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もしそんなことがあったらばとかんがえたが、霊魂れいこん不死ふしは、なにやらかれにはのぞましくなかった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
古怪な寒山拾得かんざんじつとくの顔に、「霊魂れいこんの微笑」を見たものは、岸田劉生きしだりうせい氏だつたかと思ふ。もしその「霊魂の微笑」の蔭に、多少の悪戯あくぎを点じたとすれば、それは冬心の化け物である。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
気まぐれな小鬼こおにめがわしの生命中に巣をっているようだ。わしの気質は自分の自由にならないのだ。わしは孤立無縁こりつむえん霊魂れいこんだ。人とやわらぐことのできない粗野そやな性格だ。わしはわしをのろう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
涸渇こかつしてしまったのであろうか? 私は他人の印象から、どうかするとその人の持ってる生命力とか霊魂れいこんとかいったものの輪郭りんかくを、私の気持の上に描くことができるような気のされる場合があるが
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
人間にんげんんでも、霊魂れいこんは、きているのではない?」と、わたしは、ふしぎなハーモニカのから、おじさんに、こうたずねたのでした。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
「今、ロザレの霊魂れいこんは他出している。されば後、ロザレの遺骸に汝の子の隆夫のたましいを住まわせるがよい」
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
臆病者も頗英雄になった気もちだ。夏の快味は裸の快味だ。裸の快味は懺悔ざんげの快味だ。さらけ出したからだ土用干どようぼし霊魂れいこん煤掃すすはき、あとの清々すがすがしさは何とも云えぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
神父は顋鬚あごひげを引張りながら、考え深そうにうなずいて見せた。女は霊魂れいこんの助かりを求めに来たのではない。肉体の助かりを求めに来たのである。しかしそれはとがめずともい。肉体は霊魂の家である。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、人には霊魂れいこんがある、偶像にはそれがない、と言うかも知れん。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『しかしきみ霊魂れいこん不死ふししんじなさらんのですか?』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「せいぜい、にいさんのきなことをしてあげて、霊魂れいこんをなぐさめるんだね。」と、おじさんは、いいました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
今は、ましてや真夜中に近い時刻であるので、構内は湖の底に沈んだように静かで、霊魂れいこんのように夜気やき窓硝子まどガラスとおして室内にみこんでくるように思われた。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
霊魂れいこんは、まったくかばれなかったのです。りっぱなおてらへいって、おきょうをあげてもらい、丁寧ていねいとむらいをしてもらってから、冥土めいどたびにつこうとおもいました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この大じかけの装置こそ、谷博士が自分の一生をけ、すべての財産をかたむけ、三十年間にわたって研究をつづけている人造生物に霊魂れいこんをあたえる装置であった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これを霊魂れいこんは、つめたいあおわらいをしました。そして、金持かねもちの背中せなかへ、そっと、しがみつきました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
名津子を見舞に来た隆夫は、その肉体はたしかに隆夫にちがいないが、その肉体を支配している霊魂れいこんは、隆夫の霊魂ではないのだ。それは例の霊魂第十号なのである。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは、そのあわれなんだひとたちをなぐさめますためにはなとなりました。そうして、ひるでも、まただれもいないよるでも、はかまえ霊魂れいこんをなぐさめるためにかおっています。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は、灼鉄と硝煙しょうえんと閃光と鳴動めいどうとの中に包まれたまま、爆発するような歓喜かんきを感じた。その瞬間に、彼から、仏天青フォー・テンチンなる中国人の霊魂れいこんと性格とが、白煙はくえんのように飛び去った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また、つきあかるいばんなど、このあたりからこるふえは、まん霊魂れいこんをなぐさめるものとおもわれました。そして、村人むらびとみみに、切々せつせつとして、かなしいしらべをおくるのでした。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「僕のことかい。僕は大した者ではない。単に一箇の霊魂れいこんに過ぎん」
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、おとうさんの霊魂れいこんは、きっとあんなようなきよらかなところにんでいらっしゃるのだろうとおもったのでした。それが、もうおそくなって、やまえないのは残念ざんねんです。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
「心霊とは人間の霊魂れいこんのことです。たましい、ともいいます」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少年しょうねんは、空想くうそうしました。ふゆさむばんに、そらにきらきらかがやほしると、そのなかに、おしずの霊魂れいこんほしとなってまじっていて、じっとこちらをているのでないかとおもいました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
霊魂れいこんが、親友しんゆうすくったのですね。」と、わたしは、そのはなし感動かんどうしたのでした。そして、わたしは、あにく、ハーモニカのが、このごろ、たびたびきこえると、いいますと
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この地上ちじょう人間にんげん霊魂れいこんが、あのそらほしでございます。」と、うらなしゃはいった。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)