陽気ようき)” の例文
旧字:陽氣
『あなたがたなかにも、人間にんげんきなものときらいなもの、また性質せいしつのさびしいものと陽気ようきなものと、いろいろ相違そういがあるでしょうね?』
そのおどりもわっていれば、また、マンドリンのも、さびしいうちになんともいえない陽気ようきなところがある不思議ふしぎでした。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
うしろにのった仕立屋さんは、まことにごきげんで、陽気ようきなものでした。木をかつぐのなんか、まるで子どものあそびだとでもいうように
みんなは、ゴットランド島で、月曜日の午後をたのしくのどかにすごしました。いまは陽気ようきもすっかり春らしく、あたたかくなっていました。
もう陽気ようきあたたかで、空はまっさおにれわたり、太陽たいようは高いところから、ぽかぽかと暖かな光りをきらめかせていましたが、わたしの心は、まっくらでした。
七草なずな、唐土とうどの鳥が——の唄に合わせて、とことん! とことん! と俎板まないたを叩く音が、吉例により、立ち並ぶ家々のなかから、ふし面白く陽気ようきに聞えて来ていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
林のはずれを右へまがって、大通りへつづく横町よこちょうまできたとき、陽気ようき楽隊がくたいきょくが流れてきた。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
しかしかれをして露西亜ロシヤすまわしめたならば、かれかならず十二がつどころではない、三がつ陽気ようきっても、へやうちこもっていたがるでしょう。寒気かんきためからだなに屈曲まがってしまうでしょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
長安の奇計きけいが、ひそかに、耳から耳へつたえられて、どッと、はやしたものだろう。あっちでもこっちでも、ドカドカと篝火かがりをもやして、きゅうに、徳川方とくがわがたの空気が陽気ようきになりだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですから学校に居る間は大学生の中にもこんなふざけ方をして喜んでいる無邪気な奴が居るかと思われるように陽気ようきに振舞っていましたが学校がすんでから電車を東中野駅で捨てて
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、それにもかかわらず妙に陽気ようきにはなれなかった。保吉の書斎の机の上には、読みかけたロシュフウコオの語録がある。——保吉は月明りをみながら、いつかそんな事を考えていた。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ああ、なんというはるにふさわしい、陽気ようきな、ほがらかなごえだろう……。」と、ほかのつばめはいいました。
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたたかな陽気ようきと、もえだした芽や花が、人びとを庭や道にさそいだしました。いく人かが集まりますと、きまって、そこでは遊戯ゆうぎがはじまりました。
「おい、クマこう、いやにきげんのわるい顔をしてるじゃないか。いつもの陽気ようき調子ちょうしはどこへやっちゃった。」
かおはどちらかといえば円顔まるがおるからにたいそうお陽気ようきで、お召物めしものなどはいつもおもった華美造はでつくり、丁度ちょうどさくらはなが一にぱっとでたというようなおもむきがございます。
ひとくちにそれをいえば、「陽気ようき」というものである。いかなる艱苦かんくや悪戦のなかでも、その「陽気」なものと、全軍一家族といったような和気の藹々あいあいかもされていることだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こころ愉快ゆかいにする、たとえば、いままでしずんでいたものが、そのくと、陽気ようきになるということは、たしかに、いままでの音楽おんがくとは、反対はんたいのことでした。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
仕立屋さんはくつはやぶれ、足はまめだらけでしたから、つえを手にもって、むじゃきな兵隊へいたいさんたちが陽気ようきにさわいでいる〈ちょい〉へいきました。
だから、そのころは、母屋おもやをみても、牛小屋をみても、みんな陽気ようきで、よろこびにみちあふれていました。
これにはんして玉依姫系統たまよりひめけいとうかたいたって陽気ようきで、すすんで人中ひとなかにもかけてまいります。
おじいさんは、たいそうよろこびました。そののちのこと、よる、この大工だいくいえまえとおりますと、大工だいくいえにいて、女房にょうぼうはなごえもすれば、なんとなく陽気ようきでありました。
いいおじいさんの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この生暖なまあたたかな陽気ようきじゃ、たらはくさってしまうだろう。うんとまけてゆけばってもいい。」
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、いまおもしても陽気ようきな、おもしろいことばかりがかんでくるのです。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にんは、自分じぶんたちがべるまえに、ねこにごはんつくってやりました。こんなふうに、ねこがこのうちへきてから、にわかに、家内かないじゅうが陽気ようきになって、はや幾日いくにちぎたのであります。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)