きり)” の例文
休坂やすみざかを下りて眞砂町の通りへ出た時は、主筆と私と八戸君と三人きりになつて居た。『隨分贅澤な會をりますねえ。』と私が云ふと
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ねえ! 青木さん! 美奈さんと、三人でなければ面白くありませんわねえ。二人きりぢや淋しいし張合がありませんわねえ!」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
婿はもと湯村の故郷仙台に銀行員の頃、伯母の世話で一緒にしたのだ。生れは東京の者である。今朝仕事口を探しに家を出たきり未だ帰つて来ない。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
すべてにはきりがあります。「死の蔭に」が出で、父の三年のが果てる頃から、私はそろ/\死の蔭を出ました。大正七年は私共夫妻の銀婚です。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もし此夫婦が自然のおのきりかれるとすると、自分の運命はかへしのかない未来をまへに控えてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「馬鹿、いちいち役得のつもりでデレデレしていると、きりがねえぞ、少なく積って三百人や四百人は居るだろう」
それでその「木」へぼうを彫って、其処そこだけ特にしゅを入れたんだそうです。それきり、幽霊は出ては来なかった。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
能く主人にう云ってくれ、これっきりしか来ねえお客と見くびってるだろうが、己は花魁が来ても床いそぎのじん助とは違うから、やぼを云うのじゃアねえや
と云いながら、倒れた男を丸裸にして調べましたが、銅貨が二ツ三ツあったきりで他に何もありませんでした。この様子を最前から見ていた禿頭はげあたまの紳士がありました。
正夢 (新字新仮名) / 夢野久作萠円(著)
追放つゐはうくからは、父母ちゝはゝもチッバルトもロミオもヂュリエットも皆々みんな/\ころされてしまうたのぢゃ。「ロミオは追放つゐはう!」その一言ひとことひところちからにははてはかりきりさかひいわいの。
蘆花君は薄暗いへやの隅つこで、膝小節ひざこぶしを抱へ込んだ儘、こくりこくりと居睡ゐねむりをしてゐる。附近あたりには見窄みすぼらしい荷物が一つきりで、何処にもその「善い物」は見つからなかつた。
この広い家に年のいかないもの二人きりであるが、そこは巡査おまわりさんも月に何度かしか回って来ないほどの山間やまあい片田舎かたいなかだけに長閑のんきなもので、二人は何の気も無く遊んでいるのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
窓からす薄暗いあかりの中で厭な姿が二つの大きな鏡へ映る。「大将、だいぶ弱つて居るぢや無いか」と僕の心の中の道化役の一つがひよつこりと現れて一言ひとことせりふを投げたきり引込ひつこんで仕舞しまふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
田原町へ縁付し娘おくめなれ共母が長々の病氣の中も漸々やう/\一度見舞みまひに來りしばかりにて其節も心配の樣子もなく劇場しばゐの咄などしてそは/\と戻りしきり其後は見舞の使つかひだに差越さしこさず如何に不人情成ばとて實母じつぼの病氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「秋山大尉の方は、それきりかね。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
休坂やすみざかを下りて真砂町の通りへ出た時は、主筆と私と八戸君と三人きりになつて居た。『随分贅沢な会をりますねえ。』と私が云ふと
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ねえ! 青木さん! 美奈さんと、三人でなければ面白くありませんわねえ。二人きりじゃさみしいし張合がありませんわねえ!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
百両くれろと云われちゃア上げられねえ、又道中もしようできりのないもの、千両も持って出て足りずに内へ取りによこす者もあり、四百のぜにで伊勢参宮をする者もあり
其夜は、裏二階の六疊に忠太とお八重お定の三人枕を並べて寢せられたが、三人きりになると、お八重は直ぐ忠太の膝をつねりながら
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
母も、たしかに青年とたつた二人きり、散歩する約束をした筈である。そして、あの大切な返事を青年に与へる約束をした筈である。それだのに、なぜ自分を呼び止めるのであらう。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
なさる事になすつては? さうなれば目形さんには別の室に移つて頂くことに致しますから。何で御座いませう、貴方方もお三人きり……?
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
母も、確に青年とたった二人きり、散歩する約束をしたはずである。そして、あの大切な返事を青年に与える約束をした筈である。それだのに、なぜ自分を呼び止めるのであろう。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして此問題は、二人きりの問題ではなくて、『男』といふものと『女』といふものとの間の問題であるやうに思つてゐる。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
勝平と二人きりで、東京を離れることは、彼女に取つては死地に入ることであつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そして此問題は、二人きりの問題ではなくて、「男」といふものと「女」といふものとの間の問題であるやうに思つてゐる。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
愛し合った夫であるならば、それは楽しい新婚旅行であるはずだけれども、瑠璃子の場合は、そうではなかった。勝平と二人きりで、東京を離れることは、彼女に取っては死地に入ることであった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一時間許り経つと、丑之助がもう帰準備かへりじたくをするので、これも今夜きりだと思ふと、お定は急に愛惜の情が喉に塞つて来て、熱い涙が滝の如く溢れた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
犬は七日の間何も喰はなかつた。そして、犬一疋、人一人に逢はぬ。三日程前に、高い空の上を鳥が一羽飛んで行つて、雲に隱れた影を見送つたきり
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
二人は、不器用な手つきで、食後の始末にも手傳ひ、二人きりで水汲にも行つたが、其時お八重はもう、一度經驗があるので上級生の樣な態度をして
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
歸りは雨が降り出したので竹山の傘を借りて行つたきり、それなりに二人は四年の間殆んど思出す事もなかつたのだ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
帰りは雨が降り出したので竹山の傘を借りて行つたきり、それなりに二人は四年の間殆んど思出す事もなかつたのだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二人きりになると、何れもほつと息を吐いて、今し方お吉の腰掛けた床の間に膝をすれ/\に腰掛けた。かくて十分許りの間、田舎言葉で密々こそこそ話し合つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それも其筈、今朝九時頃に朝飯を食つてから、夕方に小野山の室で酒を飮んで鯣のあぶつたのをしやぶつたきりなのだ。 
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『君の顔を見ると、どうしたもんだか僕あ気が沈む。奇妙なもんだね。敵の真中に居れや元気がよくて、味方と二人ツきりになると、泣きたくなツたりして。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それも其筈、今朝九時頃に朝飯を食つてから、夕方に小野山の室で酒を飲んで鯣のあぶつたのをしやぶつたきりなのだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
月例會に逢つたきりの菊池君が何故か目に浮ぶ。そして、何だか一度其編集局へ行つて見たい樣な氣がした。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
月例会に逢つたきりの菊池君が何故か目に浮ぶ。そして、何だか一度其編輯局へ行つて見たい様な気がした。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
手ランプを消して、一時間許りつと、丑之助がもう歸準備かへりじたくをするので、これも今夜きりだと思ふとお定は急に愛惜の情が喉に塞つて來て、熱い涙が瀧の如く溢れた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『昌作と二人です、今朝出たつきりまだ歸らないんですが、多分貴女あんたとこかと思つて伺つたんです。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昌作しやうさんと二人です、今朝出たつきりまだ帰らないんですが、多分貴女あんたとこかと思つて伺つたんです。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三四日前に橋の上で逢つたきり、名も知り顔も知れど、口一ついたではなし、さればと言つて、乗客と言つては自分と其男と唯二人、隠るべきやうもないので、素知そしらぬ振も為難しにくい。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
人生の不幸のおりまで飲み干さなくては真の人間に成れるものぢやない。人生は長い暗い隧道だ、処々に都会といふ骸骨の林があるツきり。それにまぎれ込んで出路を忘れちやけないぞ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然うで御座いますか。』と言つたきり、智惠子は眞面目な顏をしてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然うで御座いますか。』と言つたきり、智恵子は真面目な顔をしてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして女教師の福富も矢張り、遣るだらうか、女だから遣らないだらうかといふ疑問を起した。或時二人きりゐた時、直接いて見た。福富は眞顏まがほになつて、そんな事はした事はありませんと言つた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして女教師の福富も矢張やつぱり、遣るだらうか、女だから遣らないだらうかという疑問を起した。或時二人きりゐた時、直接訊いて見た。福富は真顔まがほになつて、そんな事はした事はありませんと言つた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その日は歸途かへりに雨に會つて來て、食事に茶の間に行くと外の人は既う濟んで私一人きりだ。内儀は私に少し濡れた羽織を脱がせて、眞佐子に切爐の火でさせ乍ら、自分は私に飯をよそつて呉れてゐた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
智惠子は唯一度、吉野も信吾も居らぬ時に遊びに來たツきりであつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
此話は二人きりの事にすると堅く約束して別れた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『フム。』と言つたきりで荷馬車は行き過ぎた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)