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いちもつ
ふりがな文庫
“
逸物
(
いちもつ
)” の例文
筋骨
(
すじぼね
)
が
暴馬
(
あれうま
)
から
利足
(
りそく
)
を取ッているあんばい、どうしても時世に
恰好
(
かッこう
)
の人物、自然
淘汰
(
とうた
)
の網の目をば第一に脱けて生き残る
逸物
(
いちもつ
)
と見えた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
犬は三頭が三頭ながら、大きさも毛なみも一対な茶まだらの
逸物
(
いちもつ
)
で、子牛もこれにくらべれば、大きい事はあっても、小さい事はない。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見てもわかる。
長刀
(
なぎなた
)
、太刀でも目につくほどな物を持っているのは大将たちぐらいなもの。……さすがに馬だけは、
逸物
(
いちもつ
)
があるが
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あわれ乞食僧は
留
(
とどめ
)
を刺されて、「痛し。」と
身体
(
からだ
)
を
反返
(
そりかえ
)
り、
涎
(
よだれ
)
をなすりて
逸物
(
いちもつ
)
を
撫廻
(
なでまわ
)
し撫廻し、ほうほうの
体
(
てい
)
にて
遁出
(
にげいだ
)
しつ。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
通りのまんなかには、二頭立の
葦毛
(
あしげ
)
の
逸物
(
いちもつ
)
をつけた紳士用のぜいたくな四輪馬車が立っていたが、乗り手はいなかった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
額のあたり少し
禿
(
は
)
げ、
両鬢
(
りょうびん
)
霜ようやく
繁
(
しげ
)
からんとす。体量は二十二貫、アラビア
種
(
だね
)
の
逸物
(
いちもつ
)
も将軍の座下に汗すという。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「よくそれにお目がとまりました、その辺がここでは
逸物
(
いちもつ
)
でございましょうな、牧場の方へ参ると駒で一頭、ややこれに似た
悍
(
かん
)
の奴がござりまするが」
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不意に橋の上に味方の騎兵が
顕
(
あらわ
)
れた。藍色の軍服や、赤い筋や、鎗の穂先が
煌々
(
きらきら
)
と、一隊
挙
(
すぐ
)
って五十騎ばかり。隊前には
黒髯
(
くろひげ
)
を
怒
(
いか
)
らした一士官が
逸物
(
いちもつ
)
に
跨
(
またが
)
って進み行く。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
幸い、主人、大場石見は大の馬好き、近頃手に入れた「
東雲
(
しののめ
)
」という名馬、南部産
八寸
(
やき
)
に余る
逸物
(
いちもつ
)
に、
厩仲間
(
うまやちゅうげん
)
の黒助という、若い威勢の
好
(
い
)
い男を付けて貸してくれました。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
去
(
さ
)
れど
是等
(
これら
)
の道具立てに不似合なる
逸物
(
いちもつ
)
は其汚れたる
卓子
(
てえぶる
)
に
凴
(
よ
)
り白き手に裁判所の呼出状を持ちしまゝ憂いに沈める一美人なり是ぞこれ噂に聞ける藻西太郎の妻倉子なり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
それは雪と岩が、白馬岳の峯頭に浮彫りする黒鹿毛の
逸物
(
いちもつ
)
で、山名の因をなすものだ。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
本
(
もと
)
より
此
(
こ
)
の異僧道衍は、死生禍福の
岐
(
ちまた
)
に惑うが如き
未達
(
みだつ
)
の者にはあらず、
膽
(
きも
)
に毛も
生
(
お
)
いたるべき不敵の
逸物
(
いちもつ
)
なれば、さきに燕王を勧めて事を起さしめんとしける時、燕王、彼は天子なり
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一回毎に切り棄てることを敢てせざりし為めに、鈎近くの𧋬の疲れ居て、脆く切れたるにや、何れにしても、偶に来れる
逸物
(
いちもつ
)
を挙げ損ねたるは、釣道の大恥辱なり。ただ一尾の魚を惜むに非ず。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
眼はあくまでも細く、
口鬚
(
くちひげ
)
がたらりと生えていた。天平時代の仏像の顔であって、しかも股間の
逸物
(
いちもつ
)
まで古風にだらりとふやけていたのである。太郎は落胆した。仙術の本が古すぎたのであった。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
掛けておきましたところが、これも縁でございますな。いや、
逸物
(
いちもつ
)
、
尤物
(
ゆうぶつ
)
——なんぼ人形食いの殿様でも、これがお気に召しませんようでは、今後こういう御相談は、平茂、まっぴら御免、なんて、前置きが大変。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
令史
(
れいし
)
の
家
(
いへ
)
に
駿馬
(
しゆんめ
)
あり。
無類
(
むるゐ
)
の
逸物
(
いちもつ
)
なり。
恆
(
つね
)
に
愛矜
(
あいきん
)
して
芻秣
(
まぐさ
)
を
倍
(
ま
)
し、
頻
(
しきり
)
に
豆
(
まめ
)
を
食
(
は
)
ましむれども、
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
痩
(
やせ
)
疲
(
つか
)
れて
骨立
(
こつりつ
)
甚
(
はなは
)
だし。
擧家
(
きよか
)
これを
怪
(
あやし
)
みぬ。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
北条家の
厩
(
うまや
)
から曳き出して来た駒である。
螺鈿
(
らでん
)
の鞍がついている。野盗が見つけたら見逃しっこない
逸物
(
いちもつ
)
なのだ。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幸
(
さいは
)
ひ、主人、大場石見は大の馬好き、近頃手に入れた『
東雲
(
しのゝめ
)
』といふ名馬、南部産
八寸
(
やき
)
に餘る
逸物
(
いちもつ
)
に、
厩中間
(
うまやちうげん
)
の黒助といふ、若い威勢の好い男を附けて貸してくれました。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
馬は有野村の藤原家からすぐって来た栗毛の
逸物
(
いちもつ
)
であります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女房は、君には、すぎたる
逸物
(
いちもつ
)
なんだろう。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
辰巳
(
たつみ
)
の
方
(
かた
)
には、ばか
鍋
(
なべ
)
、
蛤鍋
(
はまなべ
)
などと
言
(
い
)
ふ
逸物
(
いちもつ
)
、
一類
(
いちるゐ
)
があると
聞
(
き
)
く。が、
一向
(
いつかう
)
に
場所
(
ばしよ
)
も
方角
(
はうがく
)
も
分
(
わか
)
らない。
湯どうふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「あ。これは
逸物
(
いちもつ
)
らしい。願わくば相国の
御前
(
おんまえ
)
で、ひと当て試し乗りに乗ってみたいものですな」
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お夏の
一諾
(
いちだく
)
を
重
(
おもん
)
ぜしめ、火事のあかりの水のほとりで、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の境に
誘
(
いざな
)
った希代の
逸物
(
いちもつ
)
は、制する者の無きに乗じて、何と思ったか細溝を
一跨
(
ひとまた
)
ぎに脊伸びをして高々と跨ぎ越して
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日頃の
稽古
(
けいこ
)
にも、鎧の二領三領は
射貫
(
いぬ
)
き、総じてあだ矢を射る者などはおりません。馬は、牧の内から心まかせに
逸物
(
いちもつ
)
を選び取り、朝夕、山林や野を駈けて、
鍛
(
きた
)
えに鍛えた駒ぞろいです。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、天から降った、それほどの
逸物
(
いちもつ
)
だから、竜の性を帯びたらしい、非常な
勢
(
いきおい
)
で水を
刎
(
は
)
ねると、葉うらに留まった、秋近い蛍の驚いて、はらはらと飛ぶ光に、
鱗
(
うろこ
)
がきらきらと青く光りました。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
バラバラと
樹立
(
こだ
)
ちへはいった忍剣は、
梅雪
(
ばいせつ
)
一
党
(
とう
)
が乗りすてた
駒
(
こま
)
のなかから、
逸物
(
いちもつ
)
をよって、チャリン、チャリン、チャリン、と
轡金具
(
くつわかなぐ
)
の音をひびかせて、伊那丸のまえまで
手綱
(
たづな
)
をとってくると
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逸
常用漢字
中学
部首:⾡
11画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“逸”で始まる語句
逸
逸早
逸見
逸話
逸品
逸足
逸散
逸楽
逸事
逸人