“辨(わきま)” の例文
謝肉祭(カルネワレ)の時の競馬(くらべうま)の費用(ものいり)をも例の如く辨(わきま)へ、又定の日には加特力(カトリコオ)教徒の寺に往きて、宗旨がへの説法をも聽くべし、と願ふことなり。
鐵之助は場所柄も辨(わきま)へず、妙な苦笑ひを噛み殺すのです。恐らく、板塀の穴の秘密は、その邊に潜んでゐると思ひ込んでゐるのでせう。
われを君が仇(あだ)と思(おぼ)し給ふ勿(なか)れ、われは君のいづこに在(いま)すかを辨(わきま)へず、また見ず、また知らず、唯(たゞ)この涙に暮(く)るゝ面(おもて)を君の方に向けたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
一向に辨(わきま)へずして感應院後住(ごぢう)の儀は存じも寄(よら)ず爰にされば一(ひとつ)の御願ひあり何卒當年(たうねん)より五ヶ年の間諸國修行致し諸寺(しよじ)諸山(しよざん)の靈場(れいぢやう)を踏(ふみ)難行苦行を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ねがはくは我等のために汝の口を彼にあらはし、彼をして汝のかくす第二の美を辨(わきま)へしめよ。是彼等の歌なりき —一三八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
道理を辨(わきま)へない怒り方や彼女の莫迦(ばか)らしい、矛盾した、嚴しい命令に苦しめられることなどを耐へてはゐないから
其處(そこ)をよく辨(わきま)へて、正(たゞ)しく働(はたら)いて貰(もら)ひたい。爪(つめ)の垢(あか)ほどでも、不正(ふせい)があつたら、この但馬(たじま)は決(けつ)して默(だま)つてゐない。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
と前後(ぜんご)も辨(わきま)へず讀(よ)んで居(ゐ)ると、私(わたし)の卓子(つくゑ)を横(よこ)に附着(つきつ)けてある件(くだん)の明取(あかりとり)の障子(しやうじ)へ、ぱら/\と音(おと)がした。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
只(たゞ)蒿雀(あをじ)は冬(ふゆ)も春(はる)も辨(わきま)へぬやうに、暖(あたゝ)かい日南(ひなた)から隱氣(いんき)な竹(たけ)の林(はやし)を求(もと)めて低(ひく)い小枝(こえだ)を渡(わた)つて下手(へた)な鳴(な)きやうをして、さうして猶且(やつぱり)日南(ひなた)へ出(で)て土(つち)をぴよん/\と跳(は)ねた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いったいものの道理を、真に辨(わきま)えないから、いろんな悶(もだ)え、悩み、すなわち煩悩(ぼんのう)が出てくるのですが、愚痴は、つまりものの道理をハッキリ知らないから起こるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
幾度となく繰返されし御仰(おんおほせ)、六波羅上下の武士より、我れ一人を擇ばれし御心の、我は只〻忝なさに前後をも辨(わきま)へざりしが、今の維盛卿の有樣、正に御遺言に適中せり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「村長の女房は行儀作法を辨(わきま)へて居らん。わしが訪ねて行つても寢卷に細帶をして出て來たりして。」と、島田が罵(ののし)つてゐたことを翌日わざ/\知らせに來た女があつた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
私(わたくし)はこの小娘(こむすめ)の下品(げひん)な顏(かほ)だちを好(この)まなかつた。それから彼女(かのぢよ)の服裝(ふくさう)が不潔(ふけつ)なのもやはり不快(ふくわい)だつた。最後(さいご)にその二等(とう)と三等(とう)との區別(くべつ)さへも辨(わきま)へない愚鈍(ぐどん)な心(こころ)が腹立(はらだ)たしかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若しこの願かなはゞ、競馬の費、これに勝ちたるものに與ふる賞、天鵞絨の幟の代(しろ)、皆法(かた)の如く辨(わきま)へ候はんといふ。議官(セナトオレ)は頷きぬ。
其方儀(そのはうぎ)天一坊へ一味(いちみ)致し謀計(ぼうけい)虚言(きよげん)を以て百姓町人を欺(あざむ)き金銀を掠取り衣食住に侈奢(おごり)身の程をも辨(わきま)へず上を蔑(ないが)しろに致たる段重々不屆に付死罪申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わが此時の心の惑ひはわが過ぎし處の何なるやを辨(わきま)へざる愚なる人々ならではしりがたし 九一—九三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
典型的(てんけいてき)な古風な女房でしたが、石女(うまずめ)特有の神經質な冷たいところがあり、放縱(はうじゆう)で作法も禮儀も辨(わきま)へないお照に取つては何が何でも煙たい存在であり、それに、天文の研究と稱して
乃(すなは)ち人をして才人巨源を何処(いづこ)かの逆旅(げきりよ)に刺殺せしめたりと言ふ。按(あん)ずるに自殺に怯(けふ)なるものは、他殺にも怯なりと言ふべからず。巨源のこの理を辨(わきま)へず、妄(みだ)りに今人を罵つて畢(つひ)に刀下の怨鬼(えんき)となる。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その時老女の車上の賊に向ひて語りしは、何事にかありけん、例の怪しき詞なれば、傍聽(かたへぎき)せしものは辨(わきま)へ知らん由なかりき。
預(あづか)る者は器量(きりやう)なくて有べきや斯樣(かやう)なる事辨(わきま)へぬ其方にても有可ざるに事の此所(ここ)に及べるは眞(まこと)に疑(うたが)はしきことどもなり是其方に疑ひの掛(かゝ)り糺問(きうもん)せざるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翁屋小左衞門が慈悲人情を辨(わきま)へるといふ話は、斯(こ)んなところから生れて來たのでせう。
その弟の駒吉は、さすがに堅い文字も讀み物の道理も辨(わきま)へてゐるだけに
小豆澤小六郎は場所柄も辨(わきま)へず笑ひ出すのです。