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ふりがな文庫
“
蹌
(
よろ
)” の例文
何ものかに、押し返されるように、彼は、たたたと、後へ戻った——いや
蹌
(
よろ
)
めいた。そして、樹の蔭にかくれて、あらい息を、肩で
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
立ち上つた勝平は、フラ/\と
蹌
(
よろ
)
めいてやつと踏み堪へた。彼はその凄じい眸を、真中に据ゑながら、瑠璃子の方へヂリ/\と迫つて来た。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
とドンと突きましたから、小三郎はヨロ/\と
蹌
(
よろ
)
けて泥だらけの杖を
彼
(
か
)
の伽羅という結構な
身装
(
みなり
)
へ当て、泥を附けましたので
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、ありっ
丈
(
た
)
けの力をこめて相手の頭上に恐しい一撃を加えた。鈍い骨の砕ける様な音と共に闖入者は
蹌
(
よろ
)
めくと、そのまま床に倒れてしまった。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
コラサッと、この時、
笊
(
ざる
)
を前のめりに、ひょろひょろと、横っ飛びに
蹌
(
よろ
)
けかかった黒んぼがある。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
暗い雲の
垂
(
た
)
れ下った
雨催
(
あまもよ
)
いの
宵
(
よい
)
であった。片側町の寂しい広場を歩いていると、
歩行
(
あるき
)
べたのお銀は、
蹌
(
よろ
)
けそうになっては、わざとらしい声を立てて笹村の手に
掴
(
つか
)
まった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ところが、そうして何度か
蹌
(
よろ
)
めくにつれて、長方形をした壁灯の残像が幾つとなく網膜の上に重なってゆくのだ。ねえ支倉君、ここまで云えば、これ以上を重ねる必要はあるまい。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二、三間も
蹌
(
よろ
)
めいたあげく、腰をついたが、起ち上がるが早いか、後ろを見せて駈け出した。その迅さはちょっと六部を狼狽させた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
立ち上った勝平は、フラ/\と
蹌
(
よろ
)
めいてやっと踏み
堪
(
こら
)
えた。彼はその
凄
(
すさま
)
じい眸を、真中に据えながら、瑠璃子の方へジリ/\と迫って来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
亥太郎が拳骨を固めて大伴を打ちました時、
流石
(
さすが
)
の大伴蟠龍軒もひょろ/\として
蹌
(
よろ
)
めきましたが、
此方
(
こちら
)
も剣術の先生で、スーッと抜きました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
白衣の行者は、やおら滝壺を這い上がって、水を含んだ黒髪を絞って後ろへ束ね、袖から
雫
(
しずく
)
を垂らしながら、男の側に
蹌
(
よろ
)
めいて来た。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一角が
蹌
(
よろ
)
けながら、四畳半の床の上に横になった様子でございますから、そっと
中仕切
(
なかじきり
)
の
襖
(
ふすま
)
を
閉
(
た
)
って、台所の杉戸を締め
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そう
云
(
い
)
いながら、再び
猿臂
(
えんぴ
)
を延して、瑠璃子の柔かな、やさ肩を
掴
(
つか
)
もうとしたが、
軽捷
(
けいしょう
)
な彼女に、ひらりと身体を避けられると、酒に酔った足元は、ふら/\と二三歩
蹌
(
よろ
)
めいて
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
わっ——と逃げる子供の群れに突かれて、桑畑の
畔
(
くろ
)
に
蹌
(
よろ
)
めいて、痛そうに眼をうるませていた若い女が、ふと、足軽達の眼にとまった。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と担いで見ましたが、多助は肩に力がありませんから
蹌
(
よろ
)
めきながら担ぎ出す。圓次は馬を引きながら、シャン/\/\/\/\と庚申塚へ掛って来る。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
再び
猿臂
(
ゑんぴ
)
を延して、瑠璃子の柔かな、やさ肩を掴まうとしたが、軽捷な彼女に、ひらりと身体を避けられると、酒に酔つた足元は、ふら/\と二三歩
蹌
(
よろ
)
めいて、のめりさうになつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
なにか、いいかけたと思うと、彼の引っ張っていた杖の先を離して、沢の石ころや
草叢
(
くさむら
)
の中に、
蹌
(
よろ
)
りと、音もなく
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
してしまった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
蹌
(
よろ
)
けながらぶらり/\
行
(
ゆ
)
くのを、危いからお菊も
後
(
あと
)
から雪洞を提げて外の方へ出ると花壇があります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と下ろした太刀は斜めに
外
(
そ
)
れて、機を得た作左衛門の抜き撃ちは誤またずに、
蹌
(
よろ
)
けた彼の腰車を、見事に
摚
(
どう
)
と斬って伏せた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仲人
(
ちゅうにん
)
だと云うのに聞入れず私を打ちに掛ったから、まご/\すると打たれるから
引外
(
ひっぱず
)
したら
蹌
(
よろ
)
けたので
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
屋根の上の外記が、死を決して、雲霧へ、跳びかかろうとした瞬間に、その震動が、二人をぐらっと
蹌
(
よろ
)
めかしたのである。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と無理に
引摺
(
ひきず
)
り込んだから仕方なしにひょろ/\
蹌
(
よろ
)
けながら
上
(
あが
)
り
口
(
ぐち
)
へ手を突くと、
臀
(
しり
)
を持って押しますから、厭々上って来ると、柳田典藏は嬉しいが満ちてはっと赤くなり
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
犬千代が、槍を向け直した時、敵か味方か仰向けに、ぶっ
仆
(
たお
)
れた者がある。その死骸につまずいて、犬千代も
蹌
(
よろ
)
めいた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
通常の者なら
蹌
(
よろ
)
けて倒れるところでございますが、小三郎は柔術も剣術も名人な人ゆえ
力足
(
ちからあし
)
を踏止めて、懐中より一節切を抜出し、仙太郎の利腕をモロにグッと落しますと
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と言っても、重蔵は例の
跛行
(
びっこ
)
なので、ややもすると
蹌
(
よろ
)
めくようになる。それを心なき往来の者は指差して笑っていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
話かわって飯島平左衞門は孝助を
門外
(
もんそと
)
に出し、急ぎ血潮
滴
(
した
)
たる槍を杖とし、蟹のように成ってよう/\に縁側に這い上がり、
蹌
(
よろ
)
めく足を踏みしめ踏みしめ、段々と廊下を伝い
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、前の敵へ向けていた刀で、平八郎の腰を撲り、自分も、片足立ちに
蹌
(
よろ
)
めいて、隅の板壁へ勢いよく体をぶつけた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
割合に
肥
(
ふと
)
って居て頭が大きいから、駈けると
蹌
(
よろ
)
けて
転覆
(
ひっくりかえ
)
る事がありますが、
一寸
(
ちょっと
)
見ると写し
画
(
え
)
の口上云い見たいで、なんだか化物屋敷へ出る一ツ目小僧の茶給仕のようでありますが
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
死骸がまだ
蹌
(
よろ
)
めいているうちに、彼の剣は、もう次の何ものかを待っている。彼の髪は、
鷲
(
わし
)
の
逆毛
(
さかげ
)
のように立って、満山皆敵と
観
(
み
)
るもののようであった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ナニー、安ヤイ
下
(
おろ
)
せ、生意気なことを云うな、
汝
(
てめえ
)
ッちは酒を
喰
(
くら
)
ってヒョロ/\
蹌
(
よろ
)
けて歩くから悪いんだ、其の瓢箪が百両百貫するもんか知らねえが、
手前
(
てめえ
)
が打っ付けて置きゃアがッて何を
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
然し大地に立ってみると、大地が波のように揺れる気がして、物に
掴
(
つか
)
まっていないと
蹌
(
よろ
)
めくような
眩
(
めま
)
いを覚えた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蹌
(
よろ
)
めく
機
(
はず
)
みに又市が
小鬢
(
こびん
)
をはすって
頭
(
かしら
)
へ少し切込まれたが、又市は覚えの腕前返す刀に典藏が
肱
(
ひじ
)
の
辺
(
あたり
)
へ切込みますと、典藏は驚き、抜刀を持ちながらばら/\/\/\山から
駈下
(
かけお
)
りました。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
猪牙舟に
番
(
つる
)
んで従いて来た一
艘
(
そう
)
の
屋形船
(
やかた
)
がある。それがいきなり
舳
(
みよし
)
をぶつけて来たかと思うと、猪牙舟の船頭はわざと、勢いよく数右衛門のそばに
蹌
(
よろ
)
けて
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうも実に
嬋娟窈窕
(
せんけんようちょう
)
たる美人だな、どうも盛んなる所美人ありと云うが、実にないな、
彼
(
あ
)
のくらいな婦人は二人とは有るまい、どうもその
蹌
(
よろ
)
けながら赤い顔をして
行
(
ゆ
)
く有様はどうも
耐
(
たま
)
らぬな
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蹌
(
よろ
)
めきながら又八は顔をかかえた。そして乳を離れてから今日まで見たことのない怖ろしい母の顔を彼は見た。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と受けましたが
剛
(
ひど
)
い奴で、中指と
無名指
(
くすりゆび
)
の間をすっと貫かれたが、其の掌で槍の柄を捕まえて、ぐッと全身の力で引きました。前次公は
蹌
(
よろ
)
めいて前へ膝を突く処を、權六が血だらけの手で
捕
(
おさ
)
え付け
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わら
苞
(
づと
)
に巻いてある鉢だの皿だのは、くずれ落ちて粉々に砕けたし、日吉の体も、手車と一緒に
蹌
(
よろ
)
めいた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と才槌を
提
(
ひっさ
)
げて、
蹌
(
よろ
)
めく足を
蹈
(
ふ
)
みしめ、棚の側へ摺寄って
行灯
(
あんどう
)
の蔭になるや否や、コツン/\と
手疾
(
てばや
)
く
二槌
(
ふたつち
)
ばかり当てると、忽ち
釘締
(
くぎじめ
)
の留は放れて、遠州透はばら/″\になって
四辺
(
あたり
)
へ飛散りました。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし数歩にしてすぐ
蹌
(
よろ
)
めいて仆れかけたのはぜひもない。脚も手も、
節
(
ふし
)
のみ高い竹竿のような体である。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とひょろ/\
蹌
(
よろ
)
けながら肩へ
捉
(
つら
)
まる。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ダ、ダ、ダ、ダッ、と橋板を荒くふみ鳴らして、うしろへ
蹌
(
よろ
)
けて行ったかと思うと、
真鍮鐺
(
しんちゅうこじり
)
を
抛
(
ほう
)
り飛ばして、
腸
(
はらわた
)
をつかみ出すように引っこ抜いた刃渡りの鋭い
匕首
(
あいくち
)
。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
蹌
(
よろ
)
ける途端に
袂
(
たもと
)
や懐から瓜が出る。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
足もとの危ないのが危ないのへ
絡
(
から
)
みつく。藤吉郎はその中に揉まれたまま、土間のうちへ
蹌
(
よろ
)
めき込む。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ひょろ/\と
蹌
(
よろ
)
けました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ともすれば、信長の駒脚に、捨てられもせんと、近習の面々は、のめり
蹌
(
よろ
)
めくばかり駈けた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あッ——
蹌
(
よろ
)
めいてきた雲霧の首すじへ、二度目の十手が、その頸動脈を狙って走ったが、眼のわるい外記、手元が狂って針屋の雲霧に、かえってその腕くびを掴まれたと思うと
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
咄嗟
(
とっさ
)
、あぶなかったのは釘勘の
頭蓋骨
(
ずがいこつ
)
でした。
呼子笛
(
よびこ
)
を口から放した途端に、鬼神のごとく怒った日本左衛門が、身を
蹌
(
よろ
)
めかせた反動を抜き打ちにかざした
長船
(
おさふね
)
の大刀に乗せて
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、五、六歩ほど、
蹌
(
よろ
)
めきつつ歩き出したが、もう一度、典厩のほうを振返って
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幾度か、瀬兵衛のすがたは、朱をあびて、
蹌
(
よろ
)
めいたが、
豹
(
ひょう
)
のごとく、躍ってはまた、敵を
斃
(
たお
)
した。——というよりは、遂には、口をもって、敵の
喉笛
(
のどぶえ
)
へ噛みつくような勢いだった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
次には、
蹌
(
よろ
)
めいて、いきなりわが子の体へ、
縋
(
すが
)
りついた。水を与え、名を呼んで、老母がその体を揺り動かすと、権之助は息をふき返した。——そして茫然と坐っている武蔵を見ると
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蹌
漢検1級
部首:⾜
17画
“蹌”を含む語句
蹌踉
蹌々
踉蹌
蹌々踉々
蹌踉々々
蹌跟
蹌踉蹌踉
跟蹌
踉々蹌々
踉蹌中
蹌踉状
蹌這