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蟇
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ひきがえる
ふりがな文庫
“
蟇
(
ひきがえる
)” の例文
まったく無音無色のなかに無神経な冬眠をジッとつづけている
蟇
(
ひきがえる
)
みたいなものです。蟇といわなければ神様のような人間になっている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると花の列のうしろから、一ぴきの茶いろの
蟇
(
ひきがえる
)
が、のそのそ
這
(
は
)
ってでてきました。タネリは、ぎくっとして立ちどまってしまいました。
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
にじり上がりの屏風の端から、鉄砲の
銃口
(
すぐち
)
をヌッと突き出して、毛の生えた
蟇
(
ひきがえる
)
のような石松が、目を光らして
狙
(
ねら
)
っております。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殺風景な下宿の庭に
鬱陶
(
うっとう
)
しく生いくすぶった
八
(
や
)
つ
手
(
で
)
の葉蔭に、夕闇の
蟇
(
ひきがえる
)
が出る頃にはますます悪くなるばかりである。何をするのも
懶
(
ものう
)
くつまらない。
やもり物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
木魚のおじいさんは目をクシャクシャとしばたたいて、
蟇
(
ひきがえる
)
のようにゆったりしている。だが、結局はやっぱり負けた。若い少尉はころがって笑った。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
夏の
夕
(
ゆうべ
)
には縁の下から
大
(
おおき
)
な
蟇
(
ひきがえる
)
が湿った
青苔
(
あおごけ
)
の上にその腹を
引摺
(
ひきず
)
りながら歩き出る。家の
主人
(
あるじ
)
が
石菖
(
せきしょう
)
や金魚の水鉢を縁側に置いて楽しむのも大抵はこの手水鉢の近くである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
即
(
すなわ
)
ち
彼
(
か
)
の
体
(
たい
)
を
将来
(
しょうらい
)
、
草
(
くさ
)
、
石
(
いし
)
、
蟇
(
ひきがえる
)
の
中
(
うち
)
に
入
(
い
)
って、
生活
(
せいかつ
)
すると
云
(
い
)
うことを
以
(
もっ
)
て
慰
(
なぐさ
)
むることが
出来
(
でき
)
る。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
蟇
(
ひきがえる
)
は鳴きたてて夜を招き入れ、ヨタカの歌は水のうえをさざなみ立てる風に乗ってつたわる。風にさわぐハンノキやポプラの葉に共感してほとんどわたしの息はつまるようだ。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
筏の上では、男の子の鮎子さんが、
蟇
(
ひきがえる
)
のように筏にしがみついて頑張りつづけている。
キャラコさん:07 海の刷画
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
寝衣
(
ねまき
)
に着代えた入道の姿は、
蟇
(
ひきがえる
)
が人間の形をして、歩いているとしか思われなかった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
シャムとフランスとイタリアとブルガリアとの酔っぱらい。そうして、ただ参木だけは、椅子の頭に肱をついたまま、このテープの網に伏せられた各国人の肉感を、
蟇
(
ひきがえる
)
のように見詰めていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
最も美しい
石竹色
(
せきちくいろ
)
は確かに
蟇
(
ひきがえる
)
の舌の色である。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蟇
(
ひきがえる
)
——なにを言ってやがるんだ、あの
女
(
あま
)
は。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
古庭を魔になかへしそ
蟇
(
ひきがえる
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
蟇
(
ひきがえる
)
が出て
鼬
(
いたち
)
の
生血
(
いきち
)
を吸ったと言っても、
微笑
(
ほほえ
)
んでばかりいるじゃありませんか。早く安心がしたくもあるし、こっちは
急
(
あせ
)
って
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大きな山
蟻
(
あり
)
が逃出すのを面白がる。
或
(
ある
)
時は
蟇
(
ひきがえる
)
と
睨
(
にら
)
めっこしながら盥の中にかしこまっている。涼しい風にくしゃみをするとおばあさんが声をかける。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
天皇の座にあって生れながら誰をも下に見つけている
眼
(
まな
)
ざしなのである。だから能登の反抗にみちた眼気も、帝には
蟇
(
ひきがえる
)
ほどな感もある容子ではない。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
疋
(
ぴき
)
の
蟇
(
ひきがえる
)
がそこをのそのそ
這
(
は
)
って居りました。若い木霊はギクッとして立ち止まりました。
若い木霊
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
身長
(
せい
)
は低いがタップリと肥え、巨大な
蟇
(
ひきがえる
)
を連想させる。半白の髪を肩へ懸け、黒地無紋の
帷子
(
かたびら
)
を着し、黒地の小袴を穿いている。一見卑しそうに見えていて、しかも非常に高貴なのである。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さて、……
町奉行
(
まちぶぎょう
)
が
白洲
(
しらす
)
を立てて驚いた。
召捕
(
めしと
)
つた屑屋を送るには、槍、鉄砲で列をなしたが、奉行
役宅
(
やくたく
)
で
突放
(
つっぱな
)
すと
蟇
(
ひきがえる
)
ほどの働きもない男だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
離家
(
はなれ
)
の垣根の隅でポッチリずつの硫黄を製煉し、研究している姿が
蟇
(
ひきがえる
)
のように悲しかった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして思わず
眼
(
め
)
をこすりました。そこは全くさっき
蟇
(
ひきがえる
)
がつぶやいたような景色でした。
若い木霊
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
五助は
服
(
きもの
)
はだけに大の字
形
(
なり
)
の
名残
(
なごり
)
を見せて、
蟇
(
ひきがえる
)
のような
及腰
(
およびごし
)
、顔を突出して目を
睜
(
みは
)
って、障子越に紅梅屋敷の
方
(
かた
)
を
瞻
(
みつ
)
めながら、がたがたがたがた
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
犬神、蛇を飼う
婦
(
おんな
)
、
蟇
(
ひきがえる
)
を抱いて寝る娘、
鼈
(
すっぽん
)
の首を集める坊主、
狐憑
(
きつねつき
)
、猿小僧、骨なし、……猫屋敷。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
次の間と隔ての
襖際
(
ふすまぎわ
)
……また柱の根かとも思われて、カタカタ、カタカタと響く——あの
茶立虫
(
ちゃたてむし
)
とも聞えれば、壁の中で
蝙蝠
(
こうもり
)
が鳴くようでもあるし、縁の下で、
蟇
(
ひきがえる
)
が
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
右の一軒家の軒下に、こう崩れかかった
区劃石
(
くぎりのいし
)
の上に、ト天を
睨
(
にら
)
んだ、腹の上へ両方の
眼
(
まなこ
)
を
凸
(
なかだか
)
、シャ! と構えたのは
蟇
(
ひきがえる
)
で——手ごろの
沢庵圧
(
たくあんおし
)
ぐらいあろうという
曲者
(
くせもの
)
。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
崖にはむらむらと
靄
(
もや
)
が立って、
廂合
(
ひあわい
)
から星が、……いや、目の光り、敷居の上へ
頬杖
(
ほおづえ
)
を
支
(
つ
)
いて、
蟇
(
ひきがえる
)
が
覗
(
のぞ
)
いていそうで。
婦人
(
おんな
)
がまた
蒼黄色
(
あおぎいろ
)
になりはしないか、と
密
(
そっ
)
と横目で見ましたがね。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
色情事
(
いろごと
)
に
孕
(
はら
)
むなあ野暮の骨頂だ、ぽてと来るとお座がさめる、
蟇
(
ひきがえる
)
の食傷じゃあねえが、お産の時は
腸
(
はらわた
)
がぶら
下
(
さが
)
りまさ、口でいってさえ
粋
(
いき
)
でねえね、
芸妓
(
げいしゃ
)
が孕んで
可
(
い
)
いものか悪いものか
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あたかも
大
(
おおい
)
なる
蟇
(
ひきがえる
)
の、明け
行
(
ゆ
)
く海から
掻窘
(
かいすく
)
んで、
谷間
(
たにま
)
に
潜
(
ひそ
)
む
風情
(
ふぜい
)
である。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小鳥は
比羅
(
びら
)
のようなものに包んでくれた。比羅は裂いて汽車の窓から——小鳥は——包み直して宿へ着いてから裏の川へ流した。が、
眼張魚
(
めばる
)
は、
蟇
(
ひきがえる
)
だと
諺
(
ことわざ
)
に言うから、血の頬白は、
鯎
(
うぐい
)
になろうよ。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ともすれば咲き満ちたうつぎの花の中に隠れ、顕れ、隠れ、顕れて、道を求めて駆けるのを、拓は追慕うともなく後を
跟
(
つ
)
けて、ややあって一座の巌石、形
蟇
(
ひきがえる
)
の
天窓
(
あたま
)
に似たのが
前途
(
ゆくて
)
を
塞
(
ふさ
)
いで、白い花は
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蹲
(
つくば
)
って雨上りに出た
蟇
(
ひきがえる
)
という身で居る。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蟇
漢検1級
部首:⾍
16画
“蟇”を含む語句
蝦蟇
蟇蛙
蟇六
蟇口
蝦蟇口
蟇目
蝦蟇仙人
大蝦蟇口
蟇田素藤
大蟇
蝦蟇法師
蝦蟇出
蝦蟇陵下
蟇公
蟇口型
蟇然
蟇股
蝦蟇図経
内蟇
笠懸蟇目
...