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藪蚊
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やぶか
ふりがな文庫
“
藪蚊
(
やぶか
)” の例文
庭も広く、草も深いのに、秋の虫が多く聴かれないのは、わたしの心を寂しくさせた。虫が少ないと共に、
藪蚊
(
やぶか
)
も案外に少なかった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それはもちろん異常なる緊張にもよることだったけれど、一つには夏の戸外にはとても
藪蚊
(
やぶか
)
が沢山いることを忘れていたせいもあった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「二三日釣らずに居ましたが、この邊は山の手でも
藪蚊
(
やぶか
)
の多いところで、矢張り秋の蚊が出て來るから、今夜は釣つて見ようと仰しやつて——」
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
はては
傍
(
そば
)
に
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
のいることをさえも
忘
(
わす
)
れた
如
(
ごと
)
く、
独
(
ひと
)
り
頻
(
しき
)
りにうなずいていたが、ふと
向
(
むこ
)
う
臑
(
ずね
)
にたかった
藪蚊
(
やぶか
)
のかゆさに、
漸
(
ようや
)
くおのれに
還
(
かえ
)
ったのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
が、その門の下は、斜めにつき出した高い
檐
(
のき
)
に、月も風もさえぎられて、むし暑い暗がりが、絶えまなく
藪蚊
(
やぶか
)
に刺されながら、
酸
(
す
)
えたようによどんでいる。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
わたくしはラフカヂオ・ハーンが『怪談』の中に、赤坂紀の国坂の暗夜のさま、また市ヶ谷
瘤寺
(
こぶでら
)
の墓場に
藪蚊
(
やぶか
)
の多かった事を記した短篇のあることを忘れない。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
髯
(
ひげ
)
の長い、
紗
(
しゃ
)
の
道行触
(
みちゆきぶり
)
を着た
中爺
(
ちゅうじ
)
いさんが、「ひどい
蚊
(
か
)
ですなあ」と云うと、隣の若い男が、「なに
藪蚊
(
やぶか
)
ですから、明りを附ける頃にはいなくなってしまいます」
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ところが
生憎
(
あいにく
)
な事に舞台の背後が、一面の竹藪になっている。春先ではあるがダンダラ
縞
(
じま
)
のモノスゴイ
藪蚊
(
やぶか
)
がツーンツーンと幾匹も飛んで来て、筆者の鼻の先を
遊弋
(
ゆうよく
)
する。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そこいらが掘り返されるたびに、
生々
(
なまなま
)
しい土の臭気が半蔵の鼻をつく。工事が始まったのだ。両村の百姓は、
藪蚊
(
やぶか
)
の襲い来るのも忘れて、いずれも土塚の周囲に集合していた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
五月、六月、七月、そろそろ
藪蚊
(
やぶか
)
が出て来て病室に白い蚊帳を吊りはじめたころ、私は院長の指図で、千葉県船橋町に転地した。海岸である。町はずれに、新築の家を借りて住んだ。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
凪
(
なぎ
)
に近い暑さ。風鈴が時々ものうく鳴る。明日はこの家を出たいものだ。何しろ、蚊が多いのはやりきれない。台所をかたづけて、水道で躯を拭いていると、ひどい
藪蚊
(
やぶか
)
にさされる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
父の大きな
吐息
(
といき
)
が正行にもこのとき耳にわかる気がした。それほど正成の眉は、子にとって何かむずかしいものに見え、かたわらの扇をとって、
藪蚊
(
やぶか
)
を追い、その半開きの扇のさきで
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
要は流しに出ていると体じゅうを
藪蚊
(
やぶか
)
が喰うので、ざっとシャボンも使わずに汗を洗い落してから丁子の湯の中に浸りきっていたが、そうしていても蚊は相変らず首の周りへ襲って来る。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
藪蚊
(
やぶか
)
が
彼等
(
かれら
)
の
日
(
ひ
)
に
燒
(
や
)
けた
赤
(
あか
)
い
足
(
あし
)
へ
針
(
はり
)
を
刺
(
さ
)
して、
臀
(
しり
)
がたはら
胡頽子
(
ぐみ
)
の
樣
(
やう
)
に
血
(
ち
)
を
吸
(
す
)
うて
膨
(
ふく
)
れても、
彼等
(
かれら
)
はちくりと
刺戟
(
しげき
)
を
與
(
あた
)
へられた
時
(
とき
)
に
慌
(
あわ
)
てゝはたと
叩
(
たゝ
)
くのみで
蚊
(
か
)
が
逃
(
に
)
げようとも
知
(
し
)
らぬ
顏
(
かほ
)
である。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
昨夜
藪蚊
(
やぶか
)
に食われて
碌々
(
ろくろく
)
眠ってない顔に、
眩
(
まぶ
)
しい
朝暾
(
あさひ
)
が当ってくると、
堪
(
たま
)
らなく眠くなってきて……娘たちにも私の疲れているのが、わかるのでしょう、一眠りして行けと、勧めてくれるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
昨夜この小屋の主人を待つあいだ、あの川ばたの建築場で、
焚火
(
たきび
)
を囲み、
藪蚊
(
やぶか
)
をうち殺しながら相談した結論を、この一隊は実行しようとしているのだ。行こう、行こう、とうわずった声で叫んだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
かれ
先刻
(
さきに
)
泰助の後を跟け来りて、この座敷の縁の下に潜みており、散々
藪蚊
(
やぶか
)
に責められながら、
疼痛
(
いたみ
)
を
堪
(
こら
)
うる
天晴
(
あっぱれ
)
豪傑、かくてあるうち
黄昏
(
たそが
)
れて、森の中暗うなりつる頃、白衣を着けたる一人の婦人
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
久「
藪蚊
(
やぶか
)
のように寝床まで飛んでめえり」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
老僧の骨刺しに来る
藪蚊
(
やぶか
)
かな
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
藪蚊
(
やぶか
)
が
螫
(
さ
)
しても
臥
(
ね
)
てばかり。
とんぼの眼玉
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
藪蚊
(
やぶか
)
こそ現れて
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「二三日釣らずにいましたが、この辺は山の手でも
藪蚊
(
やぶか
)
の多いところで、やはり秋の蚊が出て来るから、今夜は釣ってみようとおっしゃって——」
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
虫のように、なんの
造作
(
ぞうさ
)
もなく死んでしまう。——こんな取りとめのない考えが、
暗
(
やみ
)
の中に鳴いている
藪蚊
(
やぶか
)
のように、四方八方から、意地悪く心を刺して来る。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人は
樹木
(
じゅもく
)
多ければ山の手は夏のさかりにしくはなけんなど思ふべけれど、
藪蚊
(
やぶか
)
の苦しみなき
町中
(
まちなか
)
の
住居
(
すまい
)
こそ夏はかへつて
物干台
(
ものほしだい
)
の
夜凉
(
よすずみ
)
縁日
(
えんにち
)
のそぞろ歩きなぞ
興
(
きょう
)
多けれ。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
家のなかにはまだ
燈火
(
あかり
)
もつけていないらしく、そこらには
藪蚊
(
やぶか
)
の唸る声が頻りにきこえます。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あれを刈りに行くものは、腰に
火縄
(
ひなわ
)
を
提
(
さ
)
げ、それを
蚊遣
(
かや
)
りの代わりとし、襲い来る無数の
藪蚊
(
やぶか
)
と戦いながら、高い
崖
(
がけ
)
の上に
生
(
は
)
えているのを下から刈り取って来るという。あれは
熊笹
(
くまざさ
)
というやつか。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ぴしゃんと
錠
(
じょう
)
をおろされて、それっきり、以来、十箇月、桜の花吹雪より
藪蚊
(
やぶか
)
を経て、しおから
蜻蛉
(
とんぼ
)
、紅葉も散り、ひとびと黒いマント着て
巷
(
ちまた
)
をうろつく師走にいたり、やっと金策成って、それも
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「夜は
藪蚊
(
やぶか
)
、昼はこの炎天」
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長き日を歩みつづけて汗ばむ額も寺の庭に入れば新樹の風ただちにこれを拭ひ、木の根石の端に腰かくるも
藪蚊
(
やぶか
)
いまだ来らず、
醜草
(
しこぐさ
)
なほはびこらざれば蛇のおそれもなし。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
荒い
笹刈
(
ささが
)
りには
蚋
(
ぶよ
)
や
藪蚊
(
やぶか
)
を防ぐための
火繩
(
ひなわ
)
を要し、それも恵那山のすその谷間の方へ一里も二里もの山道を踏まねばならないほど骨の折れる土地柄であるが、多くのものはそれすらいとわなかった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“藪蚊(ヤブカ)”の解説
ヤブカ(藪蚊、薮蚊、豹脚蚊)はカ科ヤブカ属(学名: Aedes)に分類されるカである。イエカ類とならび、普通に見られる吸血性のカである。
(出典:Wikipedia)
藪
漢検準1級
部首:⾋
18画
蚊
常用漢字
中学
部首:⾍
10画
“藪”で始まる語句
藪
藪入
藪鶯
藪蛇
藪畳
藪蔭
藪原
藪睨
藪地
藪柑子