トップ
>
茫乎
>
ぼんやり
ふりがな文庫
“
茫乎
(
ぼんやり
)” の例文
私も
茫乎
(
ぼんやり
)
立って大勢の人の向いて居る方を眺めますと、南の空に火の粉がボーボー舞い上って、立って居る所は風上で有りましたが
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
代助は今読み切ったばかりの薄い洋書を机の上に開けたまま、
両肱
(
りょうひじ
)
を突いて
茫乎
(
ぼんやり
)
考えた。代助の頭は最後の幕で一杯になっている。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一屑低い雲は、濃い影の堤のやうに並んで、水の四方を取り圍み、遠い方をばとりとめのない
茫乎
(
ぼんやり
)
したものにさせてゐた。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
松岡はそれを聞きすますと自分の部屋へ取って返して、
茫乎
(
ぼんやり
)
と時を過した。その内に木炭をカンヷスになすり始めた。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あとにお春はしばしが程は、悪夢を見ている人のようにただ
茫乎
(
ぼんやり
)
としたまま坐っていたが、やがて前へと身を投げて、よよと哀しく
哭
(
な
)
き崩れました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
茫乎
(
ぼんやり
)
として、水の影の如く薄れて——ああしたことを、この自分が、本当にしたのであろうかというように思えた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
まじ/\して
居
(
ゐ
)
たが、
有繋
(
さすが
)
に、
疲
(
つかれ
)
が
酷
(
ひど
)
いから、
心
(
しん
)
は
少
(
すこ
)
し
茫乎
(
ぼんやり
)
して
来
(
き
)
た、
何
(
なに
)
しろ
夜
(
よ
)
の
白
(
しら
)
むのが
待遠
(
まちどほ
)
でならぬ。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
婆は唯
茫乎
(
ぼんやり
)
して甚蔵の寝顔を見て居る、爾して犬は獰猛な質に似ず、余の膝へ頭を擦り附けて居る。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
此莊園でラクダルはゴロリと
轉
(
ころ
)
がつたまゝ
身動
(
みうごき
)
もろくに
爲
(
せ
)
ず、
手足
(
てあし
)
をダラリ
伸
(
のば
)
したまゝ
一言
(
ひとこと
)
も
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
かず、たゞ
茫乎
(
ぼんやり
)
と
日
(
ひ
)
がな
一日
(
いちにち
)
、
年
(
ねん
)
から
年中
(
ねんぢゆう
)
、
時
(
とき
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
るのである。
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
早や夜明け方となつて東はほんのりと白んで、空を見ると二十三日の片はれ月が傾ひて、雲はヒラ/\と
靉靆
(
たなび
)
き、四面は
茫乎
(
ぼんやり
)
して居るのです。私は月を見もつて行きました。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
浅田は食事の間にも折々、
茫乎
(
ぼんやり
)
箸を休めて殺された婆さんの事を考えていた。婆さんは六十を越したいっこく者で、永い間雇人もおかずに、比較的広い家に、たった一人で暮していた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
其の間にだん/\氣が
茫乎
(
ぼんやり
)
して來て、半分は眠りながらうと/\して
歩
(
ある
)
いてゐた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
すべて
如何
(
いか
)
なる
惡獸
(
あくじゆう
)
でも、
人間
(
にんげん
)
の
眼光
(
がんくわう
)
が
鋭
(
するど
)
く
其
(
その
)
面
(
めん
)
に
注
(
そゝ
)
がれて
居
(
を
)
る
間
(
あひだ
)
は、
决
(
けつ
)
して
危害
(
きがい
)
を
加
(
くわ
)
へるものでない、
其
(
その
)
眼
(
め
)
の
光
(
ひかり
)
が
次第々々
(
しだい/\
)
に
衰
(
おとろ
)
へて、
頓
(
やが
)
て
茫乎
(
ぼんやり
)
とした
虚
(
すき
)
を
窺
(
うかゞ
)
つて、
只
(
たゞ
)
一息
(
ひといき
)
に
飛掛
(
とびかゝ
)
るのが
常
(
つね
)
だから
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
代助は今読み
切
(
き
)
つた
許
(
ばかり
)
の
薄
(
うす
)
い洋書を机の上に
開
(
あ
)
けた儘、両
肱
(
ひぢ
)
を
突
(
つ
)
いて
茫乎
(
ぼんやり
)
考へた。代助の
頭
(
あたま
)
は最後の
幕
(
まく
)
で一杯になつてゐる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其時
(
そのとき
)
茫乎
(
ぼんやり
)
と思ひ出したのは、
昨夜
(
ゆうべ
)
の其の、奥方だか、
姫様
(
ひいさま
)
だか、それとも
御新姐
(
ごしんぞ
)
だか、魔だか、鬼だか、お
閨
(
ねや
)
へ召しました一件のお
館
(
やかた
)
だが、当座は
唯
(
ただ
)
赫
(
かっ
)
と
取逆上
(
とりのぼせ
)
て
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
只幾分か頭脳が
茫乎
(
ぼんやり
)
して来まして所謂軽度の意識
溷沌
(
こんとん
)
に陥り追想力が失われる様で有ります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
茫乎
(
ぼんやり
)
として
何時
(
いつ
)
までも絵姿の
面
(
おもて
)
に見入っています——此の後姿を眺めていた呉羽之介は、露月に対する憤りが納まってくるに従って、ふと一種別な恐怖にとらわれはじめた。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
余は目録を持ったまま此の様な事を思って暫し
茫乎
(
ぼんやり
)
として居たが
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
今の
所謂
(
いわゆる
)
文壇が、ああ云う人格を必要と認めて、自然に産み出した程、今の文壇は悲しむべき状況の下に
呻吟
(
しんぎん
)
しているんではなかろうかと考えて
茫乎
(
ぼんやり
)
した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其
(
そ
)
の
小机
(
こづくゑ
)
に、
茫乎
(
ぼんやり
)
と
頬杖
(
ほゝづゑ
)
を
支
(
つ
)
いて、
待人
(
まちびと
)
の
當
(
あて
)
もなし、
爲
(
せ
)
う
事
(
こと
)
ござなく、と
煙草
(
たばこ
)
をふかりと
吹
(
ふ
)
かすと
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
今の所謂文壇が、あゝ云ふ人格を必要と認めて、自然に産み出した程、今の文壇は悲しむべき状況の
下
(
もと
)
に呻吟してゐるんではなからうかと考へて
茫乎
(
ぼんやり
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから
何
(
なん
)
のことだらうと
考
(
かんが
)
え
(
ママ
)
たやうにも
思
(
おも
)
はれる、
今
(
いま
)
に
眼
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めるのであらうと
思
(
おも
)
つたやうでもある、
何
(
なん
)
だか
茫乎
(
ぼんやり
)
したが
俄
(
にわか
)
に
水
(
みづ
)
ン
中
(
なか
)
だと
思
(
おも
)
つて
叫
(
さけ
)
ばうとすると
水
(
みづ
)
をのんだ。もう
駄目
(
だめ
)
だ。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
熟
(
じつ
)
と
視詰
(
みつ
)
めて、
茫乎
(
ぼんやり
)
すると、
並
(
なら
)
べた
寐床
(
ねどこ
)
の、
家内
(
かない
)
の
枕
(
まくら
)
の
両傍
(
りやうわき
)
へ、する/\と
草
(
くさ
)
が
生
(
は
)
へて、
短
(
みじか
)
いのが
見
(
み
)
る/\
伸
(
の
)
びると、
蔽
(
おほ
)
ひかゝつて、
萱
(
かや
)
とも
薄
(
すゝき
)
とも
蘆
(
あし
)
とも
分
(
わか
)
らず……
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
へ
掻巻
(
かいまき
)
がスーと
消
(
き
)
える
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「相変らず
茫乎
(
ぼんやり
)
してるじゃありませんか」と
調戯
(
からか
)
った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
懐中
(
かいちゅう
)
の
紙入
(
かみいれ
)
に手を懸けながら、
茫乎
(
ぼんやり
)
見ていたと申します。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「相変らず
茫乎
(
ぼんやり
)
してるぢやありませんか」と
調戯
(
からか
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
呆れたものいいと、
唐突
(
だしぬけ
)
の珍客に、茶屋の女どもは
茫乎
(
ぼんやり
)
。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“茫乎”の意味
《名詞》
茫乎(ぼうこ)
広々していること。また、そのようなさま。
はっきりしていないこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
茫
漢検1級
部首:⾋
9画
乎
漢検準1級
部首:⼃
5画
“茫乎”で始まる語句
茫乎漠然