繁茂はんも)” の例文
『市当局の配慮により、我が市は今や、樹木の鬱蒼うっそう繁茂はんもせる公園によって飾られ、炎暑のこうにも清涼の気を満喫しるに至れり。』
行手には伸びるがままに、繁茂はんもした樹木の枝が交錯し、それを分けて進むと、たちまちネットリとした蜘蛛くもの巣が顔にかかって来た。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かえって寄生木やどりぎたる曹操そうそうのほうが次第に老いたる親木をい、幹を太らせ、ついに根を漢土に張って、繁茂はんもしてくること必然でしょう。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
には木陰こかげけてしんみりとたがひむね反覆くりかへとき繁茂はんもしたかきくり彼等かれらゆゐ一の味方みかた月夜つきよでさへふか陰翳かげ安全あんぜん彼等かれらつゝむ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
僕には見えないが、おそらく原始的な微生植物びせいしょくぶつも、ここをわが世とばかりに活動して繁茂はんもしているのであろう。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雑草のようなものでさえ、それが繁茂はんもしているところを見ると、いかにもその所を得ているものである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
川のほとりに繁茂はんもするぶなの木の枝と枝のあいだに、長い木材をわたして屋根の骨をつくり、それにテントを張り、そこに火器かき弾薬だんやくその他いっさいの食料を運んだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
利根山奥のひくところは山毛欅帯にぞくし、たかきは白檜帯に属す、最高なる所は偃松帯にぞくすれども甚だせましとす、之を以て山奥の入口は山の頂上に深緑色の五葉松繁茂はんも
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ここのくさったような空気のなかで、芸術はかつてほしいままに繁茂はんもし、音楽家たちはこの都から、かるくゆすってはこびるように寝入らせるひびきを吹きこまれたのだ。
栽培はきわめて容易で、家のうしろなどにえておくと年々繁茂はんもして開花する。その茎上けいじょう小珠芽しょうしゅがができて地に落ちるから、それから芽が出て新株しんしゅえる特性を有している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
また画そのものも、ただ濁った水と、湿った土と、そうしてその土に繁茂はんもする草木そうもくとをいただけだから、恐らく尋常の見物からは、文字通り一顧さえも受けなかった事であろう。
沼地 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
治者恭敬にして信なるが故に、民その力を尽くしたからである。その邑に入れば民家の牆屋しょうおくは完備し樹木は繁茂はんもしている。治者忠信にして寛なるが故に、民その営をゆるがせにしないからである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
月は出たが、繁茂はんもした木立は月光を洩らさないので、あやめもわからない闇のなかで心わびしく思いながら、やがて眠るともなくうとうとしようとすると、たしかに、「円位えんい、円位」とよぶ声がする。
伸び放題に繁茂はんもした樹々の梢は、さながら緑の雲か、木の葉のさやさやと顫える不規則な円頂閣の形に群らがって、空高く浮かんでいる。
被害者ひがいしや到頭たう/\隱匿いんとくした箇處かしよ發見はつけんして巡査じゆんさみちびいた。雜木林ざふきばやし繁茂はんもしたあひだの、もうこはつたくさなか蜀黍もろこししばつたまゝどさりといてあつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
離れるとき、動物も植物もいっしょに持っていったに違いない。そして条件さえ、よければ、月の上で、しばらくはその動物や植物が繁殖はんしょくし、繁茂はんもしたに違いない
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
加ふるに石南しやくなん蟠屈ばんくつ黄楊つけ繁茂はんもとを以てし、難いよ/\難を増す、俯視ふしして水をもとめんとすれば、両側断崖絶壁だんがいぜつぺき、水流ははるかに数百尺のふもとるのみ、いうしてはやく山頂にいたらんか
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
彼等かれらたゞ多量たりやう嚥下えんげすることによつて精力せいりよく恢復くわいふく滿足まんぞくするのである。うしうまでも地上ちじやうやはらかなくさ繁茂はんもする季節きせつれば自然しぜん乾草ほしぐさわらいとふやうになる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いや、じっさい植物の補給がじゅうぶんでないために、われわれは近くこのジャンガラ星を運転して、もっとたくさんの植物が繁茂はんもしている遊星へ横づけにしたいと思っている
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一面の琉球りうきう藺は伐採ばつさいを受けざる為め茸々しやう/\として沼岸に繁茂はんもし、沼辺の森林しんりん欝乎うつことして水中にえいじ、翠緑すゐりよくしたたる如く、燧岳の中腹は一帯の雲烟うんえんとざされ夕陽之に反照はんせうす、其景の絶佳ぜつかなる
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
死の世界ではなく、形こそ怪異かいいであるが、植物も繁茂はんもしている。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)