くじ)” の例文
結局、酔っぱらいが一人、斬り手一名、後詰三人と役割をつけて、くじをひいた。酔っぱらいの役が梅渓に、斬り手が末の文蔵に当った。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貧乏くじのひき役だとこぼしつづけてゐるのであつた。由子の語つたところによると、澄江は金雞舞踏場の常連だといふ話であつた。
いや、それもズンと承知。造営奉行のくじがはずれて、はなはだ残念だから、ついては、その組下のお畳奉行、もしくはお作事目付の役を
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
受験の順番をきめるくじを引きましたが、第一番の籤はどうした廻り合わせか弟に当りましたので私はガッカリしてしまいました。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一度くじを引きそくなったが最後、もう浮ぶ瀬はないという非道ひどい目に会うからではなくって、どっちに転んでも大した影響が起らないため
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
幸にして私は生れながらにしてこの運の星に恵まれているのである。嘘だと思うなら、私と一緒に三角くじを買っても麻雀まあじゃんをやってもよろしい。
泣面に蜂ってわけでしてね、ヷーシャが募兵所へくじを引きに呼び出されました。可哀そうに兵隊に取られて、免除を願ったがお許しがない。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから、あれはまた何の催しだったのか、部屋中に一杯賞品が飾られ、父の机の上には紙縒こよりくじの大きな束が置いてあった。
昔の店 (新字新仮名) / 原民喜(著)
昔の物語の作者たちは、さうした悲しい數數の旅行の後で、それでも、漸く最後に取つて置きのくじをひかせて、首尾よく願望を成就させた。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
いつの時代だって、心懸けなきゃ滅多にないさ。だから、ゆっくり構えて、まあ、好きなら麦とろでも食べて、運のくじの性質を
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、いって、小屋の中で、くじを引いていた駕人足が、きまったと見えて、黒く、走って出た。そして、自分の駕を、肩へかけると、侍の方へ
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
景品はその前夜に註文ちゅうもんした。当日の朝、僕が学校の事務室へ行った時には、もう僕たちの連中が、大ぜい集って、盛んにくじをこしらえていた。
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先番せんばんくじにてきめ、各自、死体見分がおわらば、ただちに、御前にて吟味のしだいを披露いたす。……いかなる次第にて死亡いたしたものか。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「六十年の不作」くじを引き当てちゃあかなわないから、男だって相当に警戒するんだろうが、どうも古代から受身のせいか
南部に襲われ蝶を逃がし、大川の中へ転がり落ち、負けくじばっかり引いたかと思うと、今度は恋人の桔梗様と逢う。塞翁さいおうが馬っていうやつさな
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これはいくら研究したってわからないものの一つでくじを引くようなものです。あんなにむだに頭をつかっては、おかげであの人の食事はうま味を
皆さん。この上は誰か一人、この艇からりていただかねばなりません。それで公平のために抽籤ちゅうせんをします。赤い印のあるくじ
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中入りになった時に、いろいろの景品を高座に持ち出し、前座の芸人が客席をまわって、めいめいにくじを引かせてあるく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おれは貧乏くじをひくためにこの世へ生れてきたようなものだ、いつもそう云っていたが、長男の千吉が十一のとき、漁に出て疾風はやてに遭って死んだ。
暴風雨の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昌允 お前と俺とは、どうやら揃いのくじを掴んでいるようだな。いくら兄妹だと言って、あんまり有難くない一対だよ。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
それから岡野が入口の狭い所を進むには、順番をくじめて、争論のないやうにしたいと云ふと、一同これに同意した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と立上りながら振切って百度のくじをぽんと投付けると、柳田典藏の顔へあたったからいとうございます。はっとつらを押えて居るうち戸外おもてへ駈出しました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何のことかやはりよく分らない。それからまた「宇宙の形をしているから」とか「選挙のときのくじに使われる、従って寡頭かとう政治を代表するものだから」
ピタゴラスと豆 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「我慢するよりほかはありません。皆が当たりくじを引けるわけではないから。はずれた者は仕方がないんですよ。」
夜十時過ぎになると書生も代診も交ってくじを引いて当った者が東三筋町から和泉いずみ町のその馬肉屋まで買いに来る。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
古藤さん、あなた貧乏くじを背負い込んだとおぼして、どうか二人ふたりを見てやってくださいましな。いいでしょう。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「さあ、くじをお引き、島原の舞子こどもともあろうものが、このに及んで、お化けにうしろを見せてはどむならん」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから彼らはくじを引き、籤に当った組は、故国を去って自己の運命の開拓に出掛け、残った二組に故郷の財産を享受すべきより多くの余地と自由とを残す。
恐らく一番貧乏くじを引いたのは氏政だろう。首は氏照と一緒に、京都一条の戻橋もどりばしさらされて居るのである。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
 アカイアの勇將九人應じて立てる中、くじによつてテラモニデース、アイアース撰に當る。 兩雄の勇戰。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
あるいはアミダのくじにあたって、おひげの紳士がきまり悪げに風呂敷を突きだすなどの愛嬌もあった。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
(この折半という所に値打がある。相手方も大枚たいまいのお金を支出するのだ)二度目からは同じ相手方を選ぶとも、新らしいくじいて見るとも、そこは各自の自由である。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
輪講や会読席へ出て見ると、やはり読書力のない者が多かった。輪講は或る経書についてくじを引いてあたった二、三人が順番に講義をし、終ると一同の質問に対し答弁する。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
イエスの題上には「ユダヤ人の王」という罪標すてふだが、打ちつけられてある。いうまでもなくローマ政府の公のあざけりです。足下では兵卒どもが、イエスの衣類をくじで分けている。
正しいくじを引き当てるプロバビリテは実に薄弱であることを充分に承知せざるをえない。
我らの哲学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
「おみくじを引いてみた。願掛もしてみた。薬も飲ませてみた」と彼女は思いまわした。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
あの男とももう一度位逢うかも知れないと考えていたら、二三日経った日の夕方駅前の広場でバッタリ出会った。僕はその広場の一隅で三角くじを買ったりして遊んでいたのである。
(新字新仮名) / 梅崎春生(著)
然し何が何様あろうとも、一生の苦楽を他人に頼る女のことであるから、善かれ悪かれ取宛てたくじの男に別れてはたまるものではない。そこへ行くと男の方は五割も十割も割がよい。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そんな時いつも貧乏くじをひくのは外交官ですわね。日本と外国との間に板挟みになって、散々非道ひどい目にあって悶え苦しんだ揚句が神経衰弱。心ない人からは無能呼ばわりをされる。
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
『書紀』の一書の素盞嗚尊すさのおのみことの悪業を列挙した条に「春はすなわち渠槽を廃し及び溝を埋めあぜこぼちまた種子を重播す、秋はすなわちくじを挿し馬を伏す、およそこの悪事かつてやすむ時なし」
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
◯二十七節の「汝らは孤子みなしごのためにくじをひき、汝らの友をも商貨あきないものにするならん」は人身売買の罪をも犯すに至らんとの意である。ヨブがかく友を責めし余りに峻烈しゅんれつなりと評さるるであろう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ヅーフ部屋と云う字引のある部屋に、五人も十人もぐんをなして無言で字引をひきつゝ勉強して居る。夫れから翌朝よくあさの会読になる。会読をするにもくじもっ此処ここから此処までは誰とめてする。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は、米国の辻馬車屋がするように、彼等もまた揃って私の方に馳けつけるかなと思っていたが、事実はそれに反し、一人がしゃがんで長さの異った麦藁を四本ひろい、そしてくじくのであった。
中で一番記憶に残っているのは細工飴さいくあめの店で、大きな瓢箪ひょうたん橋弁慶はしべんけいなぞを飴でこしらえて、買いに来たものはくじを引かせて、当ったものにそれをるというので、私などもよく買いに行ったものだが
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
子供の時、私はくじを引くと必ず当るのでよく雇われたものだ。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「文句ばかりいっていないで、早くくじをこしらえたまえ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
十一 九四三〇号再び現われコゼットそのくじを引く
くじにおあたりなさるわ。物欲しげに
くじ
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
立会役に代った藩士のひとりが、すすきの葉を二本ちぎってくじにして二人に引かせた。短いほうが先揚さきあげ、長い方が殿しんがり。——七が先に当った。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)