空嘯そらうそぶ)” の例文
実に乱暴な話で、他から注意されると、何にたかが山の名ではないかと空嘯そらうそぶくに至っては、言語道断、沙汰の限りというきであろう。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この奥さんを指さして、こいつは女中にやとったので、もう不用になったから出て行けといっているのだと空嘯そらうそぶいているのです。
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
空嘯そらうそぶける侯爵「金儲かねまうけのことなら、我輩わがはいの所では、山木、チト方角が違ふ様ぢヤ——新年早々から齷齪あくせくとして、金儲かねまうけも骨の折れたものぢやの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
眉面まゆつらつきはありし日にそのまま……尻からげなどして空嘯そらうそぶいていずと、早よ炉端へ上りな。……はあれおむがしや、うれしやな
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見るは此御白洲がはじめてなり一言も有のないのと言るゝは如何なる事やと空嘯そらうそぶいてたりしかば無量庵は然樣で有う人間にんげんうまれておんを知らぬを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも當人を詰りますと「良秀のいた神佛がその良秀に冥罰を當てられるとは、異な事を聞くものぢや」と空嘯そらうそぶいてゐるではございませんか。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちと気がれて血相変り、取乱してはいるけれど、すらっとして中肉中脊、戦慄ぞっとするほどい女さ。と空嘯そらうそぶいて毛脛けずねの蚊をびしゃりと叩く憎体面にくていづら
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、夫れ迄は豪然として空嘯そらうそぶいていた佐藤義範は、警察と聞いて色を変え娘を返えすと云い出した。すると今度は村の人達が村を立ち退けと強要した。
相手がお武家だからと云って聞かせても、こんな具足櫃をかつがせて行く侍があるものかと、空嘯そらうそぶいて取合わない。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
続いて働らいてくれとか、履歴書を出せとかいうような挨拶を一言もしないで空嘯そらうそぶいている事は昨日の通りである。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は忌々いま/\しさに舌打ちし、自棄やけくそな捨鉢の氣持で空嘯そらうそぶくやうにわざと口笛で拍子を合はせ、足で音頭をとつてゐた。が、何時しか眼をつぶつてしまつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ト呼ばれて出て来た者を見れば例の日の丸の紋を染抜いた首の持主で、空嘯そらうそぶいた鼻のさきへ突出された汚穢物よごれものを受取り、振栄ふりばえのあるおいどを振立てて却退ひきさがる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と、余音よいんをことさらに長くひっぱって空嘯そらうそぶいていましたが、そのうちになんとなく、自分も悲しくなりました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信一が空嘯そらうそぶいて威張って居る所へ、今度はすうッとしずかに襖が開いて、光子が綺麗に顔を洗って戻って来た。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しいて本音ほんねを吐かせれば「……いやその両方だ。生きるからには婆娑羅に世をたのしみ、あわよくばまた、天下も取りたい」と、空嘯そらうそぶく者なのかもしれない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の敵城あることをばそれがしも存ぜず候間に、先手の者ども、はや攻落して候、と空嘯そらうそぶいて片付けて置いて、さてそれからが反対に政宗の言葉に棒を刺してこじって居る。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
空嘯そらうそぶいて、冷笑ふ。顔を憎しと腹立ち声『何の御用か知りませぬが、用だけいふて貰ひましよ。お妾なぞと聞こえては、私の迷惑、旦那の外聞。ちとたしなんで下さんせ』
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
はれて七點セヴン空嘯そらうそぶき、『さうだよ、五點フアイブ何時いつでもわること他人ひと所爲せゐにするさ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「お前はおれを馬鹿にするのか、その分では濟まされないぞ。さあ教室を出ろ、出て行けつ……」先生の顏は蒼白に變つて、唇は怒りの爲めにぶるぶるふるへてゐた。上村は空嘯そらうそぶいて脇を向いた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そう思って富士を見ても容易に自分の感情の働きかけに共鳴する様子もなく、むしろ、自分は自分でちゃんと暮らす道があると空嘯そらうそぶいている様子にも見える。慧鶴にはいよいよ征服慾が湧く。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新知識を振廻すものがあるとひどしゃくさわるらしく、独逸語や拉丁ラテン語を知っていたって端唄の文句は解るまいと空嘯そらうそぶいて、「君、和田平のうなぎを食った事があるかい?」などとかたきを討ったもんだ。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
空嘯そらうそぶいて長椅子に身を投げて、退屈な留守の時間をまぎらさうとしてゐた。
そして力技りきぎに対する興味が起ろうものなら、予審判事を逆立ちさせて、「こいつの頭をよくしてやるんだ」などと空嘯そらうそぶいたり、両の小脇に警官を抱えて、リヴォリイの大通りを走ったりしたという
以来僕を見かけると、空嘯そらうそぶくようにして通って行く。
合縁奇縁 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お由は空嘯そらうそぶいて相手にしそうもありません。
荒尾は空嘯そらうそぶきて起たんとなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
縮毛の大男は、空嘯そらうそぶいた。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
空嘯そらうそぶいた。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
進ぜん外々ほか/\の儀と事變り金子の事故驚怖おどろいたりあたらきもつぶす所と空嘯そらうそぶひてたばこをくゆらし白々敷しら/″\しくも千太郎を世間知らずの息子むすこと見かすまづ寛々ゆる/\と氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも当人をなじりますと「良秀のいた神仏が、その良秀に冥罰みやうばつを当てられるとは、異な事を聞くものぢや」と空嘯そらうそぶいてゐるではございませんか。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
財産なり、学問なり、技能なり、何か人より余計に持っている人は、其余計に持っている物をさしはさんで、傲然として空嘯そらうそぶいていても、人は皆其足下そっかに平伏する。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
職人風情ふぜいの妻となって、満足して暮すおまえらに、わたしの心はわかるまいのう。(空嘯そらうそぶく)
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「銅貨じゃ重いわ。二十銭銀貨ドルんな。」と空嘯そらうそぶきつつ小膝をち、「おっと、まだ有る。目金をかけた若い衆が、二銭の不足に五銭と払った、その三銭も返すんだよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これを以て見れば、大津の宿で机竜之助が、生命いのちを粗末にする男女の者に、蔭ながらひややかな引導いんどうを渡して、「死にたいやつは勝手に死ね」と空嘯そらうそぶいていたのが大きな道理になる。
正木博士は又も長々と煙を吹き上げて空嘯そらうそぶいた。私はその顎を睨みつつ腕を組んだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
返事も出来ないでいると、乾はゆっくり煙草に火をつけながら空嘯そらうそぶくようにして
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お由は空嘯そらうそぶいて相手にしさうもありません。
空嘯そらうそぶきて貫一は笑へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と夫人は空嘯そらうそぶいた。
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
空嘯そらうそぶくと
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるすなとは此ことなりと空嘯そらうそぶいて居たりけるお文は切齒はがみをなしヱヽ忌々いま/\しい段右衞門未々まだ/\其後も慈恩寺村にていゝ張半ちやうはんが出來たと云つてをつと三五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「自体、虱を飼ふと云ふのが、たはけぢやての。」と、空嘯そらうそぶいて、まるで取合ふけしきがない。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
空嘯そらうそぶきて打笑えば、美人はわっと泣伏しぬ。高田はお藤をじろりと見て
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ト、ツンと済まして空嘯そらうそぶき、烟草たばこふいている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
バロンは欄干に背を凭せて空嘯そらうそぶ
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
福兄は得たりと引取って、空嘯そらうそぶく。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一座は互に顔を見合せたまま、しばらくの間は気まずい沈黙を守っていなければならなかった。が、やがて俊助は空嘯そらうそぶいている大井の方へ、ちょいとあご相図あいずをすると、微笑を含んだ静な声で
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御者は流眄ながしめに紙包みを見遣みやりて空嘯そらうそぶきぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
河内山は、一座の坊主を、尻眼にかけて、空嘯そらうそぶいた。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
渠はこの問答を忌まわしげに空嘯そらうそぶきぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)