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禽獣
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きんじゅう
ふりがな文庫
“
禽獣
(
きんじゅう
)” の例文
旧字:
禽獸
悲しいかな、われわれは花を不断の友としながらも、いまだ
禽獣
(
きんじゅう
)
の域を脱することあまり遠くないという事実をおおうことはできぬ。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
女はまず
禽獣
(
きんじゅう
)
と大差なきものと思込んでいる矢先、鶴子の言葉使いや挙動のしとやかな事がますます不可思議に思われ、更にまた
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
魚介木石の生活をも蔑視してはならぬ、これらのものが各自それぞれの生活をいとなむありさまを
仔細
(
しさい
)
に観察するのは
『グリム童話集』序
(新字新仮名)
/
金田鬼一
(著)
道具の発明によって
禽獣
(
きんじゅう
)
の域を脱し得た人間が、機械の発明された今日、なお貧苦困窮より脱しあたわぬというは、一応は不思議な事である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
また草木
禽獣
(
きんじゅう
)
得意の世界ともいうべきアマゾン河流地方のごとく、いかに
斧
(
おの
)
をふるうも森々たる高草大木は人を圧して侵し
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
▼ もっと見る
王化を知らぬ蛮族といえ、よも
禽獣
(
きんじゅう
)
ではあるまい。耳あらば聞け。汝はさきにわが丞相に捕われて、すでに命のない所を放された者ではないか。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほとんど
禽獣
(
きんじゅう
)
とも言うべき挙動をなしながら、かえって旧の政府よりもよき政を行ない寛大なる法を施して天下の人情を厚きに導かんと欲するか。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
次にこの野蛮人もしくは、原始人の皮を今一度
剥
(
め
)
くってみると、その下には畜生……すなわち
禽獣
(
きんじゅう
)
の性格が一パイに横溢している事が発見される。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ある者は、無名のはがきをよこして、妻を
禽獣
(
きんじゅう
)
に比しました。ある者は、宅の黒塀へ学生以上の手腕を
揮
(
ふる
)
って、
如何
(
いかが
)
わしい画と文句とを書きました。
二つの手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
春夏秋冬がほどよく
環
(
めぐ
)
って来て、変化に富んでいて、春夏秋冬の草木
禽獣
(
きんじゅう
)
虫魚、天文地理の諸現象、それらの変化を楽しむことが出来るということは
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
人の動物と違うところは思想あるがためで、この思想なるものを養わない以上は、
禽獣
(
きんじゅう
)
に
髣髴
(
ほうふつ
)
たるものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
山は植物ばかりではない、
禽獣
(
きんじゅう
)
ばかりではない。鮎も一千
呎
(
フィート
)
はのぼる、イワナは四五千呎までのぼるであらう。鰻さへ二万呎の深海から三千呎はのぼり得る。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
はえしげる草木、飛び回る
禽獣
(
きんじゅう
)
、さては女のめでたさ、子供の愛らしさ、あゝわしは生きたい生きたい。(間)わしはきょうまでさまざまの悲しみを知って来た。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
実際芭蕉は人間
禽獣
(
きんじゅう
)
はもちろん山川草木あらゆる存在に熱烈な恋をしかけ、恋をしかけられた人である。
俳諧の本質的概論
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
の代表者じゃない、人間の代表者に違いない。従って私が
茲処
(
ここ
)
にこう立っていると、私はこれでヒューマン・レースをレプレゼントして立っているのである。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男でさえも、汝は自由でないとくり返し言われるときには、もう自由でなくなって
禽獣
(
きんじゅう
)
に等しくなる。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
誰
(
たれ
)
やらの書いたものに、人は夢の中ではどんな
禽獣
(
きんじゅう
)
のような行いをも
敢
(
あえ
)
てして
恬然
(
てんぜん
)
としているもので
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自己の過ちを悔いもせず改めもせで、
二度
(
ふたたび
)
これを継続するがごときは
禽獣
(
きんじゅう
)
の行為なりと仰せられ候。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
案のごとく林中には、だちょう、ラマ、ベッカリー、および、しゃこ、その他の
禽獣
(
きんじゅう
)
が無数にすんでいる。グロースは
晩餐
(
ばんさん
)
をにぎわすといって、さかんに鉄砲をうった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
譬
(
たと
)
えにも、
禽獣
(
きんじゅう
)
といえど道有って理なきにあらずという事がございまして、畜生が口をきく訳はございませんが、人間の云う事は分るまいと思うと分りますると見えて
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
事実、茂太郎は、猛獣毒蛇にも及ぼす魅力を信じているのですから、いかなる
禽獣
(
きんじゅう
)
ともお友達づきあいができるものと、保証をしているのに、ただ一つ、度し難い動物に猫がある。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼が自然を愛し、草木
禽獣
(
きんじゅう
)
のいのちを鋭く
捉
(
とら
)
えたことは事実であるが、その奇警な観察をこういう形式で
纏
(
まと
)
めようという意図はもともと著者自身にはなかったかも知れないのである。
博物誌あとがき
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
単に人その者を尊敬するのではなく理想を尊敬するのである。
禽獣
(
きんじゅう
)
には釈迦も孔子も半文銭の価値もないのである。それで厳密なる権力説では道徳は全く盲目的服従でなければならぬ。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
かつて先代の
且鞮侯
(
そていこう
)
単于
(
ぜんう
)
の言った言葉を
李陵
(
りりょう
)
は
憶
(
おぼ
)
えている。漢の人間が二言めには、
己
(
おの
)
が国を礼儀の国といい、
匈奴
(
きょうど
)
の行ないをもって
禽獣
(
きんじゅう
)
に近いと
看做
(
みな
)
すことを難じて、単于は言った。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
白痴となると、心の
唖
(
おし
)
、
聾
(
つんぼ
)
、
盲
(
めくら
)
ですからほとんど
禽獣
(
きんじゅう
)
に類しているのです。ともかく人の形をしているのですから全く感じがないわけではないが、普通の人と比べては十の一にも及びません。
春の鳥
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「生活というものはなにかを生みだすものだと信じている、そこもとたちの暮しは生活とはいえない、これは
耽溺
(
たんでき
)
だ、なにものをも生まず、働かず、快楽に溺れて恥じないのは
禽獣
(
きんじゅう
)
に等しい」
葦
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
長方形の板を載せているのが、
竹片
(
たけぎれ
)
を指して、立板に水を流すごとくにいった。「
裸裎
(
らてい
)
淫佚
(
いんしつ
)
で、徳を失い礼を
蔑
(
ないがし
)
ろにし、度を敗るは、
禽獣
(
きんじゅう
)
の行いである。国には
常刑
(
じょうけい
)
あり、ただこれを禁ずる」
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
尚
(
な
)
ほ
恁
(
か
)
くの通りの
旱魃
(
かんばつ
)
、市内は
素
(
もと
)
より
近郷
(
きんごう
)
隣国
(
りんごく
)
、
唯
(
ただ
)
炎の中に
悶
(
もだ
)
えまする時、
希有
(
けう
)
の
大魚
(
たいぎょ
)
の
躍
(
おど
)
りましたは、
甘露
(
かんろ
)
、
法雨
(
ほうう
)
やがて、
禽獣
(
きんじゅう
)
草木
(
そうもく
)
に到るまでも、雨に
蘇生
(
よみがえ
)
りまする
前表
(
ぜんぴょう
)
かとも存じまする。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
のみが享楽する。思考すること、そこにこそ人の魂の真の勝利がある。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
に化して真の幸福を感ずるような人間は、神に最も
倦厭
(
けんえん
)
せられます。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さて
裸体
(
はだか
)
のままでは文明の婦人とはいわれない、それは
禽獣
(
きんじゅう
)
と雑居していた
蒙昧
(
もうまい
)
な太古に
復
(
かえ
)
るものですから、お互にどうしてもその
裸体
(
はだか
)
を修飾して文明人の間に
交際
(
つきあい
)
の出来るだけの用意が必要です。
女子の独立自営
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
無戒が無自覚である場合、無戒は破戒でないという理由でこれを弁護することは、
禽獣
(
きんじゅう
)
の生活を人間の生活よりも上であるとすることに等しいであろう。無戒はいかにして自覚的になるのであるか。
親鸞
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
とある、白井博士は虫蛇
禽獣
(
きんじゅう
)
とて一概に排斥すべきにあらず
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
諦
(
あき
)
らめよ、わが心。なれが
禽獣
(
きんじゅう
)
の
睡
(
ねむ
)
りを眠れ。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
の世界だ”
洪水大陸を呑む
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この教えはわずかに人をして禽獣に劣ることなからしむるのみ。試みに見よ。
禽獣
(
きんじゅう
)
魚虫、みずから食を得ざるものなし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
道教
(
どうきょう
)
をもって、国教とし、自分も教主となって、保護につとめた。全国から木石
禽獣
(
きんじゅう
)
の珍奇をあつめ、宮殿の工には、民の
塗炭
(
とたん
)
もかえりみもしない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
されば北斎は
自
(
みずか
)
ら正確なる写生をなし得たりと信ずる時は意気揚々として、その著『
略画早指南
(
りゃくがはやおしえ
)
』の序にも言へるが如く、わが描く所の人物
禽獣
(
きんじゅう
)
は皆紙上より飛躍せんとすと。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうするとその
禽獣
(
きんじゅう
)
、虫ケラ以下の半狂人である人類たちは、永い年月のうちに自然と自分たちがキチガイの大群集である事を自覚し初めて、宗教とか、道徳とか、法律とか
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
僧二
禽獣
(
きんじゅう
)
草木に至るまで聖者のおかくれあそばすのを嘆き惜しむのでございますね。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
俺
(
おれ
)
は
呆
(
あき
)
れて物が言えない、人間だと思えばこそ話しもするがそんな
禽獣
(
きんじゅう
)
には何も言うことは無い、彼等は禽獣に等しいものだ、
蠅
(
はえ
)
なんて奴は高貴な人の前でも戯れるようなものだ
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その昔かつて道具の発明により始めて
禽獣
(
きんじゅう
)
の域を脱し得たりしがごとく、今や機械の発明によって、旧時代の人類の全く夢想だもし得ざりし驚くべき物質的文明をまさに成就せんとしつつある。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
なおかくの通りの
旱魃
(
かんばつ
)
、市内はもとより近郷隣国、ただ炎の中に
悶
(
もだ
)
えまする時、
希有
(
けう
)
の大魚の躍りましたは、甘露、法雨やがて、
禽獣
(
きんじゅう
)
草木
(
そうもく
)
に到るまでも、雨に
蘇生
(
よみがえ
)
りまする前表かとも存じまする。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
我々が自己の私を棄てて純客観的即ち無私となればなる程愛は大きくなり深くなる。親子夫妻の愛より朋友の愛に進み、朋友の愛より人類の愛にすすむ。仏陀の愛は
禽獣
(
きんじゅう
)
草木にまでも及んだのである。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
老衲
(
ろうのう
)
火燵
(
こたつ
)
に
在
(
あ
)
り立春の
禽獣
(
きんじゅう
)
裏山に
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
また敵とよび合う者同士が
嗅覚
(
きゅうかく
)
を
研
(
と
)
ぎあって諜報の取りやりもしているらしい。しかし草ぶかい野の
禽獣
(
きんじゅう
)
の生態みたいに、眼に見えるものではなかった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また人の性に智愚強弱の別ありといえども、みずから
禽獣
(
きんじゅう
)
の智恵にも
叶
(
かな
)
わぬと思う者はあるべからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
、虫ケラ以下の軽蔑、虐待を加えてもいいものと考えているらしく考えられる……が……
然
(
しか
)
らばその精神病者を侮蔑し、冷笑している
所謂
(
いわゆる
)
、普通の人間様たちの精神は、果して
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
……かくのごとき事件は世間まれに見聞いたし
候
(
そうろう
)
事にて、
禽獣
(
きんじゅう
)
の所行と申すべし。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
噫
(
ああ
)
偉
(
おおい
)
なるかな、
其仁
(
そのじん
)
禽獣
(
きんじゅう
)
に及ぶ……と
無暗
(
むやみ
)
にお
誉
(
ほ
)
めなさるべく候。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
禽
漢検準1級
部首:⽱
13画
獣
常用漢字
中学
部首:⽝
16画
“禽獣”で始まる語句
禽獣行
禽獣的生活